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100万年後に幽霊になったエルフ  作者: 霊廟ねこ
2章 才色兼備の猫人魔術士
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51 このババア許せない! 2

「口止め料を払うわ。お金が欲しいんじゃないの? そうだね、一人当たり5000ルドでどうかな? これはお金を受け取ったら村の人に私の事を報告しないという契約だよ。簡単な仕事だと思わない?」


(デシリア駄目だよ、私はお金がいっぱいあるから断って。動物達を助けよう)


 提示額の100倍以上を所持してるステラはその程度の端金はしたがねでは動かない。


 まぁお金を選んだ所で私は強く止めるつもりはないけどね。


 今のステラがお金には釣られないのは分かったけど、お金がないケミーとキディアはそうはいかないかもしれない。


 キディアは少し悩んだ後に私の目を見るとすぐに顔を左右に振った。 

 ケミーは少ししてから私の所を振り向いた。


「キディアは反対だって、私も同じ」


 私はそう伝えるとケミーはおばさんに向けて私達の考えを口にした。


「断ります!」


 その言葉にキディアは小さく頭をうんうんと縦に揺らした。

 とりあえず私も同じように動かすことにした。うんうん。


「ちっ、流石にこんなちっぽけな額じゃ動かないか。1万ならどう? 倍よ倍! ちょっと節約すれば10日分の食費にはなるんじゃないかな、さぁどうする?」


 なるほど、1日1000ルドあれば食事は足りるのか。

 と、そんな重要だけど今はどうでもいいことを考えているとステラが今回も断るように要求してきた。


 だからという訳じゃないけど一応今回も拒否をするつもりだ。


 拒否することで次々と値を上げていき、限界まで吊り上げようと思っている。

 お金を受け取ったらおばさんを村に突きだすつもりだからだ。


 突き出してからお金を奪うのは心理的に抵抗があるからね。相手から出させれば受け取りやすい。

 まぁ本音は騙されて悔しがるおばさんの顔が見てみたいからだけど。


 ケミーとキディアにも限界まで吊り上げるのを相談したいところだけどおばさんに丸聞こえだからできない。


(耳元で聞こえないように言ったら?)


 耳打ちか、そういう発想が何故か思いつかなかった。

 ということですぐ隣にいるキディアに顔を近づけようとしたけど、おばさんに気づかれた。


「そこ、何の相談? 聞かれたら不味い事かな?」


「え? あ、はい。聞かれたら不味いです」


「いやそこは否定するところでしょ、変な子だね。とにかく次コソコソしたら追い出してすぐに逃げるからね」


 う~ん、失敗。


 キディアは私の顔が近すぎたからか照れ顔を逸らす。動揺したのかさきほどよりも長く悩んだ後、再び私に目を合わせて頭を横に振った。

 私の考えは伝わってないだろうけど拒否してくれたのはありがたい。

 

 ケミーは少し増えた額に心が揺れ動いたのか、長く考え込んだ。


 今は断って欲しい、多分もうちょっと吊り上がるはず。

 もし拒否した上で値が吊り上がらないようなら、その時は仕方ないからその金額で妥協しよう。


 ケミーの考え込む様子におばさんはあと一押しだと判断したのか一気に値を吊り上げる。


「なら3万ルドでどう? これ以上は無し。拒否してもいいけど別に私は君達を車から追い出した後に逃げ切れるからね。本当ならお金を出す必要すらないよ」


 さらに揺さぶりをかけてきた。

 何も手に入れずに逃げられるか、受け取って見逃すか。


 おばさんをどうにかできる力がないならお金だけでも貰うという選択をする人もいるだろう。


 ケミーとキディアだけならこのおばさんに逃げられてしまうのは確実だし、お金だけでも貰おうと思うかもしれない。


 でも私はおばさんの逃亡を阻止することができる。 

 こんな密猟で生計を立てるような器やら色々と小さい人間に、勇者に勝った私が負けるなんて有り得ないだろう。


 私の足はその辺の乗り物程度に後れを取るほど遅くは無いし、乗り物の車輪を壊して動きを止めることもできる。


 二人はそれが分かってるはずだし、正義感が強そうだし、つまりは私がどうにかしてくれるからと拒否するだろう。


 でも今度は拒否されたら困る。おばさんが悔しがる反応が見たい。


 あぁそうだ、二人が拒否したら私が取引に応じればいいだけだ。何の問題もないな。

 何か考えがあると思ってきっと納得してくれるに違いない。


 私達が考えている間もおばさんの言葉は続いているので一応聞くことにした。


「助けようと思った動物達も連れてかれて何も手に入らないなんて、その苦労を思うとなんだか可哀そうだと私は思ったんだよ。せめて頑張った分くらいは報われる方がいいよね。さぁどうする? 誰にも言わないと約束するだけで3万ルドだよ。こんな破格の簡単な仕事はそうは無いよ。黙っておくだけの簡単な仕事だよ。正直口止めして貰った方が私としても嬉しいからね、3万ルドなんて子供が稼ごうと思ったら大変だよぉ~?」


 簡単な仕事というが悪い事というのは半端な気持ちで応じれば後々に重荷になる。

 悪に振り切った心なら大丈夫だろうけど、二人はきっとそうは行かない。

 捕まった動物達と似たような境遇を経験をしたなら尚更だ。


 どちらにしても動物達は私が助けるので重荷にはならないだろうけどね。


 ケミーは何に悩んでいるのかすぐには意思を示さず考え込んでる。


 キディアはすぐに決断したようで私を向き、顔を横に振って意思を示してきた。


 それにしても拒否をするということはやっぱり私の考えが読めてなさそうだ。

 伝えてないんだし分かるわけないか


 まぁ……分からない方がいいよね。


 後はケミーの返事を待つだけだけど、別に待つ必要はないか。


 結局は私の意見をゴリ押しすることになるわけだし、今度は私から声を上げることにしよう。


 私は手を上げ、おばさんの視線をこちらに向けさせる。


「おばさんの言う事はよく分かったよ。お金欲しいし、3万ルドもくれるっていうなら黙っておいてあげる」


 私が応じることが思いがけなかったのかキディアは目を見開いた。

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