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リヴァイス・リヴァイバル〜果てなき世界の調律録〜  作者: 琥珀
第1章 『The Maiden's Requiem』
39/39

38.キメラ(挿絵有り)

挿絵あります

 土埃の中から迫る攻撃は、正面から受け止められる一撃であったが、マキナの本能が危険を察知し、咄嗟に身を屈める回避を選択させる。


 攻撃はマキナの頭上すれすれで静止し、ゆっくりとその姿が露わになっていく。



「(これは……『テイル・スコーピオ』の尻尾?でも形状というか、外殻の質感がどこか違う……)」



 鋭利な尾の先端から滲み出した液体が滴り落ち、マキナのすぐ横の地面に触れた瞬間、ジュッ!!という不気味な音とともに土を溶かし白煙を噴き上げた。



「(土さえ溶かす強力な毒……なら孵化した魔物はやっぱり『テイル・スコーピオ』……?)」



 尾は音もなく引き戻され本体の方へと消えていき、衝撃で舞い上がっていた土埃も次第に晴れ、その全貌がハッキリと浮かび上がった。



「……え?」



 煙の向こうに現れた魔物の姿を見た瞬間、マキナの喉から思わず声が漏れる。

 

 その場に立っていたの三体の魔物は、いずれも戦いマキナが見たことのない異形であったからだ。


 否、正確には少し違う。いずれの個体も()()()()()()()()()()()特徴は宿していた。



「(さっきのは間違いなく『テイル・スコーピオ』の尻尾と毒……でもあの透き通るような肉体は何……?それに体格も一致しない。四本脚の四足歩行……まるで『モア・ウルフ』みたい)」



 襲いかかってきた個体をいくら凝視しても、既知のどの魔物とも完全には一致せず、まるで()()()()()()()()()()()()()かのような異形の姿に、マキナは困惑する。



「(まさか……種から種へ魔力が移った過程で、その個体の特性も乗り移る変異が起きた?じゃああれは、複数個体の特性を併せ持つ『キメラ』……ってこと?)」



 マキナはそのキメラ三体を前にして、しかし意識を全て集中させることが出来ない。


 周囲にはロス国王をはじめ多くの非戦闘員が取り残されており、加えて先程の衝撃で動けない者も少なくない。


 この状況下で戦闘を行うには、怪我人を守りながら、退避する時間を稼ぎながら戦うという対処をする必要があるからだ。



「(安否確認と避難は動ける人に任せて……私はとにかく、こいつらの注意を引きつけないと)」



 相手は未知の魔物であり、定石のヒット&アウェイで様子を見ながら能力を見極めるという方法は、注意が周囲へ向く危険性があるため悪手になり得る。


 そうなればマキナ一人では守りきれないため、マキナは敢えて攻めに転じることを決意した。


 拳を前に、姿勢を低く重心を沈め、纏う空気が一瞬にして張り詰められ、その足に踏み込むための力を静かに蓄える。


 多くの魔物を震え上がらせてきた闘気を前にしても、三体のキメラは微動だにせず、意にも介していない。


 両者の間に重苦しい沈黙が落ち、周囲の人々の荒い息遣いだけが耳に届く張り詰めた静寂。


 その最中、キメラの足元に転がっていた『アッシュ・オア』にヒビが走り、パキッという乾いた破砕音が響いた瞬間、マキナが動いた。


 地面がめり込むほどの脚力で大地を蹴り砕き、爆発的な加速で一気に間合いを詰める。



「(『モア・ウルフ』みたいな獣型と、翼持ちの個体は機動力が読めない……なら一番鈍重そうな個体を先に潰す!!)」



 三体のうち最も重量のありそうな岩のような個体へ狙いを定め、マキナの渾身の拳を叩き込まれ、周囲を震わすほどの衝撃波と音が周囲を震わせる。


 地面さえ砕くマキナの一撃。しかし、その拳を受け止めたキメラの外殻には、傷一つ付いていなかった。



「〜〜〜ッ!?か、硬ッ!?」



 次の瞬間、砕けたのはキメラではなく、『ボルム』や『グラウム・ビースト』すら打ち砕いてきたマキナの拳が弾かれ、砕けた手甲の隙間から血が滲み落ちる。



「(なに……これ!?こんな硬い外皮の魔物今まで……!!)」



 骨に響く強烈な衝撃と痛みが、マキナに久しく感じていなかった戦慄を呼び起こす。



「ッ!?」



 驚きで固まったマキナの一瞬の隙を突くようにして、『テイル・スコーピオ』の尾を持つキメラが自身の間合いへと侵入する。


 背後から特有の不気味な気配を感じ取ったマキナは、超人的な反射速度でこれに対応する。



「(速い……!!でも反応できないほどじゃない!!)」



 振り下ろされる毒の尾を身体を捻って回避すると、捻った勢いをそのまま反撃へと回し、痛めた拳とは逆の手で側面から渾身の一撃を叩き込んだ。



「えっ!?」



 だがまたしてもマキナの拳は肉体を貫かないず、それどころか、叩きつけたはずの拳の衝撃すら通らない。


 マキナの拳は、キメラの透明な肉体がまるで泥のように拳を包み込み、威力を完全に吸収してしまっていまからだ。



「(この感触……ゲル状……まさか『フロート・ジェリー』!?)」



 『フロート・ジェリー』───半スライム特性のボディを持つ魔物であり、ガスと粘性物質で構成されたその肉体は、物理攻撃をほぼ無効化してしまうため、倒すには魔法かコアの破壊が必須となる。



