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38 二人係は卑怯じゃないですか? 2

 カイは蹴りや斬撃に加えて魔術も使って来るけど私は軽々と躱していく。


 その後もメイ、分身体、カイのあまり息の合ってない連携攻撃や魔術を避けたり、わざと食らったりもしてみたけどダメージはない。


 カウントダウンがない魔術ではクリメイションほどの威力は無いようだ。

 ということはカウントダウンの時は強い魔術が来ると見ていいだろう。


「カイ、時間は大丈夫? 時間がないならもうあの魔術を使おうと思います。この洞窟は崩壊するでしょう。しかしそれで倒せるなら良し、倒せなくても私達の活動の痕跡は消せます」


「あの魔術? ……仕方ねぇ、発動はメイに任せる。俺はこいつを引きつける」


 メイの分身体2体とカイがメイの前に移動した。


「50、49、48――」


 メイのカウントが始まった。


 数字の大きさから凄いのを発動するんだろうってのが伝わってくる。

 嚙まなければ15秒ほどで発動するだろう。


 洞窟が崩壊するほどの魔術を発動されればディマス達は生き埋めだ。

 どこかにいるかもしれない行方不明の冒険者も埋まってしまうだろう。

 なのでこれだけは悠長に眺めるわけにいかない。


 ということはこれ以上の勇者に関する情報収集は諦めて倒すしかないか。


 その魔術を阻止しようが発動しようが勝ち目のない彼らがその次にとる行動は逃走しかないだろう。

 逃がしてしまえば後々冒険者に犠牲が出るのは確実だ。


 彼女達は四肢を吹き飛ばしても回復してくるし、身体能力も並外れているので縄などで縛って捕らえたとしてもあっさりと引きちぎって逃げるだろう。


 そうなると生きたまま捕らえるのは私でも不可能だ。

 生かすという選択肢は選べない。


 時間も無い事だしさっさと動くことにしよう。


 私はふと魔動銃のことを思い出し、取り出す。

 そんなものを使わなくても良かったけど、今やらなければしばらく勇者と相対する機会を逃しそうだと思った。


 銃口を分身体に合わせ、発射。

 赤白い光弾が飛んでいく。


 分身体が咄嗟とっさに反応し、白い雷を飛ばして打ち消そうと試みるけど魔動銃の方が勝ち、分身体を粉々に吹き飛ばした。


「なんだそれは、そんな攻撃できたのか」


 私がバガンスネークに結構使ってたはずなんだけどカイは見てなかったのか?


 残りのもう1体にも照準を合わせようとするとカイは愚痴りながらも阻止するために私に斬りかかる。

 射線上にカイが乱入してくるけど構わず発射した。


 カイに当たる――しかし傷一つ付かない。

 さっきメイに効いたのは油断してたからなのだろう。


 接近したカイが振り下ろしたナイフを私は手の平で受け止める。


「よしっ! これで……なんだ、まさか効いてねぇのか?」


 カイが怪訝な顔を向ける。

 少し皮膚にめり込んだようだけど効いたというほどではない。


 私は皮膚にめり込むという想定外に一瞬ヒヤリとしたけど、この程度なら問題は無い。

 カイは斬撃が効かないと分かると次は刺突を繰り出す。


 私は服が破けるのは嫌なのでカイの手首を掴み動きを止める。

 握りつぶすことはしない。


 続いて素早く反対の手でカイの額を覆う。

 カイが少し遅れて反応してきたけど手遅れだ。

 全く私の動きについて来れてない。


「なに? いつの間に捕まれたん――」


 驚いてるのかよく分からない表情のカイ。

 私は額を覆った手の平に魔力を込め、消滅魔法を発動。


 カイの頭は白く光ると一瞬で分解され、体だけが残された。

 遺体を残しておかないと調査班に説明するときに逃げられたと思われそうなので全部は消さない。


 その体が崩れ落ちる前に残り1体の分身体に向け魔導銃を発射。

 分身体は学習能力はないのだろう、先程と同じ抵抗をし、消滅した。


「23、22、21――」


 残るはメイ一人だけとなり、最初の時のように1対1となった。


 メイはもうどうにもならないと分かってるはずなのに、何故かカウントダウンを止めようとはしない。

 命乞いが無駄だと悟っているのかもしれない。


 彼女は口を速く動かしながら私へ視線を固定している。どういう心境だろうか。


 少し歩けばすぐ手が届く距離。


 しかしそんな距離に意味は無い、部屋の端から端まで1秒もかからず動けるのだから。


「20、19――」


 仲間の最後を目に焼き付けたはずの彼女の表情に怯えは一切見えない。

 淡々としていて最初に会った時と変わらず落ち着いている。


 まだどうにかなると思ってる? 

 怖くないのか?


 カイには恐怖らしいものは見えなかった。

 メイも同様だ。勇者には恐怖がないのか?


「15――」


 手を伸ばせば届く距離まで近づいた。

 何か企んでると思ってたけど何もなかった。


「13、12――」


「なんで逃げようとしないの? あなた、今から死ぬって分かってる?」


「……」


 カウントが止まった。しかしメイは私の問いに答えない。

 カウントを間違えればやり直し、だから余計なことは言わないのかもしれない。


「逃げようとしても無駄だよ。もう一度聞くけど、なんで冒険者を襲ってるの?」


 少しの沈黙の後、観念したのか口を開いた。


「……私の負けですね。その質問には先ほどと同じ言葉を返します。それ以上のことは私には知らされてないですし、興味もありません」


 先ほどと同じということは命令に従っただけで何も分かりません、ということだ。

 カイに聞いた方が良かったかな? もう殺しちゃったから手遅れなんだよね。


 カイが復活してこないところを見ると勇者でも頭を潰されれば回復はできないようだ。

 私が考えてることを察したのかメイは私の背後の光景に目を向ける。そこには頭のない胴体が落ちてるはずだ。


 そういえばメイは白い刃の剣を持っていたはずだけど、どこにも見当たらないな。


「それと逃げない理由ですが……こういうことです!」


 メイは顔を天井に向ける。

 私もつられて上を向くと逆さに落ちて来るメイの分身体と目があった。

 

 急激に近づいて来るもう一つのメイの顔はぶつかる直前に私の眼前で大爆発を起こした。

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