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100万年後に幽霊になったエルフ  作者: 霊廟ねこ
2章 才色兼備の猫人魔術士
83/281

50 密猟? 2

「この子達をどこに連れて行くんですか?」


 でも動物達がどうなるのかくらいは聞いても問題はないだろう。


 しかし私の質問に女は一瞬だけ不愉快そうに顔を歪めた。

 面倒なのか、やましいからなのか。


 女は少し考え込んだ後、質問に答えた。


「この子達はね、町の病院に連れて行くんだよ。病気がないか調べるためにこうやって定期的に連れて行くの」


 納得できるようなできないような、なんとも言えない理由だ。

 ここの動物達が管理されてるのかは知らないけど、あの母兎猫ラビキャットに怪我をさせたみたいだから少なくともこの女の仕事ではないだろう。


「なんでそんなことやってるの?」


 子供の外見ならこんな質問も許されるだろう。

 大人がすればそんなことも分からないのかと馬鹿にされそうだ。


 嘘ついてますよね? とさっさと追及してもいいけど、まずはどんな嘘を並び立てるのか聞いてみたいと思った。


「それはだね……ほら。この動物公園はこの村の観光地でしょ? 元気のない動物ばかりだと見に来たお客さんがガッカリするじゃない? それに伝染病にかかってたら広まってしまうし大変なことになるよね? だからこうやって大事に大事に管理していく必要があるのよ」


 管理をするのが現実的じゃないレベルの動物の数なので、たかだかこの車に乗せる程度の数ではとても管理が出来るとは思えない。


 しかも動物はどう見ても放し飼いだ。飼われてるのかすら怪しい。


 数が数なので町に運ぶよりは医者をこの村に派遣させる方がまだ現実的にも思える。


 こっちが子供だから如何にもな理由で騙せるとでも思ってそうだ。 


「そういえば檻の子達、外の子達より見た目が良いね、可愛い」


 そう言うと女の目つきがさらに悪くなった。

 私が疑惑の目を向けていることに気づいたのかもしれない。


「……何? 言ってる意味が分からない。一体何が言いたいの?」


 不機嫌そうに言った後、まずいと思ったのかわざとらしく態度を改めてきた。


「……確かに言われてみれば外見が良い子ばかり、こんな偶然もあるのね! 他の子達もちゃんと後で診てもらうから心配はいらないからね、安心してね」


「ねぇステラちゃん。ラビキャット達は大丈夫そうだし池の方に戻らない?」


 ケミーは女の事を信用したのか戻ろうと言って来た。


 キディアは顔を小さく横に振った。女の事をまだ疑ってるのかもしれない。


(ねぇデシリア。質問ばかりしてるけど、もしかしてこの女の人に何か変な所でもあった?)


 ステラは私の行動から何かを感じたようだ。

 私がステラに返事をしようとすると同時に女は私達に声を掛けてきた。


「ちょっと君達、悪いけど仕事の邪魔になるからそろそろ他の所に行ってもらえるかな?」


「ああ、はい。邪魔をしてごめんなさい。ステラちゃん戻ろうよ」


 ケミーが言うと三毛の兎猫ラビキャットはニャーニャーとこちらへ何かを訴え始めた。


 檻の兎猫達ラビキャットを助けて欲しいのだろうけど、どうしたもんかな。


 助けようにもこの女が明らかに悪いことをしているということを証明しないといけない。


 動物の怪我のことを指摘してもこの女の犯行だという証明は難しい。


 動物をどこに運ぶのかも分からない状態だし、もし売るために攫ってるんだとしてもそれが法を犯しているかどうか私には分からない。


 商売の邪魔をしたら、下手したら私達は罪人になる可能性もある。

 そこまで重くはないとしても面倒な事にはなるだろう。


「ステラちゃん、戻るの?」


 キディアは兎猫達ラビキャットを見つめながら心配そうに聞いてきた。

 私も助けたいという気持ちはある。


 このまま戻ったら動物達が可哀そうなので、私はボロを出してくれないかなと思いながら女に話かけることにした。


「そういえばその檻の前にいる大きいラビキャットは、別の場所で怪我してたけど気づかなかったんですか?」


 女がこの母兎猫ラビキャットに怪我を負わせたのはさっきの発言で知っている。


「……何を言ってるの、元気そうに見えるけど?」


 女は怪訝な顔をし、とぼけつつ納得できる返事をした。

 そういえば私が怪我を治してあげたんだった。


 怪我をしてるのになぜ病院に連れて行かないのかと聞こうと思ったけど失敗だ。

 いや、まだいけるか?


「さっき怪我をして動けなかったから近くにいた村の人に治してもらったの。治した途端走ったから追いかけたらここまでやって来たんだよね」


「村の人に……そうなんだ。悪いけど怪我をしてる動物がいたことに気づかなかったわ。でも元気になったなら良かった良かった」


 女は怪訝な顔を解除し、嘘くさい笑顔を作った。


「なんで怪我をしてたんだろう? 何か思い当たることはないですか?」


 そう尋ねると女は目線を上に向け考え込んだ。

 どう嘘を吐くか考えてるのだろう。


「ちょっと分からないわね、ここはたくさん動物がいるし襲われたんじゃないかな?」


 ここの動物達が穏やかとはいえ、絶対ないとも言い切れないか。

 もう撃つ弾が無い私は最後にこれをぶつけることにした。


「でも、さっき小さい声で私が怪我を負わせたって言ってたよね。嘘ついたんですか?」


 忙しそうに動いていた女はその一言に動きが止まった。

 さっきの発言は聞こえてなかったと思ってたんだろう。

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