第4話 まさかの赤ちゃん転生!?異世界でレベル1からやり直し!
ジュウドーコバヤシは、アポロンから二つのユニークスキルを授かったものの、周囲の者たちのようにステータスウィンドウが見えないことに少しばかりの不安を感じていた。そんな中、ふと広場の隅に目をやると、何やら不思議な光景が広がっていることに気づいた。
何箇所かに描かれた奇妙な紋様――魔法陣だろうか――の上で、人々が次々と光に包まれ、まるで煙のように消えていくのだ。それを見守る神々は特に何も言わず、淡々とした様子である。
(あれは何やろ?まさか、もう異世界に転送されとるんか?)
コバヤシは、消えていく人々に興味津々になった。他の皆が列に並んでギフトを受け取っている間に、先に異世界へ旅立った者たちがいるようだ。
(せや!俺もあっちに行ってみるか!このままずっとここにいても仕方ないしな!)
直感的にそう思ったコバヤシは、一番近くの魔法陣へと足を向けた。特に誰に声をかけるでもなく、周りの神々や人々の視線も気にせず、堂々と魔法陣の中に足を踏み入れる。
(さあ、次は俺の番やな!)
コバヤシがそう思った瞬間だった。
彼の身体が、内側から強烈な光を放ち始めた。それは、先ほど人々が消えていった時よりも、ずっと眩しい光だった。
「うわっ!なんやこれ!?」
驚きと戸惑いの中、コバヤシの意識は急速に薄れていく――。
……パチリ。
ゆっくりと瞼を開けると、そこにはぼやけた世界が広がっていた。見慣れない模様の天井。優しい光。そして、耳元で聞こえるのは、聞き慣れない優しい声と、自分の小さすぎる手足から伝わる違和感。
(あれ?ここは……?)
体を動かそうとするが、上手く力が入らない。首を動かすのが精一杯だった。そして、ようやく理解した。
自分の身体が、あまりにも小さい。
柔らかい布に包まれ、見上げると、心配そうな優しい眼差しがこちらを見つめている。その女性は、コバヤシに向かって、慈しむように微笑んだ。
「まあまあ、可愛い坊やね」
(ぼ、坊や!?)
コバヤシは、自分の状況をようやく理解した。光に包まれた後、まさかの――赤ちゃんに転生してしまったのだ!
「うぎゃあ!うぎゃあ!」
その衝撃的な事実に、思わず喉から甲高い赤ん坊の泣き声が漏れ出た。
(ホンマに!?レベル1どころか、まさかのレベル0からのスタートやんか!)
前世の記憶はしっかりと残っている。日本一のエンターテイナーだった記憶も、神々に出会ったことも、アポロンからスキルを授かったことも、全て覚えている。だが、今の体は生まれたばかりの赤ん坊。思うように動かないもどかしさと、これから一体どうなるのかという不安が、同時に押し寄せてきた。
それでも、コバヤシの心には、エンターテイナーとしての魂がしっかりと宿っていた。
(しゃあけど、落ち込んでる暇はないで!せっかく異世界に来たんや。赤ちゃんからやり直して、また日本一……いや、今度こそ異世界一のエンターテイナーになったる!)
小さすぎる手足をバタバタさせながら、コバヤシは心の中で新たな目標を誓うのだった。先は長い。途方もなく長いかもしれない。だが、ジュウドーコバヤシの挑戦は、今、始まったばかりなのだ。