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40 みんな無事だった 2

 ギルドの待合室には何人か冒険者がいたけど、まだディマス達は見当たらない。

 私は手持ちのお金を数えたりして時間を潰すことにした。


 少しするとディマスの声が耳に入ってきた。


「おうコッテン、昨日は危険な目に合わせて悪かったな。体は大丈夫か? もし今日の討伐が無理なら断ってもいいぞ」


 まだ予定の時間よりは早い。

 後ろにはフェリクスとアージェンが控えている。


 イブリンはいない。

 そういえば彼女は昨日も遅れて来ていた。


「全然大丈夫ですし、私もいた方が安心しませんか? それでディマス達は大丈夫なんですか?」


「そうか、悪いが今日も頼む。それで俺の調子は問題ない。アージェンとフェリクスも大丈夫だ。イブリンはちょっと分からないが時間になったら聞いてみる」


 出発までまだ時間があるので直前になってからイブリンのところに行くようだ。

 私は面倒な雑談を振られないように3人とは離れた席に座った。


 近くだと気軽に声を掛けられてしまうからね。


「なぁコッテン、カイ以外にももう一人いたんだよな? カイがあれならもう一人もかなり強かったんじゃないか?」


 アージェンが話しかけてきた。わざわざ離れて座る私の気持ちなんか知らないらしい。

 メイについて興味があるようだ。


 フェリクスはメイとの対峙の途中で退室させたので彼女がどれほどの者なのかはよく分かってない。だからメイのことを詳しく知ってる私に聞きに来たのだろう。


 メイと何があったのか嘘を交えて説明した。

 人攫いの屋敷の時と似たような感じで誰かが助けに来たことにした。


「そんな凄い人がいるんだな。それでその男はどこに?」


「分かりません。メイを追いかけたっきり戻ってきませんでしたし、何か勇者とは因縁でもあるんじゃないですかね」


「分からんという事か。それにしても冒険者を狩るってのも変な話だよな、意味が分からん。勇者が強いというのは勇者候補生とかいうのが強いって聞いてたから強いとは思ってたけどよ、俺達より強いというだけで勇者という証明にはならねぇよな。まぁ本当に勇者かどうかは調査班が調べてくれるだろう」


「確かに冒険者を狩る目的は当のメイも分かってなかったみたいですけど、『勇者は世界の守護者、なら冒険者はきっと悪』みたいなことを言ってましたよ」


「世界の守護者? 俺達冒険者だってキメラや魔物達から人々を守ってるぞ、悪者扱いは許せねぇ!」


 アージェンは周りに配慮してるのか小さい声で荒げる。


「あれだけ自信満々だった割に、コソコソと活動をしてたのは何故だろうな」


「上には上がいますし、目を付けられるのを嫌がったんじゃないですかね」


「カイみたいなのを簡単に倒していく人がいるんだもんな、そりゃ警戒もするか」


 アージェンは私の嘘を信じてくれたようだ。

 ごめんね、そんな奇跡的に親切な人は現れなかったよ。


 あ、性別を女にすればそれってほぼ私のことじゃん。


 でも名乗れない。自分の体があれば堂々と名乗ってやったのに!!


「ディマス、フェリクス、アージェン、それとコットン、おはよう、もう昼だな」


 声の主はイブリン。

 今日は自主的に来たようだ。そして昨日と同じジャージ姿。


 激闘があっただろうにジャージには傷一つない。

 ちなみに私は引き続き猫耳フードの灰色ローブを着ている。


「……コッテンです、おはようございます」


 もうコッテン呼びに慣れたので正しい偽名であっても否定しておいた。


 現れたイブリンに対してディマスが意外そうな顔をした。


「おう、おはよう。お前の方から来るなんて珍しいな。呼びに行こうかと思ってたが手間が省けた」


「昨日のことがあったから今日は置いて行かれるんじゃないかと思ってな、わざわざ来てやったぞ。感謝しろ」


「昨日のことは感謝してるぞ。だがいいのか、からになった魔力は1日で全快はしないだろ?」


「半分も回復してれば十分だ。それに全快したところであの男レベルの相手に勝つのは私には無理だぞ。逃げられたとかいうもう一人の仲間も同じくらい危険なのだろう、なあコッテン?」


「た、多分そうじゃないかなとは思う、ははっ」


 カイを倒したのは突然助けに入った見知らぬ男の人で、私じゃないということにしてある。私は勇者より弱いということにしたいのでその辺は曖昧に濁す。


「私が半端な状態だとしても、またその仲間が現れた時にはコッテンもいれば時間稼ぎくらいにはなるだろう。その間に誰かが調査班にでも助けを求めにいけばいい」


「そうか、無理をさせてすまないな」


「す、好きでやってるだけだ。謝るならこんな危険な時に雇ってしまったコッテンにしてやれ」


「そうだな。コッテン、昨日は危険な目に合わせて悪かった」


 私にディマスが申し訳なさそうに謝るけど私は軽く流し、イブリンに視線を向ける。

 イブリンの様子が昨日と違うのが少し気になったからだ。


「いえ、大丈夫ですよ。あの、イブリンさんちょっと失礼します」


 私は少しドキドキしながらイブリンの額に手を当てる。


「なんだ、どうした?」


「昨日とはやる気が違うので熱でもあるんじゃないかと」


「安心しろ、熱は無い」


 ちょっとふざけて言ってみたんだけど普通に返事されてしまった。


 『熱なんかないわ!』と強く否定されるのかと思ってたので予想と違った結果に申し訳ない気持ちになった。


「昨日のはあれだ、本当なら安全で簡単な仕事だったからやる気がなかっただけだ。昨日みたいな予定外のことがまた起きて仲間に何かあったら安心してサボれないだろ」


 仲間想いなのか自分のためなのかよく分からない態度だな。

 どっちも正解で照れ隠しかもしれない。


「私の準備は終わってるぞ。みんなは終わったのか? いつ出発するんだ?」


 予定の時間まではまだ少しだけあるけど我慢できないのかイブリンは緩く急かしてきた。

 ディマスは遅れるよりはいいかと、みんなに最終確認を取る。


「忘れ物は無いな? じゃあ、行くか」

 

 みんなから少し緊張を感じる。

 危険かもしれないから行かないという考えはないようで昨日と同じ場所に移動した。

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