31 落下 1
「真っ暗になっちまったな」
アージェンが言うとフェリクスはもう1つ電灯を取り出し周囲を照らした。
道は曲がりくねっているためディマス達の姿はもう見えない。横にも縦にも狭く、土と石の混ざった地面は少し湿っていて凸凹しておりバランスを崩したらすぐ転倒しそうだ。
電灯を持ったフェリクスが先頭、最後尾は私、間にアージェンという隊列で進むことになった。
「この洞窟、結構深いですね。別の所に繋がってたら逃げられそう」
私が心配そうに言うとアージェンが言葉を返した。
「洞窟の構造を把握している人なんて管理者やガイド以外はほとんどいないし、適当に逃げ込んだ可能性の方が高いだろうな」
「そうだといいですね」
洞窟の奥深くなんてわざわざ住むような場所じゃないし、アージェンの言う通り道を把握してる人なんていないよね。
「とりあえず俺達の方が強いしまた襲われても返り討ちにしてやるさ」
アージェンは自信たっぷりに言った。
少し進むと道は広くなり、さらに進むとまた狭くなる。そしてまた広くなり、そんな道中を何度か繰り返した。
時折、頭上から石や岩が落ちて来て直撃するけどアージェンもフェリクスも身体強化で体が頑丈になっているようで誰も怪我はなかった。
「なんでこんな奥深いところに逃げ込んだんだろうな。ここまでして捕まりたくないとか余罪が多そうだな」
「じゃあ今日は諦めてまた襲ってきたときに捕まえます?」
私がフェリクスに言うとアージェンが答えた。
「またやってくる保証もないんだよな」
「それもそうですね」
そしてまた狭い道を通ったとき、足から地面の感触が突然なくなった。
「なんだああああ!」
「ぬああああああ!」
「……」
私以外は絶叫した。見上げれば天井の岩壁が遠ざかっていく。
(あ、あれ、もしかして落ちてる?)
(落ちてるよ)
ステラの疑問に淡々と答えるけど、彼女はそれ以上これといった反応はなく意外と冷静だ。私がどうにかしてくれると思ってるのだろう。
さて、魔法を使えば簡単に落下してるこの状態をどうにかできるけど、人前では派手なものは使いたくないので他の方法でどうするか瞬時に判断しないといけない。
まずはアージェンを捕まえて上に放り投げることにした。
「うおおおお! 今度はなんだあああああ」
とりあえずアージェンが無事に上に戻れたのを確認した。フェリクスも上に戻そうとも思ったけど少し距離があり手が届かない。地面にぶつかるまでの時間も短いので魔法を使って対処するしかなさそうだ。
地面に激突する衝撃を和らげようと大量の水球を秒速数十発で地面に放つことにした。
「ウォーターボールウォタボーワラボーワラボーラボラボラボラボラボ……」
超絶な早口――ちゃんと言えてないけどこんな状況でいちいち気にしてこないだろう。
私のは魔術ではなく魔法なので魔術の名称を言わなくても発動するので発動のミスはない。
そして局所的に水位が上がった場所に着水した。




