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第四話 飛鳥にて

 少女から渡された衣を見ると今着ている生成りの麻と違い、鮮やかな緑と明るい黄色で少し重みがある。緑の方はおそらく上着でゆったりと長く、黄色の方は腰からくるぶし位まであり丈の長いスカートのようだ。


 突如以前これによく似た古代衣装を神社の祭りで着たことを思い出した。昔の記憶をたどりながら、なんとか着ることが出来たが帯の結び方がわからずに下の裾がロングドレスの様にダボついて地面を擦っている。上手く歩けるのか不安だ。


 いまだに頭の中はパニックで訳がわからないが、とにかくこの状況を乗り切れば、この夢もじき醒めるはずと、その時は思っていた。


 ひとまず着替え終えると寝台らしきものの上にゴロンと横になった。さっきはボヤけてわからなかったが、天井は藁で出来ている。ため息をついて目を閉じた。しばらくすると再び戸口の方から若い少女の声が聞こえた。


 「あのう、中宮様のもとへご挨拶に参りますが、お身体の具合はどうでしょうか?」


 「ええ、まだ少し頭がぼーっとするけど大丈夫よ」


 「さようでございますか、良かったです。じき良くなりましょう。中に入ってもよろしいですか?」


 「えぇ…」


 中に入ってきたのは先ほど来た少女とは別の少女だ。彼女もまた美しい膝丈まである、薄い黄色の上着をまとっている。髪もきれいにまとめられ頭の上で二つに結われている。少女は上から下まで素早く私を見て言った。


 「私が着替えのお手伝いをするまでもなさそうですね、とても上手に衣を羽織られておいでです。髪だけ結わせていただいてもよろしいですか?」


 「えっ?えぇ…私、頭の中がまだ混乱していて、都に来るのも初めてだし、誰に挨拶しにいくのかもわからないんだけど…」


 話の途中だったが、少女は私の後ろに回ると、慣れた手つきで長い髪をまとめ始めた。


 「心配いりません、中宮様はとても思慮深く聡明でお優しい方です。お会いすればすぐに安心されるはずです。さぁ、日が暮れるまえに参りましょう」


 少女はさらりと言った。


 「えぇ…」


 言われるがままに立ち上がり、少女の後ろを重い足取りでとぼとぼと歩き始めた。これから何が起こるかわからない緊張と、いつまでたっても醒めぬこの夢の不安とで、体は強ばり、胸の鼓動は鳴りやまない。


 慣れない衣をまとい、裾を踏まないように両端を持ち上げ、ふらふらしながら歩くのが精一杯だった。この敷地の入口なのだろうか、立派な門が見えた。キョロキョロしながその門をくぐり抜けると、目の前は一気に開けその先に朱色に輝く都の姿が飛び込んできた。


 なんて美しいのかしら……これ、夢じゃないのかも…お、落ち着いて私…


 大きく深呼吸し、また前を向き歩き始めた。ゆるい下り坂の先に一頭の馬と馬車が見え、そばに手綱を持つ男の姿が見えた。




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