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26 何かから逃げる魔物の大群

 * * * * *


「それにしても行方不明か……、もしかしたら強い個体のキメラがいるかもしれないな」


 アージェンが口にした行方不明というのは私達に仕事の引継ぎをする予定だった3人の冒険者達のことだ。


「あの3人なら並のバガンスネークくらい普通に倒せるはずだし、その可能性はありそうだな。仕事を放棄するとも思えないし、とりあえず俺達も気を引き締めないとな」


 フェリクスが気を引き締めようと言うけど緊張は感じられない。ちなみに馴れ馴れしい口調なのはアージェンに向かって言ってるからだ。

 

(行方不明のパーティは3名もいたんだね。危険そうだけど、私達は大丈夫なの?)


 ステラが不安な気持ちを私に零した。


(少なくともステラと私が命を落とす可能性はないから安心しなさい)


 自信を見せればそれだけで不安を払拭できるだろうと思っていたけど、ステラは自分以外のことも心配してきた。


(でもさ、もしかしたらイブリン達もいなくなるかもしれないんだよね? そう思うと……)


(そう不安に思ってたら何もできないよ。とにかく、ステラはお姉ちゃんみたいな冒険者になりたいならその不安も乗り越えないと)


(う、うん。そうだね。私、お姉ちゃんみたいになりたいから頑張る)


 不安は完全には消えないだろうけどこれで少しは気持ちが落ち着いてくれるといいな。

 

 さて、ディマス達の話に戻るとする。


「あーそれと、昨夜俺達の持ち場にバガンスネークが目撃されたらしい。行方不明の3人について何か分かるかもしれない」


 ディマスからそう告げられ、持ち場にキメラのバガンスネークが確認されたという区画に移動することにした。

 少し遠くから後をつけてくる謎の足音が聞こえているけど、ディマス達は気づいてないのか気にしてる様子はなかった。


 * * * * *


 持ち場近くまで戻ると大量の不思議な形をした生物らしきものがかなり遠くで忙しく動いているのを見つけた。


 遠いからかディマス達はその集団にまだ気づいていないようだ。


(ステラはアレ見える?)


(アレって?)


 ステラは目からしか物が見えない。私は体を動かしている時は目からしか物が見えないけど霊体の時は目じゃなくても物が見える。

 今は私が体を操作してるのでステラも私と同じものが見えている。なのにステラには遠くの生き物の姿は見えてないようだ。


 私はその生物の姿をよく観察してみることにした。


 パッと見た感じは鳥車ちょうしゃの客車部分に輪郭は似ている。

 大きさは人の腰くらいだろうか。遠いからサイズは予想だけど本物の客車と比べるとかなり小さそう。少しずつ近づくにつれて魔石のようなものが上部についているのが見えたので魔物だと確信した。


「みんな止まれ」


 少し遅れてディマス達も気づいた。

 私は今気づいた風を装い、あれが何なのかを尋ねる。


「あれは何?」


「あれはワゴーンという魔物だよ」


 フェリクスが答えた。

 

(ワゴーン? ぶふっ、犬の鳴き声みたいな名前だね)


 その名前の響きがおかしかったのかステラは笑った。


(本当にそう吠えたりしてね)


 私がそう言うとステラはツボに入ったのか大笑いした。


「なんであんなに大量にいるんですかね? あれも倒した方がいいですか?」


「あれは倒さなくていい、大量にいる理由だがおそらく――」


 私の疑問にディマスが答えようとするとワゴーンの動きがさらに活発になり、同じ所から何かから逃げるようにさらに現れ、数を増していく。


「また増えた、というか何か別のものも近づいてきてる?」


 私がそう言った直後、馬の顔の大きな蛇が小さな地響きを起こしながら勢いよく現れた。

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