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1 その幽霊の女エルフは体を欲している 3

(終わったよ)


(え、もう? あれ、いなくなってる)


 ステラは遺体がないことを不思議に思ってるけど、それもそうか。普通は残るもんね。

 なぜ遺体も消したのかといえば異常に気付かれるのを遅らせるためだ。消滅魔法を使えば血も一切残らず消滅する。


(苦しめるのが可哀想だから魔法で一瞬で消しといた)


(……そうなんだ)


 結構特殊な魔法なんだけどよく分かってなさそうだ。


(他の場所にも人がいるから、出来る限り消していくね)


 その後、急いで屋敷内を移動していく。


 こんな場所にいる人達がまともなわけがないのだから遠慮なく子供以外は見つけ次第消していく。一通り屋敷内を回った結果、歩いてる大人は1人も見かけなくなった。そしてその中に強いと感じた相手もいなかった。

 こうもあっさり上手くいったのは私の姿を見て子供だと油断してたからかもしれない。でも油断する方が悪い。


 さて、大人の姿が見えなくなったので子供を救出するために囚われている各部屋へ向かった。今なら邪魔もなく連れ出せる。


 と思っていたけど、肝心の子供達を連れて行こうとすると動かない子達ばかりだった。見つかったときのことを考えると怖くて部屋から抜けだせないのだろう。


「今死ぬか、後で脱走が見つかって死ぬか選んで」


 あまりしたくなかったけど鉄のドアノブを目の前で握り潰して脅すことで無理矢理連れ出すことにした。


 ステラを除くと子供は全部で8人。

 種族の内訳としては容姿に特徴のない人間の子、猫耳で細長い尻尾の子、兎耳の子がいた。


 性別は女が多かった。

 ステラより年上っぽい兎耳の女の子が長めの刃物を持ってきたけどこの屋敷周辺は魔物や動物がいるため良い判断だと思う。


 ちなみに私の生きていた時代には人種族は人間とエルフしかいなかった。


 幽霊になってからどっかの村で猫耳や犬耳の種族を見たことがあったので目の前の子供達を見ても驚きはない。

 ちなみに種族名については一切知らない。

 でも今は幽霊の時と違い自由に話が出来るのでまずはステラに聞いてみることにした。


(猫耳の子はなんていう種族なの?)


(猫耳の子は猫人族ねこびとで、兎耳の子は兎人族うさびとだよ)


 凄く分かりやすい種族名だった。ただひねりが無さすぎる。誰が名付けたんだろう。

 分かりやすいからいいけども。


 子供達を引き連れて屋敷の外に出ると延々と続く樹々が視界を埋めつくした。分かりやすく言えばここは森だ。

 昼でも夜のように暗いここなら悪いことをするにはうってつけの場所なのだろう。さらに危険な魔物や動物達もいるので脱走対策も兼ねてこんな場所に屋敷を作ったのかもしれない。


 私はさきほどまでいた廃墟のように寂し気な2階建ての屋敷を見上げる。


(この建物壊してもいいかな?)


 隅々まで探したし、もう中には人はいないだろう。いたなら子供を連れ出すときに気づかれてたはずだ。


(いいと思う! こんな場所なくなった方がいい!)


 ステラはノリノリだ。許可を貰ったし少し大きめの魔法をここで試すことにしよう。


 本気を出せば森が消失しそうなので手加減するつもりだ。

 手加減とはいえ、それでもこれから使う魔法は規模が大きく危険なので、子供達を念のために私よりも後ろに下がらせる。


「音が凄いから耳は塞いでね」


 私は子供たちにそう指示する。全員コクコクと頭を縦に揺らした後、しっかりと耳を塞いだ。

 私は右手に魔力を集め、それを屋敷に向かって放った。


 青白く光る火の玉は屋敷にぶつかる寸前で建物の倍以上の高さの大爆発を起こした。

 一瞬視界を白く染め、遅れて土煙が視界を覆う。少し遅れて体を震わすほどの轟音が耳を突き刺した。


 土煙が晴れると目の前には広範囲に散らばった瓦礫と、屋敷があった場所には平たい地面が姿を表す。

 周囲の木々は折れ曲がったり葉が吹き飛んで寂しい姿を晒した。


(ステラ、これでどうかな?)


(凄い! 完璧だよ! ざまぁみろだね!!! デシリアさん、良かったら私に一生憑いててください!)


 ステラってこんな調子良さそうなこと言う性格だったの? さっきまでと違いすぎるんだけどなんか不安になって来たな。

 

 いや、でもきっとそれだけ鬱憤が溜まってたとかで一時的なものだよね。


 そんなステラとは対照的に子供たちは怯えた様子でこちらを見ていた。

 そういえば脅して連れて来たんだった。

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