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2 油断は禁物、でも限度はあると思う 2

「なんで逃げないの? 逃げれば自分だけでも助かったかもしれないよ?」


 レフは私に逃げて欲しかったのだろうか?

 だとしても逃げるつもりはない。


「その言葉、そのまま返すね。死にたくなかったら退いてちょうだい」


 そうは言ったけどまた命を狙われる可能性がある以上は逃がすつもりはない。

 子供達の安全のためにも屋敷の関係者は全て消す。


「はっはっは、何言ってんだ? 子供相手に俺が負けたことは1度もない。ガキの頃を除いてはな」


 レフは当然ながら余裕を見せてきた。

 慢心は良くないと言いたいけど、でも仕方ないか。子供相手に油断するなというのが無理というもの。

 通常は子供が大人に勝つ可能性は無いに等しい。

 プロの殺し屋がど素人の子供に負けるなんてまず有り得ないだろう。

 今の時代はどうかは分からないけど相手の態度からみるに違いは無さそう。


「じゃあ今日は子供に負ける最初で最後の1回目になるというわけだね」


「はっはっはっ、お前面白いな。そんな遺言でいいのか? まともな遺言が思いつくまで待ってあげてもいいぞ?」


「おいレフ! さっさと殺せ!」


 ゴードンはかなり苛立った声でレフを急かす。


「ちっ……というわけだ。やっぱり待てねぇ、死ね」


 レフはいつの間にか剣を高く構えており、強烈な速さで振り下ろす。

 普通の人ならおそらくそう感じるほど速いのだろうけど、私には余裕で捉えられる速度だ。


 両断しようと迫る剣を私は身体強化した両手で挟んで受け止める。

 

「は?」


 レフは目を見開き、間抜けな声が零れる。

 私は両手に力を込め、剣を掴んでいるレフごと振り回した。


 負けじとレフも抵抗しているようだけど今の所は力はこちらの方が上。


「子供のくせに……この力はなんなんだ?! 化け物め!!」


 レフは力で勝てないと思ったのか突然手を離した。そして身を屈め次の攻撃に移ろうとする。


 私はレフが手を離したので勢い余って力を入れてた方向に上半身が少し捻じれる。すぐ様体勢を立て直すと超高速で剣を左右に振り回し、攻撃しようと近づいてきたレフ目掛けて柄の部分でメッタ打ちにした。


「ぐぁっ! いたっ! がはぁっ! やめっぉ」


 レフは顔を歪めながら攻撃を避け始める。

 しかし避けてばかりでは何もできないと判断したのかレフは後ろに下がり間合いから外れた。


 私はその間に剣を正しく持ち直し、両手で構える。


 それにしても凄いデザインの凝った剣だ。こんなものを持ってたら目立つし、私には武器は必要ないから売って金に換えようかな。


「……デタラメすぎる、これは夢か?」


 そう漏らしたレフから焦りが感じられる。先程の余裕はもはや無いだろう。

 彼の顔には痣が出来ており、まさか柄の部分で怪我を負うとは想像もしていなかったはず。


「あ、相手は子供だぞ! さっさとしろ!」


 ゴードンはレフに苛立ちをぶつけた。

 レフは不快そうに私に勢いよく近づき、襲い掛かってきた。


 右手のナイフを振り、同時に左手からは白く光る雷の様な魔法を放ってきた。

 私は咄嗟に剣を高く放り投げると相手の懐に飛び込み、魔法を避け、ナイフを持った相手の腕を掴みレフを投げた。


「お前ぇぇぇ本当に子供なのかよ?!」


 レフは地面に強く叩きつけられた。

 私は手を離すと彼の姿を見下ろし、落ちて来た剣の刃の部分を片手でキャッチする。刃に触れた手に傷はつかなかった。


 さて、これで少しの間は起き上がれないだろう。と思っていたらレフはすぐ様立ち上がり逃げ出した。おそらく身体強化で耐久力が上がっていたのだろう。じゃないと悶絶してすぐには動けないはず。中々頑丈だね。


「どうやら俺には勝てそうにない。ゴードン、あんたもさっさと逃げた方がいいぞ」


「なっ、お、おい!!! レェェェフ!!!」


 しかしレフは呼びかけに応じず遠ざかっていく。

 ゴードンはこの場から動かず目で追うだけだった。


「逃がさないよ!」


 私がレフをすぐに追いかけようとした瞬間、腹部に軽い痛みが走った。


「え?」


 レフもゴードンも私の近くにはいないし魔法を使ってる素振りは見られなかった。

 訳が分からずに痛みのある部分を見下ろすと赤く染まる刃が生えていた。


 なるほど、子供達にゴードン側の仲間がいて背中から私を刺したという訳か。


 幽霊である私は宿主の体の感覚の度合いを自由に調整できるので痛覚は最小限に抑えてある。

 だから痛みは小さい。完全に遮断してたら気づかなかったかもしれない。

 生前だったら激痛に顔を歪めただろう。幽霊もこういう時は便利だな。


 取り憑かれた宿主も感覚を調整できると聞いたことがあるけど、まだ私はそのことをステラに教えてないのでステラはもしかしたら激しい痛みを感じているかもしれない。


 でもステラからの反応はないし大丈夫なのかな?

 今は背中を刺したのが誰なのかを確認するとしよう。


 後ろを振り向くと目の前には手を真っ赤に染め怯えた表情の兎耳の女の子がいた。

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