表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/282

42 次こそ本気だ! 1

 冒険者ギルドに戻り討伐が終わったことを報告した後、私は待合室でディマスから早速報酬を受け取った。


 最初の説明時より多く貰えたので私の活躍を認めてくれたに違いない。

 イブリンが交渉してくれたのかな?


 ステラは欲しい物がいっぱいあるようで頭の中は欲望が涎のように垂れ流れている。


 子供というのは誘惑に弱いし、これだけあれば少しくらいは……と散財しそうだ。だから私は釘を刺すことにした。


(お金を使う時は私に相談すること、しないと……分かるよね?)


(えー、デシリアおばあちゃんのいじわる。ブー)


(おばあちゃんって言うな)


 一応どうなるかは理解はしてるようだ。

 いくらステラが体を優先的に動かせるからと言ってもお金は自由に使わせない。


 どうやって制限するかと言えばステラが何か困ったときに手助けしないという方法で対抗しようと思う。


 もちろん命に関わるようなときには助けるけどね。


 私達はお金が手に入ったけどディマス達がギルドから報酬が支払われるのはもう少ししてかららしい。なのでその間は少し金銭的に寂しい思いをしてそうだ。


 ディマス達は討伐が無事終了したことを祝って夜に打ち上げをすると言ってきた。

 イブリンは不参加なので男3人でやるとのことだ。


 私も誘われたけどこんな子供の姿でその中に混ざるのは抵抗があったし、ステラは興味がなさそうだったので断った。ということでディマス達との関係はその時点で終了した。


 ディマス達との関係は終わったけど、イブリンとはまだ用事が残っている。


 私が男達との打ち上げに参加しないことが分かるとイブリンは部屋で少しだけ打ち上げをしようと誘って来た。ステラの反対は無かったので夕方行くことに決めた。


 冒険者ギルドには多数の冒険者が寝泊まりする専用の宿舎があり、そこにイブリンも泊っている。


 私が連れてきた子供達もその宿舎に泊っているわけだけど、イブリンの部屋はそこから離れた場所にあった。


 離れた場所にあるからなのか今まで廊下でイブリンとバッタり出会ったことは無い。


 そして時刻は予定の夕方になった。


「来たか、早速だがもう一度腕相撲で勝負しろ!」


 部屋に入るなりイブリンに勝負を仕掛けられた。


「いきなりそれですか、はぁー……」


 やりたくないので断りたい。

 だって私が勝つのは明らかだし、手を握るの……なんか嫌だし。


(ステラが代わりにやってみる?)


(私が勝てるわけないでしょ!)


(負けてもいいから、体動かしてみない?)


(負けると分かってる勝負なんかしたくないよ。デシリアがやって負ければいいでしょ)


 イブリンに意識を向けると机の前に立ち、私が勝負に応じるのを待っている。

 今回は勝っても負けても得はない。


 損もない。なのでやる気が出ない。

 勝負なんかする前に勝敗を決めてしまおう。


「私の負けでいいですよ。そんな男っぽい事あんまりやりたくないです」


 男っぽいという部分にステラが意外そうに反応する。


(え、腕相撲って男っぽいの?)


 力比べなんて男がやりたがるものでしょ。

 ……そうじゃないの? 


 私の時代とはその辺の考え方が変わってるのかもしれないか。


(今の時代はこういう力比べって女もするの?)


(えーと、分かんない)


 分からんのかい!


 分からないということは女だからとか男だからみたいな考えはないかもしれないな。


 男っぽいという部分に反応してたし、何か気に障るようなことが今までにあったのかも。


「女だって力比べしてもいいだろ、冒険者は力と……力が全てなんだぞ!」


 イブリンが少しムキになって言い返して来た。 

 冒険者については力しか思いつかなかったようだ。


「自分の力を知ることは重要だ、だから腕相撲だ。私は本気でやりたいからわざと負けられては困る。対等以上への挑戦は自らの力を知る貴重な場だからな」


 いやいや、あなたは十分に強いと思いますよ?

 だからやらなくてもいいと思うけどなぁ。


「……よし、ならお前が勝ったら2万ルドあげよう」


 イブリンは四角い小さな入れ物から紙のお金を取り出し、ヒラヒラさせる。

 討伐は1日3千ルドだったし、1分程度で2万ルドは破格。


 絶対勝てる勝負を断るのは無欲か馬鹿か相手の懐事情に配慮するかのどちらかだな。


「やる気は出たか?」


「そこまでしてやりたいっていうなら、やってやんよ」


(デシリア~、私にもお金くれるよね?)


 子供相手にポンポンと気軽にお金を渡すのも良くないな。


(勝てたら200ルドあげるよ)


(ケチ~! 遠足のおやつみたいな金額だよそれ)


(いらないみたいだね)


(ごめんなさい、欲しいです、ください!)


 納得させたのでイブリンに意識を向ける。

 私が勝負を受けたからかイブリンは少し得意げな顔をした。


 私のやる気は出たけど、こんなことにお金を出してまでやろうとする気持ちが理解できない。


「こんなしょうもないことにそんな大金出して大丈夫なの?」


 大金なのかは分からないけど店の物価を見てると大金だと思われる。


 というか私はなんでそんなことを聞いてしまったのだろうか。イブリンがお金惜しさにやっぱりやめたって言うかもしれないのに。


「安心しろ、お金は余ってて余裕はある。まぁそれは私だけでディマス達は貧乏だがな」


 やっぱやめた、と言わなかったので一安心。

 ディマス達が貧乏という情報はいらない、彼らのことはイブリンが助けてあげて。


「今度は手加減一切なしの本気だ。前のはなんだかんだ言ったが本気は出さなかったからな。本気を出せる相手が現れたのは僥倖ぎょうこう。だからお前も本気で来い」


 まぁ言われずとも勝ちを狙いに行きますよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