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3.ふと我に返った。


 橋の出口に辿り着いた瞬間に入口に戻される。

 目の前の釘に打たれた赤黒い藁人形は、その奇妙な状況の「鍵」になっていると思われる。


 その藁人形を、彼女──幽霊とおぼしき制服姿の少女がぼんやりと見つめている。

 彼女は私がその藁人形に触れることに、拒否感を示す……と。



「…………」



 赤黒く染まった藁人形。そんなもの、私だって触りたくない。

 藁人形の処理とか彼女の除霊といったこととか、それは私ではない専門家の仕事ではないか? 知らんけど。


 少なくとも、その手のオカルト知識を持たない事務職の一般人にすぎない私が、やれることではない。



「そもそもだ。

 今、私がしたいことは何だ?」



 自宅に帰ってシャワーを浴び、一刻も早く寝ることである。



「そのためにすべきことは何だ?」



 この橋を渡ることである。



「…………本当に、そうか?」



 そこまで考えた所で、私は少女に背を向けて歩き出した。

 私がまだ試しておらず、私にでも簡単にできることに思い至ったのである。



「…………」



 私が歩を進めた方向——そこは橋の出口でなく、先程私が入ってきた入口であった。

 恐る恐る、私はさらに1歩を進める。



「ッ!」



 私の体は、何も問題なく先に進んだ。



「……なんだ。出れるじゃないか」



 そう言って振り返ると、幽霊の少女が橋の中央で座り込んでいるのが見える。

 彼女が追ってくる様子はなく、こちらに見向きもしない。



「…………」



 本当に何だったんだろうと思いながら、私は川沿いの道を500メートルほど歩き、別の橋——車道と歩道が併設された広い橋に入った。

 先程の少女のような存在は、こちらには見えない。



「その橋が渡れないなら、その橋を渡らず別の橋を渡れば良い。

 子供でも分かる簡単な理屈だな」



 そんな身も蓋もないことを呟きながら橋を渡り終えるとまたしばらく歩き、ようやく私は自宅のアパートに辿り着いた。

 自室に入るなり服を脱ぎ捨てて熱いシャワーを浴び、敷きっぱなしの布団に潜り込み、泥のような眠りに落ちたのである。



・エピローグ1へ


無事、生還ルートです。やったね!

……すみません。次話よりエピローグとして4話ほどネタばらし&解決編が続きます。今しばらくお付き合いをいただけると幸いです。

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