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34 怪力 2

 それにしてもなんで冒険者を捕まえたり殺そうとしているんだろう?


「なぜ私達を殺そうとしたんですか?」


「それは冒険者をできるだけ減らすようにと命令されてるからですよ。金品目的の盗賊などと一緒にはしないでくださいね」


 金品渡せば逃がしてくれる可能性があるだけ盗賊の方がまだマシだな。


「では何のために?」


「勇者は世界の守護者です。冒険者を減らす理由は分かりませんがきっと悪なのでしょう」


 理由も知らずにこんなことしてるのはかなり狂っているね。

 変な薬かあるいは宗教的な何かで頭がやられているんだろうか。これは関わっちゃいけないタイプの人かもしれない。


「正しいと思うならコソコソとしないで堂々と表でやるべきでは?」


「上の判断ですから。そう思ったとしても私一人が乱すわけにも行きません」

 

 つまりは表沙汰になるとまずいというわけか。こういう活動がバレて警戒されるのを恐れてるのだろう。勇者がいくら強いといっても多勢には厳しいのかもしれない。


「それで、出口の場所を教えてるけど私たちを逃がしてもいいんですか?」


「逃げられるならどうぞ、無理でしょうけど」


 その言い方は逃がす気はないらしい。扉の出口のことは嘘なのかもしれないな。


「くそ、開かない」


 フェリクスに目を向けると扉を開けるのに苦戦していた。

 彼の傍に行き、落ち着くようにと声をかける。


「落ち着いて、押して駄目なら引いてみて」


「僕は落ち着いてる。押しても引いても動かない。あの女、嘘をいたんだ」


「私に替わって」


 私が触ってもビクとも動かない。フェリクスの言う通り騙されたか。

 しかしメイは否定する。


「私は嘘はついてませんよ。この扉の向こうが出口に繋がるのは本当です。そんなに開けるのが難しいのでしょうか? では私が開けてみせましょう」


 メイはゆっくりとこちらに近づいて来る。

 フェリクスはメイを警戒しながら距離を空け、私は邪魔にならない程度に譲る。


 メイが扉を横に引くとゆっくりと音も無く動き少しずつ開いていく。


「ほら、やっぱり開きました。壊れてなんかなかったですね。開けるのに特別な方法は使ってません。横に引いただけです。では閉めますね」


「ま、待て!」


 閉じようとするメイにフェリクスは止めようと声を掛けるけど、メイは返事も視線を合わすこともしない。


 彼女は道を塞ぐように立っているため隙を付いてそこから逃げるのは難しそうだ。

 私だけ逃げるなら問題ないだろうけどフェリクスを置いていくわけにも行かない。


 扉が閉まるとメイはテーブルに移動し椅子に座った。


「どうぞ頑張ってくださいね」


 メイはどうせ無駄とばかりの余裕の態度だ。

 しかしこちらを馬鹿にしたような感じではない。さっさと諦めて欲しいといった感じだ。


 そんなメイとは違いフェリクスの空気は重い。


「メイを倒してもこの扉を開けられなければ僕達は終わりだ」


 最終手段で私が扉を消滅させて通れるようにはできるから終わりではないけどね。

 今は言わないけど。

 私は他の扉も念のために確認して見たけど全部同じ感じで動かなかった。


「アージェンが来るまで向こうで待ってれば良かったですかね?」


「……ディマス達がここに来るのを祈るしかないな」


 フェリクスは諦め、壁に持たれて腰を下ろした。


 私は腕相撲の時くらいの力で扉を引いてみるけどビクともしない。

 もっと強い力なら開くか? 


 メイが特別な方法はないと言ってたので力さえあれば開くかもしれない。

 嘘の可能性もあるけど試してみるか。


 腕相撲の時以上の力を出したところでフェリクスにこの異常な怪力に気づかれることはないだろう。彼にはあの時の力がどのくらいかは分からないだろうから。


 私は扉に手をかけ徐々に身体強化の度合いを上げていく。

 腕相撲の時の5倍くらいだろうか、もっとかも? どのくらいの強さかは分からないけど扉が動き出した。


 なるほど、この扉、単純にとんでもなく重いだけの様だ。

 だとするとこんな超重量を開けるメイはイブリンとは比較にならないくらいヤバいかもしれない。


 妙に堂々としてるし勇者ってのも嘘じゃないのかも。

 とりあえず足手まといになりそうなフェリクスだけでも逃がしてメイの相手は私1人でやった方が良さそうだ。


 完全に扉を開けた私はフェリクスを掴み部屋の外に放り投げる。


「ちょっとコ、コッテンさん!」


「あの勇者は私が相手します。フェリクスさんはディマス達を連れてきてください」


 私はそう告げた後すぐに扉を閉じた。


「本当に開けてしまうとは……本当にいるのですね、こんな人が」


 メイは椅子に座ったまま止めようとも焦ることも無く私を見つめていた。

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