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30 松明は使わないらしい 1

「そろそろ退いても……いいか?」


 男のその呟きは非常に小さくて、聞こえたのは多分私だけかもしれない。

 周りには他に誰も気配がないので自分自身に言ったのだろう。


 男は石を無差別に大量に投げると身を翻して逃げ出した。


「あ、待ちやがれ!」


 ディマスが最初に男を追いかけ、後から私以外の全員がついて行く。


「あ、ちょっと!」


 アージェンが走り出したのを見て私は声を掛けると彼は立ち止まった。


「コッテンも来てくれ!」


「倒したバガンスネークはあのままでいいんですか?」


「魔石もないし、あんなでかいモノ調査班以外は誰も持って行かないからそのままでいい。急げ!」


 そう答えた後アージェンは私を置いて追いかけていった。


 それにしてもあの不審な男が逃げだしたのは私がバガンスネークを倒したから?

 だとしたらもう邪魔はしてこないだろうし追いかけなくてもいいんじゃないかとも思うけど……いや、違うか。


 明日、明後日また来るかもしれない。それに行方不明の冒険者に何か関与してるかもしれない。


(どうしたのデシリア、行かないの?)


「行く、大丈夫。まだ間に合うから」


 私はアージェン達の姿が見えなくなる前に走り出す。


 先を行くアージェンとフェリクスをあっさりと追い抜き、ディマス達に追いついた。

 ディマスとイブリンはすでに男を追い詰めているように見えた。


 男の背後は洞穴しかなく左右を高い崖に囲まれている。

 これ以上逃げようと思ったら洞窟に入るか崖を上っていくしかない。


 男の身体能力は高いのでこのくらいの高さの崖なら登りそうな気はするけどどんな行動に出るのやら。

 というかなんでこんな場所に逃げて来たんだろう? もっと逃げやすい道はあったはずだけど、わざとか?


 背後にある洞窟が別の場所に繋がってるんだろうか。だとしたら中に逃げられたら厄介かもしれない。


 もし行方不明の冒険者を攫ってるのなら仲間がいそうだ。

 それらの予想を裏付けるかのように男は追いつめられてても動じる様子はなく、淡々とこちらを観察している。


 ディマスは軽く息を切らしながら告げた。


「さぁどうする? 逃げるならその洞窟に逃げるか崖を上るかの2択だな……それとも正面突破か? それが無理だから逃げたんだよな?」


 続いてイブリンも声を上げる。


「崖から逃げれると思うなよ? 私はその程度の崖なら登れるからな。もし逃げたら次は本気でぶっ潰すぞ。さぁ、大人しく捕まれ」


 言い終わる前にイブリンは男に早歩きで近づいていく。

 男は圧に押されたのか厳しい表情で手に持っている袋の中の石を取り出すとイブリンに投げだした。


 しかしイブリンはそれを避けない。頭を振って石を迎え撃ち、粉々に砕いた後、笑みを浮かべ、何事もなかったかのように直進する。


「ふははっ、こんなもん私には効かんぞ!」


「な、なんだこいつ!」


 男はイブリンの行動に驚きを見せる。

 そのあと一瞬だけ口角が上がってるのが見えた。あまりの行動に呆れて笑ったのだろうか。


 ディマスは何か違和感があったのかイブリンを呼び止める。


「イブリン止まれ!」


「大丈夫だ! こいつが罠を仕掛けようとも大抵の攻撃は私には効かん!」


 しかしイブリンは無視して突っ込んでいく。すぐ目の前まで来たイブリンに男はようやく焦りを見せ始めた。


 さっきまでの戦いぶりを見てるとさすがに男が勝てる要素は見えない。なのにまだ逃げずに戦おうとしている。


 切り札でも隠してるのか?


 男は深く息を吸った後、演技掛かった声を出した。


「掛かったな馬鹿め!」


 その発言の後、イブリンのいる地面は爆発し、大きな土煙と赤い液体をまき散らした。

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