133 レイラの誕生日会に向かう 2
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開きっぱなしの両開きの扉を通ると広くて鮮やかな空間が視界に映し出された。
「すっごーい!」
まだ食器しか置かれていない白いテーブルがいくつも並べられ、壁は華やかで温かみのある花飾りなどの装飾がレイラの誕生日を祝福していた。
テーブルにはクラスメイトの半数が来ているけどその中にラズリィとセシルの姿はない。
私はふと疑問に思いステラに尋ねる。
(もしかしてクラスメイト全員招待されていたりするのかな?)
(今までは仲の良い子しか招待されてなかったみたいだしそうじゃないかな?)
クラスメイト以外にもレイラの学校外の知り合いなのか見慣れない子供達も来ていた。
(私は何すればいいんだろう?)
特に誰からも指示をされていないステラはクラスメイトが固まってる場所に行き、ただボーっと突っ立つ。
何をすればいいか分からないし、勝手に椅子に座ってもいいのかも分からないよう。
クラスメイトかその辺を行き来している大人にでも聞けばいいものをそうする気配はない。
(あ、レイラだ)
ステラの視線の先には遠くでレイラと困惑した様子の大人が会話をしていた。
「お父様とお母様はまだ来てないの? 遅すぎない?」
レイラは不満そうに尋ねた。
「あ、えぇと、急遽大事な用事が入ったのかもしれません」
「今まではそんなことなかったのに!」
「申し訳ありません」
「私こそ忙しいのに呼び止めちゃってごめんなさい、仕事に戻っていいわよ」
どうやらレイラの両親は出席できないかもしれない。
今までは出席してたらしいけど、今回は運悪く外せない用事でもあったのだろう。
その話が恐らく聞こえていないであろうステラは挨拶でもしようと思ったのかレイラへ近づいていく。
すると警備員が手を伸ばし道を塞いだ。
「ここから先は特別な許可のある方以外の立ち入りを控えてもらってます」
「ちょっとレイラに挨拶がしたいなって思って。あ、それとどの席に座ればいいか分からないのでどうすればいいか教えてもらってもいいですか?」
警備員は近くにいた係員を呼び、係員はステラの疑問に答え始める。
「レイラ様への挨拶は後でみんなの近くを歩くのでその時でいいですか? それと座席は指定されたテーブルならどの席でも大丈夫ですよ」
係員に言われステラは指定されたテーブルに向かうと同じ学校のクラスメイトが席に着いていた。
このテーブルはステラと同じ学校の生徒だけが座れるようだ。
ステラはクラスメイトから距離のある席へ腰掛けた。
誕生日会はまだ始まっていないため暇なステラは会場入口の方を見つめ始めた。
少しするとラズリィが入って来た。
ラズリィはこちらへ目を向けるもののすぐに逸らし、ステラとは別のテーブルに着いた。
(ラズリィは事件に巻き込まれたくないからステラから離れたんだったね)
(もう私は友達は作らない方がいいかもね。冒険者も一人でやった方がいいかも?)
(ケミーは一緒にチーム組みたがっていたけどいいの?)
(良くないよ、良くないけどしょうがないじゃん。ケミー落ち込むだろうな)
ステラは表情には出してないが落ち込んでるのが分かる。
(もし本当にレイラが黒幕だったら、私がセシルから離れれば狙われることはないんだよね?)
(卒業までは難しいんじゃない? せっかくセシルに色々してもらったのに突き放すようなことはできないでしょ?)
(セシルに事情を話せば分かってくれるかも)
セシルと仲良くすると危険な目に合うから距離を置いて欲しい、なんて伝えるとセシルは女に近くのを躊躇するようになるだろうな。
(セシルとステラが離れても、私達の知らない所で誰かが被害を受けるというのは続いて行くんだろうね)
ステラがいなくなっても第2、第3のステラが現れるのは想像に難くない。その度に黒幕は邪魔者を排除しに掛かることだろう。
(そうなんだよね、どうしたもんかなぁ……)
黒幕が改心するか、警察に捕まるかくらいしか収める方法はなさそうに思える。
そのどちらも私とステラで行うのは難しい。
誕生日会が始まるまで適当にステラと雑談をしていると続々と人が増え、半分程埋まってたテーブル席がさらに埋まっていく。
セシルが入口から入って来るのが見えた。
他の子達よりも1ランク上の恰好。人気者である彼は会場にいる多くの女子の視線を集めた。
彼はステラと目が合うと軽く手を上げてきた。ステラも同じように軽く返した。
セシルが向かったのはステラ達とは違う場所、レイラのいるテーブル席だ。
レイラのテーブル席にはセシル以外だと見慣れない子供達ばかりで、恰好からステラ達とは違う世界の住人だというのが分かる。
ということはセシルもそういうことなのだろう。なるほど、だから人気があるのか。
それから少ししてミレラが警備員の格好で誰かに付き添われて入って来た。ミレラはステラに近づくことなく壁際に配置された。
それが合図なのか、時間だったのかは分からないけどレイラの声が大きく響き始めた。
「あー、あー。えー、時間になりましたので私、レイラの誕生日会を始めたいと思います」
ようやくレイラの誕生日会が始まった。




