前編「再会」
話が進まないので、とりあえず投稿してお尻を叩くことにしました(笑)。
人類は今、未曾有の窮地に立たされている。
自業自得と言うべきであろうか、人類の幸福の為に開発された、電子頭脳によって人々は、かの叡智の管理下に置かれてしまう。
人類の上に立つ存在となった電子頭脳は、やがて効率のよい、人類の統制のため、恐ろしい薬剤を開発する。
人減らしを行い、機械にとっての理想郷を作る劇薬が無作為にばらまかれる・・・それが通称裏返り薬、HKZ202である。
この薬剤を投薬されると人は24時間以内に死なない死を発症する。
脳の記憶感情は全て消え去り、ただ生きる屍となって、生きる人々に襲いかかる、まさしくゾンビ化そのものである。
電子頭脳が、かつての人間である ゾンビを人類と戦わせ、最良と選定した人間が栄える楽園を築きあげるため、あくなき戦いは果てしなく続けられている。
だが、悲しいかな人類はこのことを知る由もない。
新たなウィルスあるいは、増長した自分達への罪と罰と認識し、対抗策を試みるが、人のゾンビ化の流れは、遙かに予想を超え人類は未曽有の危機をむかえている。
これは荒廃した世の中に戦う、人々の戦いの物語である。
アパートの3階から眺める光景はこの世のものではなかった。
陣内和也はただただ 絶望するしかなかった。
今までの日常が一瞬にして崩壊する。
眼前には生きる屍が溢れ、人々に襲いかかっている。
惨劇惨状、阿鼻叫喚、あらゆる言葉も筆舌尽くしがたい状況が目の前に広がっている。
和也は窓を閉め、暗室に閉じ籠もった。
ただただ息を潜める。
自分は助かるのか?
家族の無事を恋人の無事を祈らずにはいられない。
ドアを打ち破る激しい音がし、ドタドタと足音が聞こえる。
この部屋に入ってきたのだ。
・・・屍が、腐臭とともに群れをなして。
(来るな、来るなっ!)
和也は心の中で幾度も念じる。
(・・・見つかったら殺される)
心音が高鳴り、脈が激しく打つ。
(助けて、助けてくれっ!)
大挙。
その心の声は通じず無慈悲にも、こじ開けられた扉からは大量の屍たちが、彼へと襲いかかった。
屍の虚ろな目が、和也の姿を捕らえる。
生ける屍たちは、和也へと我先に飛びかかった。
幾度も噛まれ引き裂かれ激痛が走る。
しかし和也も、ただ座して襲われるだけではない、わずかな生への希望を持ち、拳でゾンビへと殴りかかる。
生への渇望が彼に力を与える。
刹那・・・。
「・・・かあさん」
屍の中に見てしまった。
大事な人を・・・・・・全身の力が抜ける。
そうして彼は、だが、瞬時に屍の波に飲み込まれてしまった。
斬撃!
「和也 しっかりしなさいよ!」
和也の虚ろな思考に、聞き慣れた声が耳に響く。
「・・・ゆ・か」
和也の恋人である由夏は完全とゾンビたちに立ち向かっている。
彼女の得物である日本刀が、次々と屍たちの首を切りおとしていく。
・・・・・・。
・・・・・・。
薄れゆく景色の中、和也は涙を流し、気を失った。
・・・・・・。
・・・・・・。
和也の頭の中で微かに聞える。
「だから、大丈夫って言っているでしょ。私が彼を見るから」
「だ・・・が、近すぎる」
「近すぎるって、何なのよ。恋人同士じゃ駄目なの」
「情・・・が、生まれる」
「その時は、どうせ首ボン出来るでしよ」
「・・・・・・」
「お願い・・・お願いします」
「で・・・は・・・適合と・・・みなし、処置する」
ズブリ。
和也は首筋に激しい痛みを感じ、再び意識を失った。
・・・・・・。
・・・・・・。
和也が目覚めた世界はもうすでに別モノだった。
ゾンビが跋扈する魑魅魍魎たる世界が現実だった。
「ん・・ん」
そうして和也は目を覚ました。
「おはよう」
ちらりと横目で彼を見た由夏は、入念に刀の手入れを行っている。
「ここは?」
彼はゆっくりと半身を起こした。
首筋が痛いと感じ、それに首輪がされていた。
「それ触らないで、ボンするかもよ」
和也は、思わずにへらと笑う。
「またまた〜」
「本当よ」
彼女はそっけなく答えた。
「・・・・・・」
「覚えているでしょ」
「・・・夢じゃなかったのか」
「だったら、良かったんだけどね」
「・・・・・・俺、死んだんじゃ?」
「それに関しては保留ね、一応生きているでしょ」
「ああ」
「ま、半分死んでるも同然なんだけど」
「???どゆこと」
「だよね、それが普通の反応だよね」
「あの時のゾンビだよな?」
「そうね」
「ホラー映画だけの話かと思った」
「私もそう思った」
「わからんことだらけだ」
「うん。分かる。じゃ、私がわかる範囲で説明するね」
「頼む」
「私がゾンビに襲われたのは10日前、和也と同じように私も死んだと思ったわ。だけど、気付いたら同じように私も首にチョーカーが巻かれていた。」
「・・・・・・」
「黒服にサングラス、まるで帝愛みたいな男が言ったの。あなたは選ばれた戦士だと、だが強要はしない、選択権は自由だと」
「にわかに信じ難いな」
「ねぇ、まるでB級映画みたい。でも、ここから先が超重要、覚悟して聞いてね」
「ああ」
「この身体は、やっぱりゾンビ化しちゃうらしいの」
「!」
「30日、人としてのは頭脳と理性をこの身体に留まられるのだそう」
「?」
「で、このまま、ゾンビ化するか否か、最もそのままという結論するなら、黒服は即座に私を射殺すると言ったわ・・・もう、選択肢なんてないじゃない」
由夏は自嘲する。
「今の私達は常人の倍位上の力が出せるのだそう。つまりゾンビと同等の力がある。その日を迎えるまで、ゾンビを駆逐することが私達の使命・・・これが、とりあえず30日間の生との交換条件・・・」
「私達って」
「そう、あなたもよ」
「・・・・・・」
「私はあなたに会うために生きた。だから、あなたも私のために生きて」
「・・・・・・」
いきなり重いものを背負わされた和也は、すぐに言葉がでない。
「世界は変わったの」
「そんな・・・」
「受け入れて」
その時、ドーン!いう轟音が響き、重い空気が打ち破られた。
「そろそろね」
話は保留と両手をあげ由夏は立ち上がった。
「さあ、いきましょう」
「いくって?」
「決まっているじゃない・・・駆逐よ」
由夏はそう言うと、和也の手を引き走り出した。
2人の運命やいかに。