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本能:バイタリティ

作者: りあ

 しんどい。つらい。何も変わらない。生きるのをやめたくなる。でも死ぬのはめちゃくちゃ怖い。誰か助けて。

 そんなことを考える。来る日も来る日も、価値を見出せない24時間を現実逃避と自己保身で埋め尽くしていく。もっと楽に生きたかった。状況を変えるきっかけになりそうなことは色々してきたし成果がないわけじゃなかったけど、気がつけば絶望という名のスタート地点に戻っている。戻ると分かっているなら、勇気を出して前に進んでもどうせ無駄だ。どうせ……。頭に浮かんだどうせ、が離れなくなる。わかっている。どうせ無理って思うくせに期待を捨て切れていない。挑戦するたびに自分は何もできない人間だと感じて傷ついてきたはずなのに、自分の中の本能には、ことあるごとに「何かやってみよ」と誘われている気がする。そういう時は、もうなにもかもどうでもいいんだ、と押し切ってその無邪気な瞳から目をそらす。前に進むことと動かないこと、どちらが”良い”選択なんだろうか。

 今日もまたダラダラと携帯をいじる。それを自分が楽しいと思っているかどうかさえわからなくなっている。わからない方が幸せかもしれない。何をして生きていればいいかわからなくなりそうだ。

 目の前を見ると、いつの間にか小説を読むサイトに接続している。別に読書が好きなわけではない。たくさん文章を読んで知識をつけることで、自分の存在価値を造り出そうとでもしているんだろうか。こんなに心がぐちゃぐちゃのつもりでも無意識はあがいてるんだなぁと、感心しつつ自嘲する。

 そのときふと、意識がサイトそのものを捉えた。ここでは、無料で小説を書き、投稿し、読むことができる。投稿された無数の物語たちがこの画面の奥で息をしているわけである。でもそれらは言ってみれば、顔も知らない誰かがキーボードで打ち込んだだけの文章の群れだ。そうなればもちろんハイレベルなものやそうでないもの色々あるだろう。ただし、その作品たちには唯一にして重要な共通項がある、と思う。それは、おそらくどれも、作者が書きたくて書いたということだ。

 得意な事はひとつも思い浮かばない。すなわち、自分にうまい文章が書けるとは思っていない。でも、それでもいいのかもしれないと思う。自分の生み出すものの受け取り方を決めるのは自分じゃない。一人として同じ人間がいないなら、自分にしかできないこと、自分にしか書けない物語があるはずなのではないだろうか。それならポテンシャルに賭けて、やりたいというだけで、やってみてもいいかもしれない。あわよくば誰かを楽しませることもできるのなら。

 そう思って驚いた。期待しているのだ。ほかでもない、自分の可能性に。その気づきは小さな自信になった。別に今までと何も変わらないかもしれない。変わっても意味はないかもしれない。それでも、不安や忠告はあっという間に遠くにかすんで、じわじわと期待が胸を占領していった。


 ”もう、しょうがないなぁ。”

 体を突き動かす希望とそれを牽制する不安をたたえて文字を打ち込んでいく。今度はどちらに軍配が上がるだろう。

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