それから・・・。
もうひとつの終わりの果て。
「俺は和也。君の名前は?」
彼は少女に名を尋ねた。
彼女は少しだけ考え込んだあとに、
「たま・・・たまです」
と、にこりと微笑む。
ヘリが決戦の地へと降りる。
「さあ、いくぞ!」
和也がそう叫んだ瞬間、少女は飛び出した。
「え」
呆気にとられる彼をよそに、たまは敢然とゾンビの群れへと真っすぐに駆けていく。
両手にはサイリウムを持っている、その武器は特殊で先端から緑と赤の熱線が放たれている。
たまはヲタ芸を思わせるような、華麗なるサイリウムさばきで、次々とゾンビたちを薙ぎ倒していった。
「・・・・・・くそっ!」
和也は先輩面をしていた自分が恥ずかしくなり、マシンガンを敵目掛けぶっ放す。
一時間が経ち、二時間と時は経過していく。
和也は額の汗もしくは敵の返り血を拭おうとする。
「和也さん!」
たまの叫びに上空を見あげると、ゾンビが目の前に飛びかかっていた。
「!」
少女は右手のサイリウムを投げ、飛びかかるゾンビの首へと命中させ、軌道を逸らさせる。
わずかな余裕が出来た和也は銃をぶっ放し難を逃れる。
が、その隙をつき、ゾンビたちがたまの右腕に噛みつき、食いちぎった。
「たまっ!」
「大丈夫、気にしないで!ふん!」
たまはゾンビのみぞおちを右足で蹴りあげ、食いちぎらせた右腕ごと飛ばし、そのまま飛びかかり左腕に持つサイリウムで脳天を穿った。
彼女は失った右腕のことは微塵も気にすることなく、全力でゾンビを駆逐する。
血みどろの戦いが半日続き、夜の帳が訪れる。
ゾンビたちは姿を消し、ヘリの到着が一時の休息を告げる。
二人はその場にへたり込んだ。
「たま」
和也はなんとなく不安に駆られ、新しいバディの名を呼んだ。
少女は少しだけ寂しそうに笑った。
刹那、地面が割れ、飛び出し現れたのは黄金の扉だった。
「な」
「来ちゃった」
たまは、砂埃を払い立ち上がる。
「・・・なんで」
突然の別れに和也は絶句する。
「そうですね」
たまは、ふざけて敬礼し笑った。
「・・・・・・またか」
彼に虚無感が込みあげる。
「ふふふ、私は満足していますよ」
「・・・どうして、死ぬんだぞ」
「・・・だって、一生懸命、生きたんだもん」
たまはそう言うと、和也にキスをした。
「君、あの人に似ている」
たまはくすりと笑う。
「・・・・・・」
「ばいばい」
少女は黄金の扉を開け、中へと消えて行った。
たまの夢。




