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100万年後に幽霊になったエルフ  作者: 霊廟ねこ
3章 小さき者の大きな力
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 * * * * *


 レイラの誕生日会から約1週間が過ぎ、その時の記憶は薄れ出していた。

 ホームルーム前の朝の教室は生徒が集まり、仲の良い者同士で雑談したり、勉強したりと各々で時間を潰している。

 ステラは一人何もせず机に伏して窓の外の青空を見つめていた。


(そろそろレイラ、登校してくるかな?)


 ステラは毎日のようにそんなことを私に尋ねる。

 レイラとオリベルの関係を探りたいというのにレイラはまだ姿を見せていない。

 彼女に見せるためのオリベルの私物を毎日持ってくるのも面倒なためさっさとオリベルとレイラの関係をハッキリさせたいところだ。


(ねぇステラ。なんでレイラは登校して来ないんだろうね。病院行けば精神異常も身体の怪我や病気も治せるんでしょ? 少なくとも元気なのは間違いないよね)


 エリンプスの病院は貧民であっても通えるほどに費用が掛からない。レイラが元気なのは間違いないだろう。亡くなったのなら先生の方から生徒へ報告があるはずだ。

 なので単にレイラが学校へ通いたくない、というわがままな理由だと私は考えた。


 ホームルーム直前、ようやくレイラがいつもの取り巻きを左右に連れて登校してきた。クラスメイトの視線が久々に姿を見せた彼女に注がれる。


 レイラは何人かに弱々しく挨拶を振りまいていく。そしてステラと目が合った。すると微かに目を見開き驚く素振りを見せた後、徐々に安堵の色に染まっていった。


(おかしい。ステラを見て驚くのはステラを攫う指示を出した黒幕ならそういう反応も分かるんだけど、その後の安心した表情は何?)


 誕生日会の後、しばらく姿を見せなかった間にステラに関することで何かあったのか?


(デシリア、オリベルの持ち物見せて反応確かめれば分かるんじゃない?)


 ステラがそう言うのでレイラに話し掛けたかったけど、席が離れてるため休憩時間にでも声を掛ける事にした。


 * * * * *


「レイラ!」


 休憩時間になったのでステラが心配そうに声を掛ける。


「な、なに?」


 戸惑いを見せる彼女は不安げに取り巻きの顔を窺う。

 右の子がミキ、左がヒラリー。取り巻きは余裕のないレイラの様子を不思議そうに見るものの特に何かを言う訳でもない。何も事情を知らないようだ。


 ステラと私はレイラの不自然な態度に心当たりはある。レイラの動揺はオリベルが重要な存在であり、彼女の前に姿を現さなくなったからだろう。


 それとも攫ったはずのステラが平然と学校にいるからなのか?


「どうしたの? レイラってこんな感じだったっけ?」


 ステラは何も知らない振りをして普通に問いかける。


「な、なんでもないわ……」


「あのさ、今日の放課後付き合ってもらえる?」


 ステラの誘いにレイラの表情が再び硬くなった。彼女は言葉に詰まり目を泳がせる。


「え? あ……忙しいから無理かな」


 断る理由は学校が終わった後に習い事をしてるからというのもあるだろう。

 ステラもその事は知っている。けどもどうしても付き合って欲しかった。

 ステラはそれなら、とオリベルの持ち物を見せることにした。


「これが何か分かる?」


 オリベルの持ち物――ブレスレットなどの小物――がジャラリという音を立てる。


「え、あ、な、なんで?」


 明らかに何か知っているという反応だ。


「そうか、知ってるんだね」


「う……ちょ、ちょっと来て」


 レイラはステラの手を引っ張ると取り巻きを放置して人気ひとけのない所へ連れ出した。


 * * * * *


「なんでステラがそれを持ってるの?」


 レイラの声から焦りが感じられる。

 ステラは本当にレイラが黒幕なのかも、と動揺を心の中で見せ始めた。


「それを知りたかったら放課後付き合って欲しいなぁ……」


 ステラは少し悲しそうに告げた。今まで酷い事をしてきた相手かもしれないというのに怒りや憎しみが見られない。

 勉強会でせっかく仲が近くなって嬉しそうにしてたし、手に入れた友達とも言える存在を失うかもという不安が心をぐちゃぐちゃにしてるのだろう。


「……分かったわ。付き合ってあげる」


 レイラは睨みながらそう答えた。

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