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100万年後に幽霊になったエルフ  作者: 霊廟ねこ
2章 才色兼備の猫人魔術士
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55 空中に浮かぶ動く映像

 レンゼイ村に到着した私達は時間も遅いため、今日は冒険者ギルドだけで過ごすことにした。

 他のギルドの待合室と比べても基本的な構造は同じだけど今までとは違った部分があった。ケミーは口を開けたままそれを興味深そうに見つめる。


「なにこれ? 人が入ってるし声も出てる、でも薄いというか触っても掴めない……? なんかよく分からないけど凄い!」


 ケミーは宙に浮かぶ四角い平面の中で動いている絵を見ると子どものようにはしゃいだ。

 まぁ今も子どもと言えなくもないけど。

 その様子を見てルイザはケミーに尋ねる。


「もしかしてこういうのを初めて見たのかしら?」


「初めて見た! どうやって中に人を入れたんだろう」


 再び画面を触ろうとするけど手はすり抜ける。


「中に人は入ってないのですわ。私も仕組みは分からないけど光で本物のように映し出しているみたいですわ」


「すっごーい! でもこの中の人達は誰なんだろ?」


「そのワールドチャンネルに出て来る人達を見たと言う人は誰もいないらしいですわ。世界七不思議のひとつですわ」


「ワールドちゃん? 七不思議?」


「七不思議とは言いますが世界に七不思議とされるものは100個は超えるみたいなので数字に意味はないのですわ」


「それって七を付ける意味あるの?」


「不思議さを強調するためじゃないかしら? 他のローカルチャンネルの人ならともかく、世界中で配信されてるワールドチャンネルの中の人を知ってるという方に不思議と出会ったことがないのですわ」


「えぇ? この世にいないってじゃあこの人達なんなの?」


「大昔の映像かもしれませんわね、それなら誰も知らないというのも納得ができますわ」


「じゃあローカルちゃんに映ってる人なら知ってる人がいるんだね?」


「ローカルチャンネルなら私もたまに町中で見たことがあるのですわ」


「へぇ……私もこれに映ってみんなに見てもらいたいなぁ~」


「え、どうして?」


「えーと、楽しそうだから」


 ルイザにはその感情が理解できないようで適当に返事をした後、窓口へ宿泊の手続きに向かった。


 ケミーは映像に飽きたのか、キョロキョロと映像の周囲に視線を走らせる。

 映像の下、台に乗ってる四角い装置に気づくと顔を近づけた。

 その装置から出てる光で空中に映像を映し出しているようだ。


「ここから映像が出てるんだ~、これって何て名前なんだろ?」


 ケミーの疑問にキディアが恐る恐る答える。


「あの……ケ、ケミー、これはディスプレイって言って色々な物が映像として流れるんだよ。昔、私も少しだけ見たことがあるよ」


 ケミーはキディアの説明を聞くと急に冷めた顔になり、返事はなかった。


(デシリア、これだよ。イブリンが言ってたドラマのこと。これにドラマが流れるんだよ)


 ステラは動く映像を見て指を差す。

 黙ったまま指を差すと変に思われるからやめて欲しい。


 その奇妙な様子をルイザが半目で見ていた。

 あれは「また変な事やってる」って感じの目だ。


 私がステラにそのことを伝えると腕を降ろして顔だけを映像に向けた。


(私達って知らない所で相当変な事しちゃってるかもしれないね)


(うぅ~、ルイザちゃんに嫌われたくない、次からは気を付ける)


 特殊な体質になってしまったからそう簡単に矯正するのは難しいだろうね。


(それでドラマのことだけど私は見たことないからよく分からないよ。突然大声で何か言い出すのがドラマだっけ? それとも舞台の演劇を映像として流してるのかな?)


 私の中のドラマのイメージはイブリンのせいで唐突に何かを叫び出すというのが頭に焼き付いている。


(違うよ、ドラマってのは物語のことだよ。なんて説明すればいいんだろ、今はドラマは映ってないからこの映像を見ても分からないだろうし)


(ふーん、これってステラの家にもこういうのあるの?)


(あるよ、じゃあその時に色々教えてあげるよ。ここだと落ち着いて観る余裕ないだろうし)


「ステラちゃーん、部屋に行こうよ」


 声の方を向くと受付窓口付近からケミーが笑顔でおいでおいでと手招きしている。

 ステラは早足で向かった。


(デシリアの生きてた100万年前にはこういうのなかったでしょ?)


 歩きながらステラが自信を持って尋ねて来た。

 なぜそんな自信があるのかは分からないけど、ほぼ正解だ。

 無いと言えば無いけど、あれをあるに含めてもいいか迷うところだ。


(あったと言えばあったかな? あれをあったと言っていいか悩むところだけど)


 私の時代から見ても古代と呼べる時代の遺跡にそれに似たようなものがあった。

 ここにあるのとは違いこちらが何か操作をしないと一切画面が動かないタイプだった。

 操作をすることで画面の中の絵が動いたり、文字を記入できたり、色々な用途に使えそうなものではあった。

 操作したのは私ではなく当時は生きていた幽霊の知人だけどね。

 彼女は今の時代も幽霊として存在しており1週間ほど前に会ったばかりだ。

 ちなみにその知人は私より古い時代の人だ。


 と、知人のことは今はどうでもいいや。


 それでその古代のディスプレイっぽいものは、庶民はもちろん王族などの超上流階級の人達でさえ所有していなかったし、そんな高度な物が存在してることすら知っていない様子だった。

 そういう事情を含めると私の時代にはディスプレイなるものはなかった、と言った方が正しいのかもしれない。

 古代よりも私の時代の方が劣っているということになるね。

 悲しいね、間の時代に何があったのやら。


(もっと驚いてくれるかなと思ったんだけどなぁ)


 ステラは少しつまらなそうな表情を浮かべた。

 知らないふりして驚いた方が良かったかな?


(初めて見た時は驚いたなぁ、でもその遺跡以外では一切見たことがないとだけ言っておくよ)


(ねぇ、今度一緒に何か観ようよ! 面白いのもあるからデシリアもハマるかもよ?)


(じゃあ楽しみにしておくよ)


 あまり興味がないため楽しみにもしてないけど正直に言う必要もない。

 ちょうど話が一区切りする頃に部屋に着いた。

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