おわりの果てで
これにて。
廃墟での攻防戦。
はぁはぁはぁはぁ。
和也はゾンビたちの血で染まった夕景の中、だらりと両手を下げた。
(頃合いだ)
そう思った。
闇が静かに迫って来る。
ゾンビたちは夜を恐れ、どこかしらへと消え去っていく中、彼は岩に背をもたれ天を仰いだ。
「さあ来いよ・・・」
自虐気味にそう呟いてみたが、黄金の扉は目の前には現れなかった。
「・・・・・・」
和也は30日目を過ぎても、なおその身体はアンデッド化の傾向が見られなかった。
バディは手をあげ黄金の扉へと入って行く。
彼はそっと手をあげ返し答えた。
「・・・俺は?」
うな垂れて膝まづいた。
黒服が彼の元へ近づいて来る。
「・・・・・・」
ちらりと一瞥したあと、不服そうな顔を見せるゾンビハンターに黒服は苦笑いを見せ、シガーを手渡し、愛用のジッポーで火をつけた。
和也は無言のままで吸った。
紫煙が荒寥の夜空へとあがる。
「不服そうだな」
そう言う黒服に、
「どうなってんだよ」
と和也は恨めしい瞳を向けた。
「俺が知る訳ないだろ・・・だが」
黒服は首を竦めつつ、話を続けた。
「お前は、常識を打ち破ったのかもしれんな」
「どういうことだ」
「どんなモンでも世界でもごく稀に規格外ってのがあるだろ。それがお前じゃないかと」
「・・・まさか」
「だが、お前は今リミットを越えた」
「たった1日だぜ」
「されど1日だ。これはどのゾンビハンターも越えられなかった壁だ。お前が希望の光となるやも・・・」
「やめてくれ」
「フッ・・・そうだな。過剰な期待はより絶望を産むことになる」
「そうさ」
「しかし、夢をみるくらいはアリだろ」
「別にもう夢とか見たいとは思わない」
「そうか」
「そうだよ」
「お前がもしかしたら人類に光をみせる存在だとしたら」
「興味ない」
「そうか」
「そっちこそ、どうした随分と今日は感傷的じゃないか」
「・・・そうだな。もしお前が明日でも、ゾンビ化するならば容赦なく首輪を爆破することにしよう」
「そうこなくっちゃだな」
「ああ」
「だが、俺は黄金の扉むこうで死にたい」
「・・・案ずるな壁は越えただろう・・・お前が希望を描いたってバチは当たらんぞ・・・・・・もしももしもの場合は善処するが、それはお前次第だ」
「ふん」
やがて夜が明ける。
和也はひとりヘリコプターから投下された。
前列のないリミットレス・ゾンビハンターの出現、であるがゆえにいつゾンビ化するのも分からないリスクを考慮しバディはつけず、様子見の単独殲滅ミッションが課せられたのだった。
(生きるも死ぬも地獄か)
彼は心の中でそう呟き、ゾンビが群がる荒野へと一人立った。
すると彼を目掛けて無数のアンデッドたちが迫り来る。
和也は一度目を閉じ、
「さてと」
と呟き、背中には由夏の愛刀、腰のホルダーにはたまのサイリウム、かつてのバディたちの武器をぽんぽんと手で触れ、ゆっくりと目を見開く。
群れをなし飛びかかるゾンビ。
「よしっ」
ガトリングガンをぶっ放し、弾丸が尽きるまでゾンビたちに浴びせる。
それから、両手にマシンガンを持ち、次々と生きる屍たちの急所である頭部を撃ち抜いていく。
身体中に巻いた弾丸が底つくまで打ち続ける。
正確無比な射撃は確実にゾンビたちを死の世界へと葬り去った。
思わず口角が歪む。
(まさか、こんなことになって、平然と銃をぶっ放しているなんて)
そんな事を頭に思い浮かべながら、引き金を引きゾンビを殲滅させんとする。
ドクン。
和也は突如激しく胸が痛み、喉の渇きが激しくなり、気が狂るわんばかりにのたうち回る。
ドクン。
(やばい・・・意識が・・・・)
ドクン。
モニター越しに黒服は彼の異変を察知し、首輪のスイッチに手をかけた。
和也は咄嗟に腕時計をみた時刻は16時を示している。
彼は歯を食いしばり、襲われる寸前で引き金をひいた。
「まだ・・・まだ・・・俺は」
瞳に光が宿り、顔をあげる和也に、黒服の手が止まった。
(あと少し・・・俺は黄金の扉の先で終わりの果てをみるんだ・・・・・・)
和也はマシンガンを投げ捨て、敵の懐に飛び込んだ。
腰のホルダから取り出した2本のサイリウムを両手に持ち、踊り暴れ狂う。
「OAD」
ゾンビたちの真っ只中、両足でがっちりと大地を踏みしめ、激しく腕を右に左へと回す。
発光するサイリウムが高熱を放ち、生屍たちは殴打され肉隗と化す。
「ふー」
肩で息をする和也の動きが止まり、襲いかかるアンデッド。
「ロザリオ」
天にサイリウムを突き上げ、ゾンビたちを貫いたままジャンプすると、ペンラを下方へと向けて兜斬りで着地、その衝撃で敵を吹き飛ばした。
「アマテラス」
一心不乱に右右回転左左回転右右回転左左回転右右回転左左回転右右回転左左回転を幾千幾万と繰り返し敵の力を削いで絶望を与えた。
ぴたりと和也の動きが止まり、
「すー」
と息を吐く、再び群がり襲いかかるゾンビたちに気合一閃、
「魂の爆発!」
胸を張り怒りと魂の叫びの衝撃波がゾンビを撃つ。
和也はそっとサイリウムを腰のホルダへと戻すと、
「・・・・・・いくよ」
すらりと背中の両刀を抜いた。
最初に襲いかかって来た屍を左手に持つ刀で脳天から袈裟斬りしたあと、右の刀でぐるりと薙いで一閃すると身体は真っ二つになり、その刹那、両刀で首を斬った。
身体の正面で刀をクロスさせ頭上に振りあげ、一撃必殺の振り下ろしで敵を滅する。
歩きながら正確無比に両刀でアンデッドたちの首を容赦なく貫く。
激しい剣舞で目の前の敵を切り倒して行く。
そんな姿をモニター越しに見ている黒服は唖然となった、その姿は血色は失われ屍のようだった。
「お前・・・」
と呟く。
それからも迫り来る何体ものゾンビを斬って斬って斬りまくった。
夕刻が過ぎ、暗闇が訪れる頃、和也によりこの地域のゾンビ殲滅が確定した。
彼はじっとその時を待つ。
そして・・・。
黄金の扉が目の前に現れた。
完
完結です。




