選択と視線…
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月輪のクラスについてそうそう、ティグは力いっぱいドアを開け放った。中にはすでに何人かの生徒がおり、いきなりの大きな音に皆驚いて目を見開いた状態で俺たちのことをガン見していた。
絶対やると思ったよ…。
小さくため息をつきながら、後ろからティグの頭を思いっきり叩く。こいつはいつになったら力加減を覚えるんだ?このままだと校舎どころか、すべての建物が破壊されかねん。それに、毎回こちら側の気持ちを考えてほしいものだ。毎度びっくりするどころか、心臓に悪すぎる。
「バカ。少しは静かにドアを開けろよ。破損したら弁償問題になりかねんぞ」
「うわ!それは困る!!両親に怒られる!」
いや、怒られるだけで済まなくなるだろ…。
呆れまじりのため息を吐くと、ティグの脇を通り過ぎ部屋の中へと入る。席は自由らしいため、窓際の後ろの方の席へと歩を進め、椅子に腰を下ろす。
部屋の中は広く、机や椅子が置いてある場所の床は階段状になっており、奥に進めば進むほど高さが増す。着席した席の正面には大きな黒板があり、その前に教卓が置いてある。1クラスの人数が多いためか、机と椅子はどちらとも長く3人座れる席が54席あり、縦に3列、横に6列に並んでいる。1クラスの人数は49人。座らない空席が5席できることになる。
もちろん、最初の登場の印象の影響か、俺とティグが座った後列窓際の席はひとつが空席、その隣にある机も3席全てが空席。前の席には座っているが、どこか居心地が悪そうな気まずい雰囲気だ。
そうそうに悪目立ちをしてしまい前途多難な予感だ。
若干頭を抱えたが、当初の目的を思い出せば別に関係ないかと、すぱっと頭を切り替えた。
しばらくすると、教室内に1人の男性が入ってきた。
ん?あの人確か、試験の時にいた人じゃ…。
そう考えていたら男は教卓の前にたち、話し出した。
「今日からこのクラスの担任になった、ガレス・ダンテリオンだ。早速だが学級長を2名こちらから指名させてもらう。学級長レオニアル・プルーム、副学級長ミリア・シャリアン。異論や辞退は認めないし、これは決定事項だ。次に、授業について説明をする」
男、ガレス・ダンテリオンは自己紹介を簡素に済ませると、早速本題に移行した。
今、なんか変なこと言われた気がするんだが…?
俺が学級長?に指名された気が…。なぜだ??それに辞退は認めない??決定事項??……嘘だろ。なぜそうなった!?訳がわからない。最悪だ…。また変に目立った気がする。
1人虚空の彼方を見つめながらも、ガレスの話は進んでいく。
「授業は主に、選択科目と必修科目の2種類がある。必修科目は全員が受けるもので必ず出席をするように。でなければ、評価が落ちると思え。次に選択科目だが、こちらは強制ではない。各々好きなように受講したまえ。出るもよし、出ないもよし。ただし自身の将来をよく考え決めるように。今から用紙を配る。その紙に出たい科目を記入し提出するように。以上だ」
説明し終わると、ガレスはクラス全体に行き渡るように魔法で紙を配った。
受け取るや否や、全員がその紙に記入していく。隣のティグなんかはもう記入し終えていた。はやっ。
さて、俺も書かねば。そう思いペンを手に取る。
受講する科目か…。そういえば、あいつらに言われたな。戦いが終わったらキチンと学ぶべきだと。どうしてあそこまで念を押されたのか未だわからないが。だが、あいつらがそう言ったということは何か理由と意味があったのだろう。ここは素直に従っておくべきか。
そう思い、俺は用紙にペンを走らせた。
〈受講科目〉
・剣術・武闘・魔法・錬金術・召喚術・精霊術
