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28 そうだ、殴ろう! 1

「アージェン、フェリクス。ご苦労。あとは私がやるから下がっていいぞ」


「イブリンが勝手にやったらディマス怒るんじゃない?」


 心配するフェリクスだけど予想というよりは確信なのだろう。

 それを証明するようにディマスは怒り気味に声を飛ばしてきた。


「おいイブリン! 何で前に出てきてるんだよ。魔力を温存しておけ!」


 イブリンは「ウォーターボール」と声に出し、バガンスネークに水の球をぶつける。


(ウォーボーイじゃなくてウォーターボールだったか)


 さっき私は魔術の名前を間違えて言ってる気がしたけど、その感覚は正しかったようだ。


 バガンスネークの注意を引き付けたイブリンはディマスの方を向き――


「私にも体を動かさせろ! 別に少しくらいならいいだろ?」


 そう訴えた。


「さっきまでやる気なかったくせになんなんだよ一体……」


「やれと言われたらやりたくなくなるだろ? その逆も然りだ」


「俺にはその気持ちは分からんな。とりあえず言うことを聞いてくれないか?」


 イブリンは迫るバガンスネークを一瞬だけチラリと見る。


「なら半分だけ聞いてやろう。そいつの攻撃は私が引きつけるからお前達はそいつを仕留め……ろ!!」


 イブリンはバガンスネークの噛みつき攻撃をギリギリで回避する。そして避けた後すぐに水の球を飛ばしてぶつけた。


 イブリンが身体強化の魔術をどれくらいの強度で使ってるのか知らないけど、ディマス達と比べて動きが尋常じゃないくらい速い。


 こんな便利な魔術ならディマス達も使えた方が良いよね。って、もしかしてとっくに使ってたりするのか?


「ああクソ……こうなってしまっちゃ仕方ねぇ。フェリクスとアージェンはもう下がっていいぞ、戦ってもいいが」


 ディマスはそう告げた。イブリンがいれば本当に大丈夫なのだろう。


「イブリンがいるなら俺はいらないな。ちょっと休憩してくる」


「少し疲れたから休む」


 フェリクスとアージェンはあっさりと後ろに下がった。

 アージェンは休憩に行くついでに私に話しかけて来た。


「キメラ倒した後でいいからその魔動銃さ、ちょっと撃たせてくれないか?」


 ただのお願い事だった。悪いようにはしないだろうし後で貸してあげよう。

 アージェンは一方的に用件だけ言うと、返事を待たずに休憩のためにフェリクスの所に向かった。


 私は休憩について特に何も言われてないので下がらず、どう動こうかとディマス達を観察しながら考える。

 

 ディマスとイブリンはバガンスネークのすぐ近くをせわしなく駆けまわっている。

 イブリンが素早く動き水球で注意を引きつけ、その隙にディマスが小さな盾で殴っていく。


 ディマスが本気で攻撃を始めたからかバガンスネークの呻く声が増えて来た。

 イブリンはダメージのある攻撃はしないと言ってるので、私が何もしなければディマスがトドメを差すだろう。


 さて、私も何かしないと給料泥棒みたいでなんか嫌だな。

 倒してもいいとは言ってたし、私が倒してしまおうかな?


 でも腕相撲の時の力くらいで倒せるかは正直分からない。

 倒せればいいけど、もし倒せなかったとしても気にしなくていいか。とりあえず頑張ったってのが伝わればいいだろう。


 私は攻撃を加えるために徐々にバガンスネークに近づいていく。


(え、近づくの?)


 ステラが少し嫌そうな声を出した。いくら大丈夫だと分かってても近づくのは不安なのだろう。


(試しに殴ってみようかと、私がいる限りはステラは背中を刺されても死なないんだから安心して)


(それは心配してないけど、あの顔近くで見るの怖いんだよ)


 あの顔? なるほど、確かに怖いのかもしれない。でもそれくらいは我慢してもらおう。


(目は閉じずにちゃんと見ててよ、冒険者になるなら克服しなさ――」


 その時、遠くから小さく聞き慣れない声が耳に入った。


「あんまり強くなさそうだな」


 それは男の声だ。アージェンでもフェリクスでもない。他の冒険者のだろうか?

 ディマスにしては不自然なセリフだし近くにいるので明らかに違う。


 私は一瞬だけ周囲に視線を走らせてみるけどこんな遮蔽物の多い森の中だと、特定の一人を見つけ出すのは近くにいても難しい。

 遠くだと尚更どこにいるかは分からなかった。


 行方不明になった冒険者なのかとも思ったけど今はそんなことを考えるのをやめた。

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