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100万年後に幽霊になったエルフ  作者: 霊廟ねこ
2章 才色兼備の猫人魔術士
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52 余計なことはするもんじゃないな 2

「ニャーニャー!」


 三毛の兎猫ラビキャットが私の裾を噛み、否定して欲しそうに顔を左右に振り始めた。

 この兎猫、私達の言葉が分かるのかな?

 可哀そうだけど今は無視する。


「そうかそうか。やっぱりお金には適わないもんね。お金こそが全てだよ。君達は何も悪くない悪くない、お金という仕組みを作った人が悪いのさ。それともう1つ条件を足してもいい? 何、簡単なことだよ」


 おばさんが条件を増やそうとしたので私はすかさず増額を要求する。


「じゃあ1000ルド追加ね」


「おい、口止めだけで3万ルドなんだから少しくらいサービスしてくれよ。本当に簡単なことだからこれ以上は出せないよ。嫌なら私は今すぐ引き上げるけどいいの?」


 ということで長い時間は無理だと伝えた上で話を聞いた結果、本当に簡単な事だったので引き受けることにした。


 何をするかというとおばさんが動物を集めるのについていくだけ。本当に簡単だった。


 檻は重たいからか私達には持てないと思ったおばさんは全て一人で運んだ。

 動物を集め終わった後、乗り物――車の入り口の前で私達はようやくお金を受け取った。


「これは私達だけの秘密だよ。絶対に口外しないようにね」


 おばさんに念を押される。


「分かった、絶対に言わないよ」


 言うけどね。しかも捕まえて引き渡すつもりだ。


「さて、私は帰るとするよ」


 おばさんは嬉しそうに私達に手を振ると車に乗り、扉を閉めた。

 鳥はいないのにどう動くのだろうと眺めているとゆっくりと車輪が回転し始める。


 本当に鳥がいなくても動くようだ。

 と、のんびり見ていては逃げられてしまう。


(あの、デシリア? おばさん逃げちゃうよ)


(分かってる、今やるから!)


 私は急いで車に近づくと後ろの車輪を掴んだ。


「え、え、え?? ステラちゃん! ちょ、ちょっと何やるの?!」


 ケミーが驚いて慌てて声を掛けて来るけど無視をする。


 この車輪、グニャグニャとして柔らかい。

 私の知ってる車輪と違う、もしかして鳥車の車輪もこんななのかな。


 まぁいいか、と強く握ると空気が抜けたような音を出して車輪は萎んだ。


 魔導銃で破壊してもいいけど、自分の力を試してみたいからちょうどいい。

 それにこういう場面でもないと破壊衝動を満たせるものって中々ないからね。


 自分の力で壊すのは楽しい。


 車は若干速度が落ちたけどまだ動き出したばかりなのでパッと見、違いはよく分からない。

 一つだけを破壊しても完全には止まらないので次は同じ側の前輪を破壊した。

 反対側の車輪に行かないのは移動が面倒だからだ。


 バランスを崩した車は完全に傾き、明らかに速度が遅くなった。

 違和感に気づいたのか車が完全に止まった後、扉から慌てたおばさんが飛び出る。


「な、なんでこんな日にこんなことに……!? なんて日だよ……」


 おばさんは嘆きながら車輪を急いで確認し始めた。

 私がやったことに気づいてないように見える。

 子供にはこんな真似はできないと思ってそうだ。


 何も知らないふりをして何をしてるのか尋ねてみることにした。


「どうしたの?」


「いや、見て分かるだろ! バーストだよバースト! 君達、この車輪が壊れる瞬間に近くに何かなかった?」


 その発言にケミー達の視線が私に集まる。ここにいる三毛の兎猫もこっちを向いた。

 やめろ、こっち見るな! とは思いつつも私が答えるしかない。


「それなら私が壊したよ」


「はぁ? こっちは真面目に聞いてるんだよ! 君みたいな非力な子供がどうやってこれをこんな風に壊せると言うんだ! 」


「言われてみれば私じゃ無理かも」


「あー、全く。君はさっきから一体なんなんだよ!」 


「あ、そうだ。これなら壊せるかもしれない」


 私は念のために持って来ていた魔導銃を取り出す。


「それは何? 壊せるかもって?」


 おばさんはこれが何なのか分からないようだ。


「こうやって使うんだよ」


 私は潰れた車輪に向けて発射を試みる。

 赤白い光弾は車輪に直撃すると爆発を起こし、車は少し浮き上がって横転した


 おばさんは車の方を見ながら硬直した。


(ちょ、ちょっと? デシリア、動物達は大丈夫なの?!)


(……た、多分)


 ちょっとやりすぎたけど体重の軽い小さい動物ばかりだったし、きっと大丈夫だろう。

 だよね?


「おぉぉぉぉい!!! ちょっとちょっと、きみぃぃぃい! 何やってんだよ!」


 事を理解した途端大きな声を上げ私に詰め寄ってきた。

 私は魔導銃をおばさんに構えるとケミー達に告げる。


「ケミー、急いでギルドに伝えて村長か誰か呼んで来て」


「え? う、うん。分かった」


「キディアもケミーと一緒に行って来て、私といると危険だから」


 そう言うとキディアは不安な目でケミーを見つめる。

 ケミーも少し不快そうに怯えを含んだ目をキディアに合わせる。


 そしてケミーは無言のまま駆けだした。

 キディアは不安そうに私の方を何度か振り返った後、ケミーを追いかけた。


「待て! 逃げるな! 呼びに行くな! くそっ、くそっ、てめぇえ!! てめぇだけでもぶっ殺してやる!」


 激昂したおばさんの苛立ち具合が荒い言葉遣いで分かる。

 殺意を私に向けて来たけど、気にすることはない。


「動いたら撃つよ。この魔導銃に当たるとどうなるかはさっきので予想できるよね?」

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