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27 硬いだけで弱い(頭が)かもしれない

「バガンスネークだ!」


 アージェンが最初に声を上げた。

 キメラであるバガンスネークは魔物であるワゴーンほどは不自然な形をしていないけど、とにかく気持ち悪い。


 蛇のような細長い胴体は人の胴の5倍くらいの太さだろうか、体の長さは15mくらいはありそうに見える。頭は馬の形をしていて胴体が細く見えるくらいには大きい。


 逃げる魔物を追いかけまわし捕食していく。魔物は噛み砕かれると蒸発してるんだけど腹は満たされているのだろうか?


「結構早く遭遇できたな。運がいい。よし! 武器を構えろ、戦うぞ!」


 ディマスは嬉しそうに小さな盾を構える。剣を腰に差してはいるけどそれは使わないようだ。

 アージェンとフェリクスは剣を手に持ち、イブリンは腕の半分ほどの長さの手袋を装着した。


 私は銃を手に持ちディマスの指示を待つ。


「おい、それはなんだ?」


 ディマスは興味深そうに私の持つ銃を見つめる。


「もしかして魔動銃じゃないか? 魔力を弾として飛ばす銃だろ?」


 アージェンが反応した。『銃』で通じるようだ。


「はい、そうです。あまり使ったことなくていい機会だと思ったので使ってみようと思いました」


「コッテン、この距離からでも届くか? 威力は結構あるのか?」


 ディマスは知らないようで、あれこれ質問して来た。


「余裕で届きます。倒せる威力があるかは分かりませんけど……」


「今は倒せなくてもいい。フェリクスが経験不足だから少し時間をかけて倒したいからな」


「は、はぁ……そうですか」


 私がいなくても大丈夫そうに見えるけどなんで雇ったんだ? 雇うお金がもったいない気もするけど、まぁそんなこと私が考える必要はないか。


「もしこの銃であっさり倒せそうなら魔ほ……魔術で戦いますね。それで私はどう立ち回ればいいですか?」


「今から説明する、みんなは分かってると思うが再確認だ!」


 指示の内容はシンプルだった。左右に2人1組ずつ別れてどっちかが攻撃を引き付けてる間に反対側から攻撃し、それをディマスの次の指示があるまで繰り返し続けるというものだ。

 余ったイブリンは周囲の警戒に回る。

 倒そうと思えばすぐ倒せるらしいけどフェリクスに経験を積ませるために敵の行動パターンを覚えさせるようだ。


「ま、もう1匹来る可能性はほぼないから私はその辺で横になってても問題は無いというわけだ。来たとしても私の心配は無用だ、あんな雑魚は私一人でも十分倒せるからな。さて、のんびり観戦でもするとしよう」


 イブリンは近くの木陰に移動し腰を下ろした。流石に横にはならなかった。


「よし、始めるぞ、位置につけ!」


 ディマスの掛け声にみんな動き出す。

 初めての私は同じグループとなったフェリクスの指示に従うことにした。


 戦闘が始まった。

 さて、作戦通り動いてみるとバガンスネークの頭が悪すぎるようで簡単に右往左往してくれている。

 しかし私の銃撃では何故かなかなか気を引き付けることができずパターンは崩れたりした。


 仕方なく魔法を使うことにした。とはいっても魔術に見えるように偽装はしないといけない。


 私が知ってるのはさっきイブリンが使った魔術だけだ。ファイアボールは火事になりそうなので他の2つを試すことになる。


 うろ覚えだけどレイニーなんとかとウォーなんとかという名前だ。

 どちらも水を飛ばす魔術で攻撃には向いてないように見えた。

 威力を調整すればもちろん倒せるほど強く出来るけど、バガンスネークの意識をこちらに向けさせるだけで良いので威力を抑えることにした。


 その前に魔法の名称はちゃんと発音できないと怪しまれると思うのでしっかり思い出すことにした。


 レイニー……後ろの部分はなんだっけ?

 まぁいいやアレよりはウォーなんとかの方が強そうだしそっちにしよう。


 ウォー……、ウォール……?

 ……いや違う。ウォーまでは合ってる。


「コッテンさん、お願い!」


 フェリクスの号令が掛かった。急がなきゃ!

 あ、そうそうウォーボーイ。そんな感じの名前だったか?


「ウォーボーイ」


 怪しまれない様に小声だ。名称が間違ってるかもしれないので聞き取りづらいように小さく発声した。魔術に詳しいイブリンの知らない魔術を使うと面倒事になりそうなのでがっつり聞かれないように気を付けないといけない。


 高速で飛んで行った人の頭サイズの水球はバガンスネークの顔面に直撃すると、数メートル後ろにその巨体ごと吹き飛ばし、地面に叩きつけた。


「おぉ、凄い威力だ」


 フェリクスとアージェンは感心するもののディマスは困惑の顔を向けた。


「コッテン、やりすぎだ」


「あ、すみません」


 次は弱くし、それがちょうどいい具合になり私の方に意識を向けさせることに成功。上手くパターンに嵌めることが出来た。

 

 それ以降は単調ながらも順調に進んだ。

 しばらく同じことを繰り返しているとフェリクスの攻撃で変化が起きた。

 胴体にある鱗が剥がれバガンスネークは一瞬だけ小さな呻き声を吐いた。


「よし、もう手加減はいいだろう。そろそろ本気出して倒すぞ」


 ディマスが大声でそう告げた後、私に顔を向けた。


「コッテンが倒してもいいぞ、やるか?」


 できるけどやらない。みんなの本気を見たいしそれにあまり目立ちたくない。

 断ろうとするとイブリンが名乗りを上げた。


「私がちゃちゃっと倒してやろう。退屈で少し遊びたいと思っていたところだ」


 イブリンはゆっくり立ち上がるとだるそうにバガンスネークにゆっくりと向かって行った。

馬顔バガン

スネーク

外見がそのまんまの安直なネーミングです。

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