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100万年後に幽霊になったエルフ  作者: 霊廟ねこ
2章 才色兼備の猫人魔術士
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54 レンゼイ村へ移動中 2

「ルイザちゃんって魔術士なんだよね? 魔術ってどうしたら使えるようになるのかなぁ?」


 窓際のケミーは隣のルイザに尋ねた。


「体の中に術式を刻むと使えるようになるのですわ。だから魔術を完全な自力で使うのは普通は不可能なのですわ」


 例外なら使えるってことか。もしかしてそれって魔法のことだったりするのかな?


「刻むって……なんか痛そう」


「痛みは全くないので安心しても大丈夫ですわ。あ、ということはケミーは魔術が使えないのかしら?」


「そりゃあ、私が住んでた場所の人達は魔術なんて使えないのが当たり前だよ。私も魔術使えるようになりたいなぁ、また攫われるようなことがあると怖いし。どこで魔術を身に付けられるか教えて欲しいなぁ~」


 ケミーは隣のルイザに体を近づけていくけどルイザはステラみたいに嫌がる態度を取らない。


「そんなことも知らないのかし……あ、ごめんなさい」


「周りに魔術使える人いないから知らないんだよ~」


 馬鹿にされた発言でもケミーは特に機嫌を悪くすることなく笑顔で対応する。

 ルイザはケミーに悪態をついてしまったのが嫌になったのか気まずそうな顔をした。


「私も知りたい、教えてルイザちゃん」


 黙ってても勝手に喋ってくれそうなのにステラはわざわざ喋る様に促す。

 落ち込んでるルイザの気を紛らわせるためかもしれない。


「あれ、ステラちゃんって……あ、ううん。なんでもない」


 ケミーは途中まで言いかけた言葉を飲み込んだ。

 魔法を使えることを口止めしてたから言葉を止めたのかもしれない。


「し、仕方ないわね。じゃあ教えるわ。2つの方法があって、1つは冒険者ギルドで冒険者になること。もう1つは魔術士ギルドで魔術士になることですわ」


「冒険者ギルドでも魔術が使えるようになるの?」


 ケミーが不思議そうに尋ねる。魔術士ギルドというものがあるのに冒険者ギルドで魔術を身につけるということに私は違和感を覚えた。

 ステラは細かいことは気にしないのか特に疑問を感じてないようだ。

 キディアは興味がなさそう。


「冒険者ギルドでは活動をするための最低限の魔術が使えるようになるよ……ですわ」


 ルイザの変な語尾の付け方に空気が一瞬止まり、みんなの怪訝な視線がルイザに集まる。

 顔を赤らめ始めたルイザをフォローするためなのかケミーが口調を真似し始める。


「で……ですわ! 金持ちのお嬢様みたいだし私もですわって使おうかな、ですわぁ~!」


「ちょ、ちょっと馬鹿にしないでよ~ですわ! あ、ああぁぁっ!! ケミーの馬鹿!」


 馬鹿にされたと思ったルイザはケミーを何度か軽く叩いた後、顔を手で覆った。


 二人がやかましく騒いでいる横でキディアは窓の外を見ながらひっそりと呟く。


「空が赤くなってきた、そろそろ着くのかな」


 村らしき姿はまだ遠いのか見えない。空が赤くなってきたのだからそろそろだとは思う。


「キディアは魔術には興味無いの?」


 キディアが会話に混ざらないのが気になったのかステラは尋ねた。


「興味はあるけど、まずは孤児院から自立しないとね。それまでは決められないよ」


 今、将来はこうすると決めてもすぐには行動できない以上、考えが変わって別の事をするかもしれない。


「冒険者にならない? 簡単な魔術なら使えるようになるみたいだし、もしキディアが冒険者になりたいって思ったらいつでも私のチームに入れてあげるよ」


 キディアは一瞬嬉しそうにした。けど、やっていける自信が無いと思ったのかすぐに顔を曇らせる。


「あ、ありがとう。でも、私なんかじゃ迷惑かかるかも」


「そんなことないよ! もしかしたら私の方こそ迷惑かけるかもしれないし――」


「ステラちゃん! 私も冒険者になったら仲間に入れてくれるかな~?」


 発言途中でケミーが混ざってきた。


「え、ケミーも? そうだね……」


 ケミーがそう言ってくることを想定してなかったのか言葉に詰まる。

 返事に遅れるという事は嫌なのだろう。


「もしかして私じゃ駄目だったかな? そりゃあ私弱いから迷惑かけるかもしれないけどさ、努力して強くなるつもりだしステラちゃんと一緒なら強くなれそうだから仲間にしてくれると嬉しいよ。でも冒険者になるかはまだ分かんないけどね」


 ケミーはキディアと同じく足手まといを自覚していて、ステラに嫌われたくないという点も同じ。違うのは前向きな部分だ。

 でも言葉だけじゃステラの心は動かないだろうな。


 ルイザはケミーの発言に思うところがあったのか怪訝な顔をステラに向ける。


「……この子のどこに強くなれそうな要素があるのかしら?」


 私以外には聞こえないくらい小さく呟いた後、それとは違う事をステラに尋ねた。


「ステラって冒険者ではないのですわよね?」

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