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38 二人係は卑怯じゃないですか? 1

「ところで、メイ。この霧を消してくれ。どこにいるか分からん」


 カイがそう言った後、急速に霧が晴れていきメイの姿が現れる。分身体は彼女を左右から挟むように少し離れた場所にいた。


 それにしても扉を壊して入ってくるとは思わなかった。音で誰かいるのは気づいてたけど開けるのを諦めてどこかに行くと思ってた。まさかフェリクスじゃなくてカイだったとは予想外だ。


「わざわざ助けを求めるとは、こいつはそんなに危険なのか?」


「私と互角といったところでしょうか。イクレイアをギリギリとはいえ全て避け、クリメイションは耐え切りました。しかし防戦一方で私に攻撃をする余裕はなさそうに見えます」


「誇張じゃないなら勇者並ということになるな。ここを優先したのは正解だったか。俺がさっき戦ってた小さいのも中々強かったが、まさかあれ以上がいるとはな。流石に想定外だ」


「想定外をおびき寄せたのはあなたでしょう。なぜしっかりと見極めなかったのでしょうか?」


「ならお前はキメラ相手に本気を出すのか? 出さねぇだろ、こいつらも力を抑えてたんだよ」


「なるほど、言われて納得できました。それでここを優先したと言ってましたが始末する前にこちらへ?」


 私を挟みながら二人は会話を続ける。何か重要な情報でも喋ると思うので私は邪魔をしないで空気に徹する。


 呑気のんきにお喋りしてるけどその間に私が攻撃してくる事は考慮してないのかな? してないわけないか。すぐに対応できると思ってるんだろう。


「余裕だと思って手を抜いてたら手こずってしまった。まだ誰一人も始末できてない。あの小さいのは強いとは言っても勇者候補未満だからなんとかなりそうだ。そして他の男共は気にする必要が無いほど弱い」


 ということはディマス達はまだ無事のようだ。イブリンならどうにかなるかなと期待していたけど、それでもカイの相手は厳しかったか。


 助けに行こうと思ってたからカイがこちらに来てくれたのはありがたい。これで気兼ねなくここだけに専念できる。


「だとしたら逃げられないように何か対処はしましたか? この場所を表に知られるのはまずいですよ」


「出口方向は逃走防止用の壁で塞いだ。もしあの場所から動いてもここに出て来るだろう。それに少しの間だけ身動きできないよう魔術もかけてある。だが回復したらあの小さいのが壁を破壊して逃げる可能性はあるだろうな。それだけの力はあの小さいのにはあるだろう。あの壁もこの部屋みたいに頑丈なら良かったんだが……」


「油断して適当な所で戦おうとするからですよ。私みたいに万全の態勢で臨めばそんなことにはならなかったはずです」


「毎回毎回雑魚相手にそんな無駄な事できるかよ」


「確かにそうですね。もはや過ぎたことを言っても仕方ありません、ともかく急いだ方がいいでしょう」


「ああ、さっさと終わらせるぞ!」


 会話がいきなり終わると、カイは白い刃のナイフで私に襲い掛かってきた。


「おっと、急に仕掛けられたらビックリしますよ。それに二人係は卑怯じゃないですか」


「お前らは何人だったか?」


「ごに……一人です」


「嘘つくんじゃねーよ!」


「でも先に仕掛けてきたのはあなた達でしょ? 私は悪くない」


 見た感じ普通のナイフではあるけど勇者が持つ武器だ、ただのナイフではないだろう。

 ナイフを振り回すカイの動きはメイの分身体より少し速い。


 でもその程度なら難なく回避できる。


 森でディマス達と戦ってた時とは動きが違うのはかなり手を抜いてたということか。


 私がカイに集中しているとメイも死角に近い位置から動き出し今までと比較して遅い速度の水球を私に飛ばして来た。

 どう見ても楽々と避けれるのでどういう意図なのか読めない。


 防御は固めてあるので試しに私はわざとそれを受けてみることにした。

 ちょっとした衝撃と少しだけ寒さを感じた。


 それだけのことだけど感度を鈍くしている今の私が寒さを感じるということは見た目に反してかなり危険かもしれない。


 メイはそれをしつこく何度も放ってきた。

 凍えさせて私の動きを鈍くさせる作戦だろうか。


 念のために魔法で体温を上昇させ、2発目以降は避けることにした。


 メイの分身体からは白い雷が何度も飛んでくる。

 しかし私が射線上にカイが来るように動いてから頻度は減った。


 そしてカイは休む間も入れず何度も何度も斬りかかって来る。

 私はそれを難なく回避していく。


「手加減はしてないんだが、攻撃が全然当たらんな。お前……何者だ?」


 そう言われても普通の子供ですとしか答えようがない。

 この体はステラのものだし私自身のことを答えるわけにもいかない。


「普通の子供です」


 私は笑顔を作り両手の人差し指で自分のほっぺを指し、子供らしさを可愛くアピール。

 ちょっと退屈してたのでふざけてみたくなった。


 挑発になってしまったかもしれない。


「まぁ答えるわけがねぇよな!」


 カイは少し笑ったけど態度に大きな変化はなし。

 私の挑発は効果がなさそうだ。


 彼は何度も何度も蹴りなども交えつつしつこく斬りかかってくる。

 だけど速度はこれ以上は上がらない。


 最初から本気だろうしこれがカイの限界かもしれないな。

 メイが同格と言ってたし、二人に極端な差は無いようだ。

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