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37 さっさと終わらせたいんだけど 1

 足音が声とは違う場所から近づいてくる。

 するとメイは霧の中という悪い視界だからか唐突に表れたように見えた。


 しかし先ほどの白い鎧などの武具は着ていない。

 似てるけど微妙に違う普通っぽい剣で斬りかかってきた。


 メイはもう限界の速度と言っていたけどそれよりも明らかに速くなっている。

 油断を誘うために嘘でもついてたのか?


 私は剣を手で弾き、次の攻撃までの一瞬の隙を突いてファイアボールをぶつける。

 直撃はしたけど一瞬で鎮火した。

 傷が無いように見えるけどこの鎧も無効化できるのか?


 ファイアボールに怯むことなく斬撃は続く。

 動きは鈍っていないのでファイアボールは効いてなさそうだ。


 目の前のメイは余裕の顔、というか無表情。さらに人間味がなくなってて気味が悪い。


 斬撃の対処をしていると霧の中から白い雷が飛んできた。

 さきほどの白い槍とは比較にならないほどに速いそれを紙一重で避ける。


 壁に飛んで行ったそれは大きな爆音を轟かせた。

 しかし壁には変化はない。壁が頑丈だったのか雷が弱かったのかどっちだろうか。


 さらに違うところからも白い雷が飛んできた。それも紙一重で回避。

 直後、霧の中から小さな声が聞こえた。


「2度も避けた? 2度くらいなら偶然も……いえ、偶然なら私より早く動ける分身体ぶんしんたいの攻撃を全部かわすのも不可能なはず」


 不思議な所から飛んでくる白い雷は分身体が飛ばしたもののようだ。

 白い雷を2度も避けたことにメイは驚いてる感じもする。


 だけど淡々とした声の感じから感情の起伏は見られない。まだ焦りはなさそう。


 霧の中から声が聞こえてきたということは目の前で剣を振り回してるのは本人ではなく分身体ということになるのか。

 つまりはさっきの意味の分からなかったカウントダウンは分身体を作るための魔術だったようだ。


 それと声も何も無しに雷が飛んできたのは魔術とは違うのかな?

 身体強化のように詠唱のいらない魔術もあるわけだし不思議ではないか。


 答えの出ない事に頭を使い、終わる気配のない斬撃と一定の間隔で様々な方向から飛んでくる白い雷を延々とかわし続けていく。


 分身体の攻撃に交じって不定期的にメイの方からも「イクレイア」という声と共にあの白い雷が放たれてくるけど特に難もなく避けていく。


 メイ以外の場所からは相変わらず声すら無く飛んでくる。

 それから一定時間、相手の繰り出す攻撃に変化はなかった。


 変化がないということはもう本気を出し尽くしたということかな?

 流石にこれで終わりなわけないよね? 


 ……勇者ってこの程度か?


 変化を待っているとメイが口を開いた。


「やはり避けたのは偶然ではありませんか。ですが避けられてしまうのなら絶対避けようのない攻撃を出せばいいだけです」


 メイにはまだ手札があるようだ。さっさと終わらせたいから何もない方が有難かったけど仕方ない。


「30、29、28――」


 再びカウントダウンが始まった。今度は30カウントなので分身体の時のカウントよりも長い。カウントダウンが始まると左右の霧から分身体が私の方へ駆けてきた。目の前の分身体と同じくメイみたいな姿で普通の剣を持ち、寸分狂いもない連携で襲い掛かってくる。


 その代わりに今まで霧の中から飛んできていた白い雷は来なくなった。

 分身体は全員同じ姿形をし、同じ剣を持ち言葉を交わすこともなく連携を取りながら高速で単調な斬撃を繰り出す。


 人間味のないミスのない連携。攻撃回数は1体の時の3倍となり、捌くのに忙しくなったけどまだ余裕で対処できる。


 3体もいるし1体くらいは倒してみようかな?

 どの程度の力で倒せるか気になるし1体くらいなら問題ないだろう。

 ということで隙を見つけ、相手より少し速い程度の動きで殴打する。


 打たれた部分が砂のように吹き飛び、それが致命傷になったのか持っていた剣と全身は白い霧となって空間に溶けるように消えた。剣も分身体の一部だったようだ。


「弱っ!」


 思ったより脆くて私は拍子抜けした。でも分身体だし本体より弱くて当然なのだろう。


「15、14、じゅ、じ、いけませんね。30、29――」


 メイは数字を噛み、一瞬だけ固まった後、数え直し始めた。

 どうやらカウントダウンは言い間違えては駄目なようだ。


 顔には出てないけど分身体を1体やられて心を乱されたか? 数え直すという事は阻止するには最後まで言わせないようにすればいいわけか。


 でも今は相手の力を見たいので発動の阻止はしない。

 だからカウントダウンが終わるまで私は苦戦するフリを続けた。


 そして何が来ても無事なように身体強化だけではなく魔法の障壁も展開し2段構えの防御を用意しておく。


「0――クリメイション!」


 カウントダウンの終わりとともにさっきとは違う言葉が飛び出した。

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