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100万年後に幽霊になったエルフ  作者: 霊廟ねこ
2章 才色兼備の猫人魔術士
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53 今度はおばさんの番 3

 密猟おばさんが目を覚ました。


「あ、あれ? あああああぁぁぁ! 手が、足も!? 縛られてるううぅぅ!? 助けて、檻の動物は私じゃないんだよ。この子供が持って行こうとするから止めたんだよ!」


 うっさいな、なんか苦しい言い訳を始めた。


「何を言ってるんだ? どうやってこの子達が運ぶんだよ」


「ほ、ほら、あの車だよ! あの車を動かしたから私が止めようとひっくり返したらそっちの子が変な武器で襲って来たんだ!」


「変な武器?」


 おばさんは私に脅すようなきつい目を向けてきた。

 男二人の不思議そうな顔も私に向けられる。


 私は冒険者みたいに長剣とか盾とか武器になるようなものを持ってるようには見えないからそういう顔にもなるだろう。


 魔導銃、特に隠しておくほどの物じゃないと判断しみんなに見せることにした。


「なんだこれ?」


「電気銃か?」


 二人とも詳しくは知らないようが冒険者の方は似たようなものに見覚えがあるようだ。


「これは魔導銃って言います。危ないのでどんな感じの武器かは見せづらいんだけど、確認しますか?」


「いや、別にいい。それよりも君達はギルドが孤児院に護送している子供達なんだからあんな車を持てるわけがないよな」


 その言葉を聞き、おばさんは強気な態度から一転、弱々しい言葉を出す。


「え……そう、なの?」


「そうだよ。サービル村からエリンプス町に向けて鳥バスで運んでもらってるんだよ」


 私が答えるとおばさんは言葉に詰まった。

 言い訳をまだ考えてるか、諦めたのか、どっちだろう。


「そういうわけだが……お姐さんの言うのが本当ならこの子達は車をどこから用意したんだろうね?」


「い、いや。他に協力者がいるんだよ。そうに決まってる!」


「はいはい、言い訳はゆっくりとギルドで聞こうか」


 おばさんはギャーギャーと見苦しく喚きながら冒険者に担がれて行かれた。


 私達はまだ時間があるのでギリギリまで村人に付き添い、動物達が解放される姿を見ることにした。

 車の中で見つけた鍵を使い、外に並べた檻の扉を順に開いて行く。すると動物達はお礼をすることもなく一目散にどこかに駆けていく。


(せっかく助けたのになんかムカつく)


(ステラは何もしてないでしょうに)


(あー…そんなこと言うんだ? この体は私のなんだけど、その意味は分かってるの?)


(あーごめんごめん。ごめんなさい。冗談だよ、ステラも頑張った!)


(うぇひひ、私も冗談だよ。あ、ラビキャットの檻が開くよ)


 なにその笑い方、気持ち悪い。

 おっと気を付けないとうっかり本音が漏れたら大変だ。


 ステラが兎猫ラビキャットに注目してるので私もそこに意識を向ける。

 三毛の兎猫は知能が高そうだったので他の兎猫達も何かあるかなと期待していたら、他の動物達同様に一目散に逃げて行った。


(見た目がちょっと変わってるけどその辺の動物と知能は大差ないみたいだね)


 全ての動物達を解放し終わり、私の周りに残った動物は三毛の兎猫だけとなった。


 こいつだけ他とは違うようだ。


「ほら、お前ももう行っていいんだよ」


 私が手で促すけど三毛の兎猫は私から離れなかった。


「最初はケミーに懐いたのに今はステラちゃんにしか懐かないね」


 言われてみればそんな気もする。

 でもたまたま近くにいた人に懐いてるだけ、という可能性もあるよね。


「そうかな? ほら、ケミーの所にも行ってお礼をしてきて」


 私はその説を証明するべく三毛兎猫の両脇から持ち上げてケミーの所に連れて行く。

 彼女の足元に降ろすがすぐさま私の足の裏に逃げこんだ。


「なんかよく分からないけど私に懐いてるみたい」


「ははっ、私何もしてないと思うけどなんでだろ? ちょっと寂しいけどステラちゃんを好きになってくれたからまぁいいや。それよりも公園に戻らない? ここは人目が付かないし、また何かトラブルに巻き込まれるのは嫌だよ」


 もうこりごりな態度のケミーは池に向かった。

 キディアはまだ残り、何か言いたげな元気の無さそうな顔を私に向ける。


 ケミーと言い合ったのが尾を引いてるようだ。

 二人は仲が悪くなったかもしれないけど、私とステラはキディアの事は特に気にしていない。


 私は彼女の気を紛らわすために三毛兎猫を脇から抱えてキディアに勢いよく突き出し、猫のように少し強めに鳴く。


「にゃー!!」


 キディアは目を丸くした。

 三毛兎猫はその後に不機嫌そうに小さくニャーと鳴くとキディアは思わず頬が緩んだ。


「さっきはごめん。私が変な事しなければこんなことにはならなかったのに……」


 私が謝るとキディアは無言で頭を横に振り、励ます様な力強い瞳を私に向ける。

 少し元気が戻ったようだ。

 私は猫を降ろしてキディアの手を取り、「行こう」と優しく声を掛けてケミーを追いかけた。

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