歩道
思い付きのショートショートです。
ヒヤッとした感触と共にすべての音が消えた気がした。
不可解で山場も落ちもないのだけど、そんな体験をした。
ほんとに何気ない日常だった。
今年の夏もというかここ近年の夏は異常なくらい暑い。
連日気温が『日陰で風通しのいい』環境でも35度を超す。
正午近くになると舗装された道路は陽炎が立っていて、ひと気も無い。
それでも田舎の道路わきの街路樹近くの草は元気がよくて、手入れも春・秋の2回しかされてないせいか、腰の丈を余裕で超える成長具合だった。
駅前の店に用事のあった私はその日も暑さにウンザリしながら冷えた麦茶を片手に若干腰丈ほどある草を暑苦しく思い歩いていると、不意にヒヤッとした感触を肘辺りに一瞬感じた。
え?
しかもうるさいほど鳴いているセミの声もピタリと止まり、しん・・・となったと共に
『一緒に』
と幼げな声が耳元でしたと同時に、またむわっとした熱気とセミの声が押し寄せてくる。
え?え??
今の何?
気のせいにしては、冷たい感触が残っている。
いやいや今昼だし!出るにしても時間おかしいだろう?
こういう時は深く考えずに気のせいにするに限る。
と気のせいにすることにして、目的地に向けて足を速めた。
帰宅して落ち着くと、あの時耳元でした言葉を改めて思い返して考えてみる。
あの、
『一緒に』
というセリフの後に続く言葉は何だったのだろう?
『一緒に、(あの世に)行こう』?
『一緒に。憑いていっていい?』?
『一緒に遊んで』?
どう考えてもロクな物じゃなさそうだったので、考えるのを放棄した。
見通しがよくなるまであそこを通るのは避けよう そんな安直な結論に至る。
その後何かあったかというとそういう訳もなく、友人に話すほどでもないので多分そのうち忘れるだろう。
今日の予報も相変わらず35度を超えるらしい。
外出は控えて運動は中止をと熱中症情報に記載されてた。
特に外出予定もないので今日は1日家でゆっくりする予定。
間もなく夏休みが終わる。