「ッ!?」



 次の瞬間、透明だった体色が一気に毒々しい紫へ変色していく光景にいち早く危険を察知したマキナは、即座に腕を引き抜き強引に距離を取った。


 脱いた腕を確認すると、そこにあったはずの手甲があっという間に黒く変色し、ドロドロに溶解していく。



「(これは『テイル・スコーピオ』の毒で間違いない。でもいま、尾には一切触れて無かった。もしかして、毒がスライムボディ全体に浸透している……?)」



 溶け崩れる手甲を無理やり外して捨て、マキナは腕に走る鈍い痛みを堪えながら情報の整理を続ける。



「(『モア・ウルフ』の敏捷性、『フロート・ジェリー』のスライムボディ、そして『テイル・スコーピオ』の毒と尾。物理攻撃は通らないしコアは猛毒のスライムの最深部。私との相性悪すぎ……)」



 すでに再生し終えた手を強く握り締め、状態を確認しつつ、視線を別の個体へと向ける。



「(さっきの鈍重な個体……よく見れば岩のような外皮は『グラウム・ビースト』、そして殴り付けた箇所の局所硬化能力は『ストーン・タートル』……かな)」



 『ストーン・タートル』────分厚い甲羅のような装甲を持ち、瞬間的に局所を極限まで硬められる魔物。


 先ほどの防御は、『グラウム・ビースト』本来の強固な装甲に加え、着弾点を『ストーン・タートル』の能力で硬化させた複合防御なのだろう。



「(元の高い防御力に加えて局所硬化……単体なら対処できるけど、融合しての防御力は正面突破は厳しいかも)」



 二体の危険性を把握したマキナは、次いで残る最後の一体へ視線を向けるも────



「ッ!?いない!?」



 つい先ほどまで間合いの外で様子を窺っていたはずの三体目のキメラが、忽然とその姿を消していた。


 視線を巡らせようとしたその瞬間、背筋を撫でる不穏な気配を感じ取り、マキナは反射的に身体を引き締め防御姿勢を取る。


 直後、死角の側面から叩きつけられるような凄まじい衝撃が走り、骨が軋む嫌な音とともに、マキナの身体は数メートル先まで吹き飛ばされた。



「〜〜〜ッ、ゲホッ!!」



 肺の空気を強制的に吐き出させられ、全身に鈍い痛みが走る中、それでも咄嗟の防御が功を奏し致命傷を避ける事には成功する。


 飛ばされた衝撃で地面を転がりながらも、身軽に受け身を取って即座に跳ね起きる。



「姿が見えなかったのは、空間魔法?いや違う。攻撃される瞬間に気配は感じ取れた。ってことは……」



 目を凝らし、何の変哲もない空間を見つめると、その一角だけ景色が蜃気楼のように歪んでいた。



「(あれは、『シェイド・リザード』の保護色……?攻撃の衝撃も重かったし、多分間違いない。でも保護色だけならもっと早く気配に気付けたはず……)」



 やがて歪みがほどけ姿が露わになっていき、マキナは瞬時に全体像を観察した。



「(四本足?でも翼もある。それに耳が異様に発達してる……気配に気付かなかったのが超音波によるものだとしたら、『ウイング・バッド』の特性……?)」



 数多の戦場で、魔物との戦いを生き抜いてきた経験が、複合した魔物の特性を即座に読み解いていく。



「(特性は掴めた。とはいえ、どうしよう……)」



 だが、融合した異質な能力に極めて相性の悪い特性を理解したからこそ、いまの状況の苛烈さが深く突き刺さる。


 周囲には倒れ伏す非戦闘員がおり、そちらに意識を向けなければならない最悪に近い状況。


 それでも立ち止まる時間は与えられず、短い攻防の末にマキナを明確な脅威と認識したキメラたちが同時に動き出し、一斉に襲いかかる。


挿絵(By みてみん)

※後書きです



ども、琥珀です。


ようやくVSキメラに入ったぁ……

ここが一つの展開の山場だったので、ほんとにようやくって感じです……


たくさんの戦闘シーンと、多くのキャラがここから増えていきますので、お楽しみに!


本日もお読みいただきありがとうございました。

次回の更新は月曜日の朝7時頃を予定しておりますので宜しくお願いします。


評価やブックマーク登録、リアクションも大変励みになります。


もし面白い!面白そう!と思っていただけたら是非宜しくお願いします!

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