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6.解決

今回ラストです。

麗香のきめ台詞は今読むとちょっとはずかしい。

 

「あ、そうそう、忘れるところだった。

 浜坂さんの遺体のあった部屋なんだけれど、少し不信なことがあったわ」

「不信?」

「ええ……現場にコーヒーカップがひとつあったんですって。

 書類の散乱した机の上にね」

「机の上……」

「するとね、そのコーヒーカップに、ひとつ指紋がついていたそうよ」

「指紋?」

「ええ……浜坂さんのものではなかったのだけれど、それだけだから県警も気にもしなかったらしいわ。

 もしかしたら、証拠になるかもしれないから保管してもらったけど……」

 鶴川警部という人は時々、こういう重要なことを忘れていたりする。

「どんな風についていたんですか、その指紋?」

「普通に持つように、よ。

 ただ、浜坂さんは右利きだったようだけど、左手の指のようだ県警では言っていたわ」

「! 瑞穂さん、その彼は……?」

「右利きです……でも、矯正したらしくて、とっさのときは左手を……」

「ということは左手の指紋が残っていても……」

「不思議ではないわね」

「ということは後は……」

「「アリバイトリックだけ!」」

 三人は声高に宣言した。

 

 しかし、時刻はもう、20時過ぎ。

 四人は現場となった岡山のホテルにとまることにした。

 四人全員が一人部屋になったため、麗香は時刻表を見ていた。

(彼が犯人だとすれば、やくも1号に乗ったのは間違いないでしょう……。

 しかし春奈さんの話の時間は動かせないわ……。

 彼は横浜から宍道の間のアリバイがないことになる。

 とすれば、横浜で降り、岡山を4時過ぎにとおり、宍道に10時18分につく……そんなこと可能なのかしら……。

 横浜発は21時35分……たとえばこれで、東京駅に戻って新幹線に乗るとすると……)

 麗香は、東海道線のページと新幹線のページを交互に見る。

(だめだわ……東京駅に戻ったら、最終の三島行きですらもうでた後……。

 でも横浜なら……もしかすると……)

 そして品川や新横浜へのアクセスを調べてみる。

「あら……」

 麗香は小さく声をあげた。

(品川まで戻れば最終の名古屋行きに間に合うのね……。

 でもこれ以降新幹線はない……すると、普通列車か寝台特急か……。

 名古屋でこれで間に合う寝台特急は……。

 あら、『あさかぜ』が新幹線の到着時刻に発車してしまうのね……。

 次は……『出雲』……って)

「!?」

 麗香はあることに気がつき、ページをめくる。

 寝台特急のページを……。

「!!」

 岡山4:17。

 そこには、岡山駅到着がそうかかれていた。

 

『崩れたわ』

 誰かが麗香にそういった気がした。

 

 

「すべての霞が……晴れましたわ……」

 

 

 麗香は一人そういって、美由香・瑞穂・真帆を部屋に呼んだ……。

 

麗香さん!」

「所長!」

「みなさん……すべての謎が解けましたわ……。

 これから私が、すべてを解き明かします。

 これが、すべてを解き明かした表です」

 

 表:一日目:

 東京 21:10発

 ↓ 寝台特急『出雲』

 横浜 21:35着

    21:39発

 ↓ 東海道本線

 品川 21:56着

    22:07発

 ↓ 東海道新幹線『ひかり293号』

 名古屋23:46着

    23:46発

 ↓ 寝台特急『あさかぜ』

 (ここから二日目)

 岡山 04:17着

 (ここで殺害)

    07:24発

 ↓ 特急『やくも』1号

 安来 09:42着

    10:18発

 ↓ 寝台特急『出雲』

 出雲市10:57着

 

「すばらしいわ……麗香。

 でも、名古屋は問題ではなくて?

 在来線の発車時刻と同じ時間に新幹線ホームに到着して乗り換えられるかしら?」

 真帆が答える。

「真帆さん。

 私たち、東京で聞いたではありませんか。

 昨日の夜、『あさかぜ』は……」

 

「名古屋で五分遅れていた!!」

 

 そう答えたのは瑞穂だった。

「そう、『あさかぜ』は爆破予告のため、名古屋を発車したのは五分遅れの23:51。

 岡山では途中での運転停止のキャンセルなどでほとんど影響はなかったと思います。

 乗れないはずがありませんわ」

「なるほど……そしてアリバイを確実なものにするためには『サンライズ出雲』は邪魔だった……」

「ええ……おそらく爆死した乗客というのは、彼の横領に気がついた部下かなにかであったのではないかと思うの……。

 爆弾を抱え、『サンライズ出雲』に乗車し捜査をかく乱した……」

「そして彼は、より確実なアリバイを手に入れた……」

「そういうことです……。

 これで、すべての謎が解けました……」

「後は被疑者の確保、か……私の仕事ね」

 そういって、真帆が電話をかけた。

「瑞穂さん」

「……」

 瑞穂は泣いていた。

 麗香はその顔をみていて、この仕事を誇りに思っていた。

 そして、まだ見ぬ犯人が、明日東京でどんな顔をして逮捕されるのかに思いをはせていた。

 

  ~fin~

というわけで完結です。

 

この作品、10年以上前に書いていることはトリックからバレバレなわけですが、そのころ推理小説にはまっており、直前に読んだ西村京太郎御大の「ミステリー列車が消えた」に影響されている部分があります。

(といってもトリックは当時の時刻表を見ながら考えたもので、同じようなトリックを使った西村御大作品のドラマもありましたが、この「ミステリー列車~」のトリックを引用したわけではありません)

 

この推理小説に影響を受けている部分はラストシーンで、「犯人が出てこない推理小説」という部分で『これなら女性しか書けない私でも、男性犯人をかけるのでは?』とヒントを得て書くことができました。

 

というわけで次回作でお会いしましょう。

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