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37 さっさと終わらせたいんだけど 2

「0――クリメイション!」


 その発声直後に分身体は霧の中へと退避していく。

 さっきの10カウントの時はおそらく分身体を創造してたと思うけど今度は何かな?


 直後、霧の中から変化が起きた。


 星のように輝きを増していく霧、それは一瞬だけ見えた景色でその後の視界は全て白く染まっていた。


 ただでさえ白かった室内は限界まで白く染まった。

 これ以上の白は存在しないくらいに。

 

 光を追いかけるように暴風と熱波が駆け巡り襲い掛かる。

 しかし魔法の障壁がそれを阻み私を害することはなかった。


 視界は白以外の色は映さず、耳は暴風の荒れる音以外を捕らえることができない。

 なので周囲の状況がさっぱり分からない。


 何がなんだか分からないまま数秒が経った。霧も消滅したようで徐々に視界が晴れていく。

 魔法の障壁が無ければ失明していただろう。まぁ魔法で回復すればいいだけだけど。


 目の前にいるのは2体の分身体と白い鎧を着たメイ。白い鎧の方は本物だろう。

 分身体はメイの近くに固まっていた。

 メイに守ってもらったのかな?


 静かになった空間。何も聞こえないのが少し不安にさせる。

 耳の調子を調べるため両手をパンっと叩き、音を出す。


 普通に聞こえた。耳も問題なさそうだ。


 身体強化を強めにしてるし滅多なことでは体のどんな部分も損傷しづらいから大丈夫だとは思ってたけど、予想通りだ。


 左右に目を向けると壁が均等に少し黒ずんでいる。さっきまであった机と椅子などの小物は全て消滅していた。


 壁の黒ずみは椅子と机の燃えカスかもしれない。

 感覚の度合いを鈍くしていたので詳しい温度は分からなかったけど死んでもおかしくないほどの高温だったようだ。まぁ当然か。


 よそ見をしているとメイが口を開いた。


「ここまでやってもまだ倒れませんか、そもそもあの魔術を実戦で使う機会があるとは思いませんでした。それでも倒せないとなると困りましたね。今以上の魔術を使えば洞窟が崩壊してしまうので使えません」


 相手はぶつぶつと声に出し、どう攻めればいいのか必死に考えている。

 さっきので本気っぽい感じはあったけどまだ上があるようだ。


 しかしこの空間で使える魔術の上限に達したらしい。


 これで本当に打つ手無し、なのかな?


「まだ勝負はついていません。どうやらあなたも防戦一方の様ですし、持久戦ともなれば私に勝機はあるでしょう。シャイニングミスト!」


 再び輝く霧が部屋のほとんどを覆い、メイ達の姿を隠した。

 持久戦ということはもう魔力以外は出し尽くしたと判断してもいいだろう。

 これ以上は情報収集の意味があまり無さそうだ。


 あと私は防戦一方ではなく、攻めなかっただけだからね。


「イクレイア!」


 メイの声と共に3方向から挟むように白い雷が飛んできた。

 全て紙一重で全てかわしていく。


 紙一重なのは余裕をあると思われると相手が勝ち目が無いと判断し洞窟から逃げだすかもしれないので、ギリギリで避けてるアピールをして苦戦を装っている。


 でもこれは避けれたら駄目なくらい速い気がするのでアピールの効果はなさそうではある。

 だけどメイの戦意は残ってるようで諦める気配はない。


 持久戦なら勝てるという根拠は魔力量だろうか? それとも時間を掛ければ仲間のカイが加勢に入るので、それをアテにしてるという事か? あるいは両方か。


 でもあの男って弱かった気がする。ディマス達が総がかりではあったけど勝ってたし、それと拮抗する程度の実力だと私を追い詰めるには心許ない気がする。


 ……いや、今の私みたいにわざと苦戦を演じてたのか? ここに冒険者を誘導するために弱いフリをしてた? メイがこれほどの強さということはあの男も同等の強さというのもありえるか。


 あの男も闇ランクの勇者だとするとイブリン達の手には負えない可能性が高い。

 イブリンが実はまだ実力を隠してたならどうにかなるか? でもそんな分からないことに期待して死なせてしまうわけにもいかない。


 まだ1日程度の付き合いで情はないとはいえ見殺しにはしたくない。それにしても気づくのが遅すぎた。

 私は戦闘能力は高くても頭は普通なのが悔やまれる。とにかく急ごう。まだ無事なら最良の結果になる。

 その前に一応メイに尋ねてみるか。


「メイ! 1つ聞かせて欲しいんだけど」


「内容次第ではお答えしましょう」


「カイは勇者ですか?」


「カイに言及するとは……もしかして気づきましたか? ええ、実は彼に今すぐ来るように応援を要請しました。ちなみに彼も私と同様に闇ランクの勇者で同程度の実力です。そろそろ来ると思い――」


 全部言い終わる前に私が先ほど接着した扉の方から大きな音が立ち、扉が吹き飛んだ。


「メイ! 扉壊れてるんじゃないか? 開かなかったぞ!」


 あの姿は森で私達を襲ってきた男だ。


「壊したのはカイでしょ、さっきまで普通に開け閉め出来ましたよ」


 メイはその男をカイと呼んでいる。

 ここに来たということはもしかしてディマス達はやられてしまったのか?


 というかどうやって応援を要請したんだろう。

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