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35 殺意のない舐めた争い 2

 確かに直撃はしたけど、魔術で無効化でもしたのかな?

 正直弱い魔法だとは思ってたので効かないのは想定内。


 しかしいつかはダメージを与えられるかもしれないので火球を何発も飛ばしていく。


「だから、それは私には効きません」


 メイは抵抗することなく全身で受け止め続ける。

 少しくらいは効果があるかとも思ったけどそんなことはなかった。


「私には並の魔術は効きません、この鎧の効果です。この鎧は大抵の魔術を防いでくれます」


 私のは魔法なんだけど、効かない辺りは魔術と根本は変わらなさそうだ。

 それにしてもわざわざ説明してくれるのは余裕の表れということかね。


 こいつを倒したらその鎧貰っちゃおうかな。でも真っ白くて目立つから嫌なんだよね。

 ああ、塗装でもすればいいか。ああ、でも荷物になるし着るのはステラだし、そう考えるとやっぱりいらないな。


「それで他には何をしてくるのでしょうか? あれだけの怪力を見せてくれたのだから魔術もきっと凄いものをお持ちなのでは?」


 あと2つほどあるけど使い物にならないだろう。

 レイニーなんとかってのは大量の水滴を飛ばすだけなので全く効かないのは明白だし、ウォーターボールはファイアボールほどの殺傷能力はない。


 本物の魔術ではないので威力は私の匙加減次第だけど、まだ極端な威力を出すわけにもいかない。

 となると他に私にできるのは拳での殴り合いのみ。

 いや、試しに魔導銃も使ってみるか?


「それは……何でしょうか?」


 ローブに入れておいた魔導銃を右手で構えるとメイが反応した。


「さて、何でしょうね?」


「この場面で出すとしたら武器でしょうね」


「正解、じゃあどんな武器でしょうか?」


 どうやら魔導銃を知らないようだ。

 人相手だとどうなるかは分からないので怖いけど、撃っても死なないであろう剥き出しの左腕に照準を向ける。


「……なるほど、何かが飛んでくるのですね?」


 私はその言葉を聞いた後、無言で発砲。

 ファイアボールなどとは比較にならない速度で飛んでいく赤く白い魔力の弾。

 私には目で捉えることができるけど、さて……勇者はどうだろうか。


 生々しい破裂音とともにメイの左腕の半分は千切れ跳び、肉片が周囲に散らばった。

 メイは赤色の液体が滴る上腕部分を上げて状態を確認する。


「……痛いですね、驚きました。それは厄介な武器ですね」


 メイの白い鎧は腕までは覆っていなかったためか魔力の弾が直撃した。鎧に直接狙えば効かなかったかもしれない。想定外な威力だ。


 このままでは相手の実力を把握する前に倒してしまいそうだ。

 速すぎて反応できなかったのか、それともこんなもの効かないと思ってあえて食らったのか。


 いや、効いてるように見えるけど、いうほど効いてないのかもしれない。かなりの大怪我にも拘わらず非常に落ち着いている。痛みをあまり感じてなさそうだ。私と同様に痛覚の感度を下げているのだろう。


(うげっ……気持ち悪い)


 メイのその姿はステラには刺激が強かったようだ。

 幸い今のステラは内に籠ってるので吐くことはない。


(ステラには刺激が強すぎたみたいだね。私がいいと言うまでは目を閉じてたほうがいいよ)


(そうする……)


「効かないと思って油断してました。面白い武器ですね。なんて言うのでしょうか?」


「魔導銃っていうらしいよ」


「そうですか、それは念のため没収させていただきます。その前に――」


 メイは落ちてる左腕を右手で拾い、切断面同士を合わせると失った肉片部分は再生し左腕は元の通りになった。


 特に詠唱などはなかったけど詠唱なしでも発動するタイプの魔術で治したのかもしれない。


「腕や足を飛ばした程度では私には勝てませんよ。それとその武器はもう私には効きません。どうぞ試しに撃ってみてください」


 そう言うからには本当に効かないのだろう。試し撃ちはやめておく。

 それとハッタリの可能性は低そう。ただのハッタリにしてはリスクが高すぎる。


 直接ダメージを与える使い方はできなくなったので魔導銃をローブの中に戻す。


「それを使わずとも私に勝てるとお考えでしょうか?」


 うーん……逆だな。魔導銃で勝てるなら『それ以外でも勝てる』。

 明言はしない。する意味がないからね。


 相手の本気を引き出すまではこっちが圧倒してはいけない。

 それに相手は私に絶対勝てると思ってるわけだしこっちの言う事なんて真に受けないだろう。


「魔導銃を使って来ないなら好都合。ですがいつ不意打ちをするかも分からないですし、やはり念のためにそれは私が貰い受けるとしましょう」


 その発言の直後、メイは一瞬で私の懐まで詰め寄りローブのポケットに手を突っ込もうとした。

 しかし私には相手の動きがゆっくりに見えるため紙一重で何度もかわし、メイから距離を取る。


 その結果、接着した扉の前にメイが立つことになった。

 しかしフェリクスを追う素振りは一切見せず私に意識を集中させている。


「今のを避けるとは……、コッテンさん、あなたのことを高く評価していたつもりでしたがそれでもまだ足りてなかったようですね」


 昨日の殺し屋の男やキメラと戯れるイブリンと比べてもメイの今の動きは突出して速かった。

 なるほど、そりゃ冒険者のことを舐めてかかるわけだ。


 だけどまだ私には及ばない。

 でもメイの余裕のある言い方からはまだ本気ではないのがうかがえる。


「これだけは奪われるわけにはいかないのでそりゃ避けますよ。もったいないし」


 魔導銃は渡すわけにはいかない。というか金になりそうなものは一切取られたくない。


「ですが紙一重でしたね。次は確実に頂けそうです」


 まだ相手も本気ではなさそうだ。

 避けるだけってのも怪しまれそうだし、攻撃を加えるとするか。

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