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2.彼女の除霊を試してみることにした。


 橋の出口に辿り着いた瞬間に入口に戻される。

 目の前の釘に打たれた赤黒い藁人形は、その奇妙な状況の「鍵」になっていると思われる。


 しかし彼女——幽霊とおぼしき制服姿の少女は、その藁人形に触れて欲しくないらしい。



「……ならどうしろと言うのかね。本当に困るのだが。こっちは疲れてるというのに」



 そうブツブツと呟きながら、私は橋の中央で座り込む彼女の隣にどっかりと腰を下ろした。



「ふう。……その、もしかしてだが」



 1つ呼吸を整えて、私は彼女に向けて話を切り出した。



「キミが……成仏? してくれれば、この得体の知れない状況は解けるのだろうか」


「…………」



 かつて私が愛読していた小説や少年漫画などでも、敵の能力や術を解除する方法は2つ。

 1つは術のかなめとなる条件……要素を取り除くことであり、もう1つは術者を排除することである。


 前者があの藁人形であり、後者が目の前の彼女であろうと私は考えた。

 幽霊である彼女には、気持ち良く成仏してもらうこと……この世への未練をスッキリと解消して天国に旅立ってもらうことが、平和的で穏当な解決策であろう。



「キミは、どうしてここにいるんだ?

 キミに一体何があった?」



 そう問いかけたが、彼女は反応しない。



「人に吐き出すことで楽になることもある。

 どうか、話してみてくれないだろうか?」



 再度問いかけたが、無反応である。



「…………」



 その視線が私に向くこともない。

 彼女は相変わらず藁人形の方向に、ぼんやりとした視線を向けている。



「聞いているのかキミは。

 ……私はここから出たいんだ。

 君が成仏してくれないと、私も出られないと思うのだが?」


「…………」


「本当に聞いて……聴こえていないのか?」


「…………」



 いささか腹が立ち始めた所で、私は肝心なことに気がついた。

 彼女——その幽霊がそもそも音を聴ける状態になければ、対話もなにもあったものではない。



「あーーーー!」


「…………」



 彼女の耳元で大きな声を出してみても、彼女からのリアクションはない。


 私はガックリと肩を落とした。



「……南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏。南無妙法蓮華経。般若波羅蜜多」



 ワンチャンに期待して知る限りのお経を唱えてみても、彼女に変化は見られない。



「…………」



 こうなると、彼女を成仏させることは、到底不可能に思えた。

 別の方法を検討すべきだろう。


 私は———



1.藁人形を釘から外すことにした。

2.彼女の除霊を試してみることにした(失敗)

3.一体何をやっているんだろう……と我に返った。


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