表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/282

43 うにょにょうにょ

「イブリンさんだけでどうにかなるのになぜ雇われたんですか? 私ってどうしても必要ではなかったはずです」


 その質問にイブリンは意味深に考え込み「そうだな、あー、うーん……」と唸る。


 そんな考えこむほどの理由があるのか?

 真実を知ったらブチ切れるほどのものだったりするのかな?


 いや、イブリンのことだし、ただのど忘れの可能性もあるか。


「ディマスさんから何も聞いてない?」


「え? ああ、いや……そういえばうにょにょうにょだったな」


 小声で何か言ってるけど活舌かつぜつが悪いと流石の私でも聞き取れない。


「私も疑問に思ったから聞いたぞ、……大した理由ではなかったがな」


 理由がしょうもないから言い出しづらかったってことね。

 その場のノリで決めたのかな?


 それならどうしても知りたいわけじゃないし言わないならそのままにしておこう。

 別に私は討伐が嫌なら断ってたわけだし、理由なんてどうでもいいことだ。

 冒険者というものがどういうものか興味があって首を突っ込んだわけだからね。


 イブリンはさらに考えた後に理由を話し始めた。


「お前を雇った理由は……コネを作るため、だ」


「コネ? にゃーん?」


「それは猫だろ、お前がやるより私の方が可愛いぞ、にゃーん」


 あ、はい。


 コネということは私と何かしらのつながりが欲しくなったってことか。

 ディマスは私に叩かれたあの短い時間でそこまで考えたってこと? 


 変なところで冷静だね。


「それで、だ、……お前がいつか冒険者になった時に勧誘するため、だな。そのために……そうだな、腕の立ちそうなお前と距離を縮めておきたいと考えたんだ」


 歯切れの悪い言い方されると不安になるからしっかり言って欲しい。


 とにかく雇われたのがそこまで変な理由じゃなくて安心した。

 私とは逆にステラはその理由を聞くと不満の声を上げた。


(え、やだ。ぜぇ~ったいこのチームに入りたくない)


 ステラはこのチームに入るのが心底嫌そうだ。

 そりゃそうだろうなとしか言えない。


 最初の出会いの印象が悪いし、ほぼ男しかいないチームだからステラには辛そうだ。

 なので今後どこかで会っても断るかもしれない。


 それにステラには私がいるから仲間がいなくてもなんとかなりそうではある。


 でも私がずっと一緒にいられるかは分からないし、私がいる間に強くなってもらうか仲間を作った方が安心かな。


「一度でも見知った相手ならチームに入るかどうかの判断が付きやすいだろ? まぁそういうわけだ。大した理由ではない」


「あ、はい。そうですね」


「それで私のチームの居心地はどうだった? 良かったか?」


 私はそこまで悪くは感じなかったけどステラはどう思ってるんだろう。


(ちょっと嫌かなぁ。チーム作るなら年が近い方がいい)


 あまり評価はよろしくなさそうだ。

 良かろうが悪かろうがどちらにしても私はこのチームにステラを入れたくはない。

 

 ステラの実力に見合った場所に入る分にはいいんだけどね。


 まぁそれはおいおい相談しながら決めていくとしよう。


「フェリクスさんとアージェンさんは親しみやすいですね」


 全否定するのもまずいのでステラから特に可も不可もない二人を上げることにした。


「なに、私は親しみにくいのか? いや、ディマスもか。ならよし!」


 自分だけじゃないことに安心したのか一瞬で下がった機嫌を一瞬で戻した。 


「あ、ほら遠慮はしなくていいぞ、これ以外にもお菓子はたくさんあるから食べろ」


 イブリンは私がお菓子に手をつけないのを見て勧めてきた。


 お菓子以外はないのかと思いつつも私は何も用意してないのでわがままは言えない。


 それにこんな村で用意できるものなんて知れてる。

 あるだけありがたいと思っておこう。


 ステラには悪いと思いながらビスケットらしきお菓子に手を伸ばし口に入れていく。


 非常に整った形のお菓子だ。

 生前にこんな綺麗なお菓子は見たことはなかった。


 あまりに形が整い過ぎて食べ物とは思えない。


 絵で描いたよりも整った輪郭はどうやって作ったんだろう?

 食感も味も今までに感じたことがないくらいに美味しい。


 そういえば私って生前はまともな物は食べてなかったな。


 だから美味しく感じるのかもしれないな。


 この整った形は村のお店のお菓子ではなさそうだ。

 違う所から持ち込んだものなのだろう。


(うぅ~、美味しそう……食べたい)


 ステラが欲しがっているけどどうしたもんかね。

 少しだけ持ち帰って、後で一人になれそうな場所で食べさせようか。


 その後、夕食の時間まではイブリンと他愛のないお喋りをした。色々と聞かれて答えに困ることもあったけどイブリンは深く聞いて来ないので話しやすい。


 イブリン達は明日この村をつようだ。

 なんだか少し寂しく感じてきた。


(うーん、特に私は感じないなぁ)


 ステラは特に何かしたということも全くないので寂しくないようだ。

 頭の中から眺めているだけでろくに話もしてなければ何も感じることはないか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