月輪クラス レオニアル・プルーム
「なあ、レオはどの科目にした?俺は武闘と錬金術!」
「全部」
「へ?」
間抜けな面で聞き返してきたティグに、俺はキッパリともう一度言い放つ。
「全部だ。剣術、武術、魔法、錬金術、召喚術、精霊術、全て」
俺が言い終わるとティグはさらに固まり、目を瞬かせた。
「ま、マジで全て書いたのかよ?」
「ああ、そうだが?」
「〜っすげー!おもしれー!!全てとか超やばいじゃんか!お前自分に対して鬼だな!」
嬉しそうに大笑いしたティグは、どこか楽しそうだった。
いや、なんでそんなに嬉しそうなんだよ??意味がわからん。
ひとしきり笑いきったらしいティグは、笑い終わると俺に尋ねてきた。
「でもそれ大丈夫か?疲れねえ?大変そうだしよー、それに学級長の仕事もあるんだろ?」
あ、そういえばそんなもん押し付けられたっけ。忘れてたわ。
「まあ、なんとかなるんじゃね?」
片肘をつきながらそう答える。なるようになるだろ。多分…。
楽観的に考えていた俺はそうも言っていられなくなることになった。
「あなたがレオニアル・プルームね?」
「ん、そうだけどあんたは?」
ティグと談笑していると、1人の女子生徒が近づいてきて声をかけてきた。
「私はミリア・シャリアン、副学級長よ。よろしく」
「ああ、あんたが。よろしく」
自己紹介と共に握手を求められ、軽く握り返す。
ミリア・シャリアン。腰まである長い水色の髪に、深く濃いグレーの瞳。見た感じからすると精霊術師のようだ。
挨拶のために来たのだろうか?
「そういえば、あなた学園中の噂の的よ?」
「うわさ?どんな噂だ?」
ミリアの言葉に目を瞬かせ、聞き返す。ティグも気になったようで目を瞬かせている。一体どうな噂が流れているんだ?そう思いミリアの言葉に意識を集中させる。と、とんでもない言葉が彼女の口から出た。
「試験の結果は主席で、その上新入生でありながら生徒会メンバーに加入し、更に学園での等級位と特別階級を与えられ、その結果特殊認定された規格外の男。ってね。おまけに学級長に指名されるなんて、大変ね」
「……はい??」
開いた口が塞がらないとはまさにこのことだろう。いや、まって?どゆこと??
俺が主席?生徒会メンバー??それに、等級位だとか特別階級だとか、特殊認定だとかってどうゆう意味だ??なんで俺の知らぬまにそんなことになってる!?
1人混乱していると、ミリアは呆れたようにため息をついた。
「知らなかったのね。クラス分けの表は見たんでしょう?その隣に試験の最終結果が貼り出されていたはずよ。見ていなかったの?」
「と、隣に?…後方から確認してたから見てないな、そういえば」
乾いた笑いが口から溢れる。そんな俺を見て、ミリアは少し哀れなものを見る目をした。一瞬だけ。
「それじゃあ、今朝から感じていたこの異様な視線は…」
「ええ、みんな奇異な目であなたのことを見ているみたいね。注目の的よ」
ああ、最悪だ…。これからの学園生活は波瀾万丈になりそうな予感がする。さようなら、俺の平和な世界……。
いや、ティグと知り合った時点でもうすでに平和ではなかったわ。
レオニアル・プルーム
クラス:月輪、学級長
試験最終結果:主席
・実技 剣術_50/100 魔法_65/100
・魔力 最上級クラス
・筆記 100/100〈オール満点〉
称号:等級位“特級天秀”
特別階級:“指揮官”
所属:生徒会
備考:特殊
選択科目:剣術、武術、魔法、錬金術、召喚術、精霊術
ここまで読んでいただきありがとうございます。
駄文ではありますが、頑張って次の話も投稿していきます。
更新は遅いしまちまちだと思いますが。
次の話も読んでいただけると嬉しいです。
次の更新までしばらくお待ちください。