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2 油断は禁物、でも限度はあると思う 1

「死にたくなかったら私についてくるように!」


 私は怯える子供達に告げた。

 

 私の手によってではなく魔物の手によってと死ぬという意味だけど伝わってないだろうな。

 可哀想なので安全な場所まで行ったら解放してあげよう。


 この森を脱出するまでは危険なので子供たちを固めて歩かせる。魔物や危険な動物がいるので油断は禁物だ。


 魔物は私の時代にはいなかったので初めて見たときはあの姿には驚いた。動物とは明らかに違う形をしていた。


 爆心地から離れるように草の剥げた道を歩いていると、大きく可愛い鳥が引く家の様に大きな馬車が道を塞いだ。


(ステラ、ちょっと聞きたいんだけどさ、なんで今の時代って馬が客車を引いてないの?)


 私の時代は馬車しかなかった。


(客車?)


(客車は人が乗ってる箱の部分だよ、それで馬は?)


(馬は引かないよ。あれは鳥車ちょうしゃだよ)


(ちょうしゃ? 馬車はないの?)


(馬車って……デシリアっていつの時代の人なの?)


 その時、家のように大きな馬車から……じゃなかった、鳥車から二人の男が降りて来た。

 こんな場所に来る人間といえばさっき破壊した屋敷の関係者だろう。


「貴様らぁ……なにしやがったあああああ!」


 男は突然怒り出した。きっと屋敷を爆散させたことに怒っているのだろう。


 恐らくこの男は悪の組織のボスだろう。そんな感じの風格がある。

 威圧感のある服を着ており体格はまん丸としている。首や手などにたくさん付いている装飾品はその数だけ権力を誇示してるかのようだ。


 私はボスの言ってる意味を分からなさそうにしてると、彼はビシッと私の後方に向けて指を差した。


「アレだよアレ!」


 振り返ってみると、この距離からでも爆心地は一応見える。煙も上がっていて焦げた匂いも漂ってくる。


「えーと、あれは私達じゃありません」


 私は否定して反応を見ることにした。

 常識的に考えるならば、囚われる程にか弱い子供達があんなことできるわけがない。


「なんだと? じゃああれは誰がやったというんだ!!!!?」


 さて、誰のせいにしようか。

 屋敷の生き残りはいないだろうし適当に言ってもばれないだろう。


「私達を助けてくれた人がいて、魔法で破壊していきましたよ。私たちのような不幸な子供たちが増えないようにと言って去っていきました」


 ボスは私以外の子供たちにも視線を合わせていく。

 私も子供達に一瞬だけ視線を向けると怯えている様子が目に映った。


「嘘だな?」


 ボスは信じてないようだ。

 まぁ、嘘だと思うよね。その通り嘘。やっぱり遠くから一部始終が見えてたのかな?


「ホントですよ」


「いや、お前、バレてるぞ? 俺のことが怖くないのか? 舐めてるのか?」


 あれ、やっぱりバレてる? ハッタリか? いやこれは確信してそうだ。

 まぁいいや、どうせこいつも消してしまえば全て収まる。


「嘘じゃないです、本当です。信じてください!」


 一応もう少し粘って反応を見てみる。


「もうお前がやったってことはバレてるんだよ。お前は嘘をついた、あの屋敷をどうやって壊したか知らんが歯向かえばどうなるか、見せしめとしてお前を殺す!」


 もう誤魔化しは通用しないようだ。


「みんなは下がって」


 私は子供達を後ろに下がらせる。


「レフ、あのふざけた子供を殺せ!」


 ボスは声を荒げながら隣のレフという男に指示を出した。

 レフは興味無さそうにこちらを見ている。ボスとの温度差が激しい。

 

「あの、ゴードンさん。俺がやるんですか?」


 レフは怠そうにゴードンと呼んだボスに尋ねる。


「そうだが……嫌か?」


「嫌ですよ、子供ですよ? 殺すのはやり過ぎですって。子供なんて弱いからつまらないですし」


「俺だって嫌だよ! でも舐められっぱなしってわけにはいかねぇだろ? だからやらなきゃいけねぇんだよ。殺し屋であるお前ならこういうの慣れてるだろ? お金払ってるんだから仕事しろ!」


 変な会話だな。

 レフと呼ばれた男、殺し屋ということはきっと強いのだろう。


「分かったよ、仕方ないな。悪いな嬢ちゃん。死んでくれ」


 レフはこちらに視線を向けると腰に差した剣を鞘から抜き出し、腕をだらんと下げた。やる気が感じられない。


(ステラ、どうする? こいつも殺す?)


 私はレフを注意深く観察しながらステラにどうするか判断を仰ぐ。

 見ただけで相手の力量を測るというのは長年の戦闘経験があっても私には判断できない。だから油断はできない。


 一方、相手の方は油断しているように見える。最初は手加減をしてくるだろう。

 相手は武器を持ち、こちらは素手だ。しかも私の今の姿は子供。

 しかも囚われるほどにか弱い子供だ。そんなのを相手に油断するなという方が難しい。


 どちらにしても私が負ける可能性はほぼない。99%勝てるだろう。


(デシリア、私まだ死にたくないから任せる。絶対勝ってよ)


(もちろん勝つよ。相手が死ぬ瞬間を見たくないなら目を閉じててもらってもいいよ)


 私はそう返した後、少しずつ近づいて来るレフを注意深く凝視する。

 剣の間合いに入ったところでレフは足を止め、揺さぶる言葉を掛けた。


「なんで逃げないの? 逃げれば自分だけでも助かったかもしれないよ?」

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