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33 ガラスではない透明なカップ 1

「こんな場所で何をされてるのでしょうか?」


 黒髪の少女は私達に尋ねてきた。


「君こそなぜこんな所に?」


 フェリクスは険しい顔で返す。


 たしかにこんな場所に人がいたら怪しいけど相手から見ても私達のことは怪しく見えてるはず。


「……聞こえてなかったみたいですね」


 フェリクスの質問に少女は答えなかった。

 そしてなぜかフェリクスは少し怯んだ。


「フェリクスさんどうしたんですか?」


「え? いや、なんでも――」


「もう一度お聞きしますが……あなた達はなぜこんな所に? これで通じますか?」


 フェリクスの発言に被せて少女は質問して来た。


「あ、はい。大丈夫です。僕達は人を追ってこの洞窟に入ったら突然地面が開き、ここまで落とされました」


「……そうだったのですね、怪我はありませんか?」


 少女は雰囲気を穏やかにすると身を案じて来た。

 フェリクスは頭を横に振った。目から放つ光も左右に振られる。


「……そうですか。では、私が出口まで案内しますので後ろから付いて来てください」


 案内できるってことは詳しいってことだよね?

 なんで詳しいんだ? ここに住んでいるのか?


「道が分かるんですか?」


「はい、付いてきてください」


 私の疑問に少女は肯定した。

 フェリクスは必要の無くなった『ライト』の魔術を解除した。


 長い距離を付いて行くと薄っすらと光る扉が見えてきた。


 少女はその扉を横に引くと、私達に中へ入るように手招きする。

 扉の中から白い光が溢れだす。


(ステラは眩しくない?)


(一瞬眩しかったけど、すぐ慣れた)


 ステラも私が取り憑いてからは色々な感覚の度合いを調整できるからなのか問題なさそうだ。

 この扉の中は怪しさ満点で入るのに躊躇してしまうけど、他に道は無かったので仕方なく中に入っていく。


 私達が通過すると少女は扉を閉めた。

 目の前には白い空間。視界の端から端までが白で埋め尽くされている。


 どこを見ても真っ白く、そして広い。


 部屋というには違和感があり、一軒家が何件も入るくらいには広く、高さも2~3階建ての建物が入るくらいはありそうだ。


 壁は完全に人の手が加わっているような綺麗な平面で、どういう仕組みなのか薄っすらと白く光っている。

 部屋の真ん中には木製のテーブルとイスが2つ。部屋の端っこには壊れたイスと思われる残骸が置いてある。


 壁の下部に目を向けると扉がいくつかあるのみで他には何も無し。扉のどれかが出口に繋がってる通路なのだろう。


 明らかに人の手によって作られた部屋だ。

 フェリクスに目を向けると呆気にとられた顔をしている。


(わー! すっごーい!)


 ステラは緊張感も無く頭の中ではしゃいでいた。

 緊張感を持つべき場面な気もするけど私も緊張感はあんまりないのでステラに対して特に言える事は無い。


「どうぞ、こちらへ。休憩しませんか?」


 少女は椅子を引き私達に座るように促す。


 こんなところで休憩って……どこを見ても真っ白だから全然落ち着かない。


 魔物やキメラがいないのが一目で分かるので、そういう意味では安心して休憩できる。

 私は休まずに先に進んでもいいけどフェリクスは休憩したがっているように見えた。


「コッテンさん、椅子は2つしかないようなので座ってください。僕は立っていますので」


 フェリクスに席を譲られたけど、私は平気なので彼に譲る。そもそも疲れていないので休む必要もない。疲れていないと伝えると気を使ってると思われそうなので、疲れはさっきのアージェンの待ち時間で取れたことにした。


「そうですか、じゃあお言葉に甘えて僕は座るね」


 フェリクスは椅子に腰を下ろした。


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