5 村に行きましょう
空が赤くなり始める頃に村っぽい場所に到着した。城壁や柵なんてものはないので自由に出入りできる。
建物はほとんどが木造1階建てだ。
もう時間も遅いしとりあえず泊まれる場所を探すことにした。客車は全員が寝泊まりできそうなくらい大きいとはいえちゃんとした建物の方がいいだろう。
客車は村の入口付近に一旦置き、私達は9人で村の中へと入った。
ちょうどすぐ近くをガッチリした体格の20~30代の男が歩いていたので宿の場所を尋ねることにした。
「俺は村人じゃねぇぞ。ここに仕事に来た冒険者だ」
村の人かと思っていたら違うようだ。よそから来た冒険者なる職業の人らしい。
(冒険者ってなに?)
私の時代にはそんなものはなかったのでステラに尋ねる。
(私のお姉ちゃんって冒険者やってるんだよね。動物や魔物を倒したり、なんか色々やるみたいだよ)
ステラは得意げに答えた。冒険者って治安維持が仕事なのかな。
男は頼りなさそうな薄い鎧を着け、剣は腰に差している。剣はともかく鎧はそれで大丈夫なのかな?
「お前らワケアリだろ? 冒険者ギルドに行ってみたらどうだ? あそこは困った時に頼ると大体相談に乗ってくれるからよ」
「冒険者ギルド? 村長ではなくそこに行けばいいんですね」
「村長の所でもいいと思うがギルドの方がいいと思うぞ。ああ、あと話は変わるが、今はこの村は危険だから注意しな」
「危険?」
「俺達はこの村にキメラ討伐で来てるんだ。今の所は村の中までは侵入されてないが警戒が終わるまでは出歩くのは控えた方がいいぞ。特に夜は出歩くなよ。エリンプスの町みたいな大きい所と違ってこんな辺鄙な村の夜は真っ暗だからよ」
俺達、ということは冒険者が他にもいるということか。
それでキメラってのはなんだろう? 討伐と言ってるし魔物だと思うけど。
「冒険者ギルドは、ほら、あの目立つアレだ。向こうの宿舎に余裕があれば泊めてくれるだろうから相談でもしてくるといい」
男が指差す方には他の建物とは違って違和感の強い建物があった。
灰色の外壁は夕日で赤みがかっていてツヤがあり、鏡のように薄っすらと周囲の風景を反射している。その壁には継ぎ目はなく、洗練されたその外観はこの村には凄く場違いな感じがした。
私の時代でもあんな感じの建物は大都市にさえ無かった気がする。
まぁ安心安全に寝れれば外観なんてどうでもいいけどね。
「色々と教えてもらいありがとうございます。あと良ければキメラがどんな魔物なのか教えてもらってもいいですか?」
「ああ、魔物と勘違いする人もいるが違うぞ。いろんな動物をくっ付けたような外見をしていて、動物とも魔物とも言えない生き物だ。危険だということで俺達冒険者が倒しに来たってわけだ」
動物の亜種なのかな?
必要な情報を入手したので冒険者ギルドに向かうことにした。