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32 タペタム

 助けを待っている間、完全な沈黙というわけにもいかず自然とフェリクスとの会話が発生する。答えづらい質問には曖昧に答え、長いこと耐えて助けを待った。しかしアージェンが来る気配はない。

 私はとっくの前に遅いと感じていたけどフェリクスもようやくそう感じたようで苛立ちが出始めた。


「アージェンの奴……流石に遅い、何をやっているんだ」


「どうします? 私がアージェンみたいにフェリクスさんを上にぶん投げましょうか?」


「い、いや、やめてくれ。あの高さまで届く勢いだと失敗して壁にぶつかったら強化してても流石に死んでしまうよ」


「そんな失敗はしませんよ?」


 その程度の簡単なことで私が失敗するわけがない。

 まとが不規則に動かないのなら狙ったところに必中だ。


 私は落ちて来た穴を見上げてみると、さっきより微妙に天井が低くなったような気がする。

 落とし穴が閉じたのかな? 今投げたら本当に死んでしまうだろうな。


「……とにかく上に繋がる道でも探したほうがいいかもしれないな。奥の通路からどこかに繋がってないか調べに行こう」


 フェリクスはそう言って立ち上がり『ライト』と言うと目から光が放射された。

 なんかちょっと怖い。なんで目から光を出してるんだ?


「ビックリさせちゃったかな? 本当ならこの魔術は手から出した方がいいらしいんだけどこっちの方が自分は便利なんだ。ごめんね」


「いえ。やりやすい方法でいいですよ」


 目から出すのは単純に便利だからのようだ。

 発光元の本人は眩しいんじゃないかなと思ったりもするけど気にしないでおこう。


 洞窟内は明るくなり奥まで見通しやすくなったので移動することにした。


「フェリクスさん、さっきの落ちたときのあの床って罠だと思うんですけどどう思います?」


「気が動転してて気づく余裕がなかったよ。もし罠だとしたらやっぱりあの男が仕掛けたのかな?」


 私には男の罠かは知らないけどそう思っておいた方が油断しないで済む。


「そうだとするとあの男はこの洞窟内部のことに詳しいはずです。フェリクスさん気を付けて進みましょう」


「……戻ってこないアージェン達も罠に引っかかってしまったかもしれないか」


 先程よりも少し広い道を進むと途中に扉があった。


「こんな所に扉? 人の手が入ってるということは上に繋がる道がどこかにあるということかもしれないな!」


 希望が持てたのかフェリクスの表情は少しだけ緩んだ。


「どうします? 扉開けてみますか?」


「罠があるかもしれないし僕が開けよう」


「待って、私が開けます」


 罠があるかもしれないのでフェリクスよりも私が開けた方が安全だろう。

 扉を押して開けようとするけど開かない。ふと小屋の扉で苦戦していたイブリンがよぎった。


 これはもしかして引くタイプかな? 

 そう思って引いてみると特に不快な音も立てずにスムーズに開いた。


 不快な音がしないのはこれが新しい扉、もしくは手入れがされてるからかもしれない。

 期待を持って入ろうとしたら知らない足音が聞こえてきた。


「フェリクスさん誰か来ます。足音が聞こえます、人の足音のようです」


 扉の方とは違う場所から、私達が来た道とは逆の方からそれは向かってくる。


「いや、俺には何も聞こえないが……」


 少し遠すぎるか。というかその猫耳でも聞こえないのね。

 一定のリズムで聞こえるその音は確かに足音だ。


(デシリア……死なない様に気を付けてよ。死ぬよりも目立つ方がマシだから!)


(その時は本気出すから心配しない! 私を信じろ)


 私より強い者だったときはどうにもならないけどその可能性は低いだろう。

 そして1分程すると足音の主が現れた。


「本当に来た、それにしてもコッテンさんの耳良すぎだろ! というかなんでこんな場所にこんな子が?」


 足音の主を見たフェリクスは驚いたように見える。私も少し驚いた。


 目の前には黒の長髪の身長150cmくらいだろうか。清楚な雰囲気を纏った少女、というか子供か大人か分かりづらい微妙な顔立ちをしている。


 大人かどうかはイブリンの時のように肌の質感を調べれば分かるかもしれないけど別に年齢なんか興味ないのでそんなことはしない。


 その少女は釣り目をしており、キツイ印象を受けそうなものだけどそうは感じさせない。


 なんていう服装かは分からないけど長いダブダブのがらの入った袖、腰は太いベルトのようなものが巻かれていて、足元まで隠れるスカートのようなものを履いている。

 スカートの柄と袖の柄は同じなのでもしかしたら一体型の服かもしれない。


 少女もこちらと同じ電灯っぽいものを持っていて私達の足元を照らしていた。

 ここにいるのが場違いな雰囲気のその少女は表情を変えずに私達を見ると口を開いた。


「こんな場所で何をされてるのでしょうか?」


 それは私達が少女に問いたい言葉でもあった。

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