10月28日(月)
10月28日、月曜日。月末が近いため、集金に回るための伝票処理や仕事の整理を行う。
月曜日というのは、何度迎えても憂鬱だ。何せ、休みの次の日。数時間前まではご機嫌で過ごしていたのに、あっという間に会社に来ている。
そして、仕事というのはいつまでも終わらない。ありがたいことだけれど、やる事が山積みになっているとうんざりする。
「ちょっといいか?」
伝票整理をしていると、上司が声をかけてきた。手を止め「なんでしょう?」と答えると、上司が口を開く。
「シタミ工業って、お前の担当だったよな?」
「ええと……ああ、そうですね。一年に一度、あるかないかですけれど」
「そこが、現地調査をお願いしたいらしくて」
「現地調査?」
思わず聞き返すと、上司は「私もよく分からないんだが」と前置きしたのち、言葉を続ける。
「工場を新規に作るか悩んでいて、候補地を回っている最中なんだそうだ。うちの会社から納品をお願いするかもしれないから、意見を聞きたいんだそうだ」
なんだ、そりゃ。そんな事、初めてお願いされた。
私が不思議な顔をしているからだろう。上司は「それがなぁ」と更に続ける。
「一週間ほど、出向という形で来てほしいとのことだ。その間の給料は支払うし、出向なのだから休み扱いにもしないでほしいと」
「何で、私なんでしょうか。それに、月末だから集金が」
「集金の方は、こちらで手分けするから問題ない」
おお、頼もしい。
「うちの会社にも謝礼という形をとると言われてな。お前という商品を納品する、に近いかもしれん」
ドナドナか。
「集金や末締め処理をお任せしていいのなら、私は構いませんが」
「……今日、できる限りしてもらって、後でもいいものは復帰した際にしたらいい」
おやおや、頼もしさがどこかに行ったような気がする。
それでも、これはなかなか魅力的な案件だ。集金はやってもらえるし、それでいて給料はちゃんと出るし、出向先でいい勉強ができるかもしれない。
「とりあえず、明日シタミ工業さんの方に行ってほしい。今日はアポ以外はデスク処理をしてくれ」
にっこりと上司は言い、シタミ工業の案件内容が書かれた紙を私に手渡した。
なるほど、明日午前九時から説明会、とある。様々な商社が参加するとあるから、本当にいろんな意見を聞きたいんだな。
現地調査、というからには、様々な土地を回ることになるだろうし、ちょっとした旅行気分ができるかもしれない。
仕事だけど。
「ちょっと楽しみになってきたなぁ」
私は呟き、伝票処理と末締め処理をできる限りこなしていく。
憂鬱な月曜日が、遠足前日の小学生気分へと変わるのだった。