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100万年後に幽霊になったエルフ  作者: 霊廟ねこ
3章 小さき者の大きな力
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130 招待 1

 * * * * *


 今頃はステラの姉はカタリナさんと試合をしている頃だろうか。


 私はあまりに退屈なのでそんなことを授業中に思い出していた。


 先生が喋りながらホワイトボードに文字や雑な絵を描いていき、ステラは必死にメモを取っていく。

 退屈なのでステラと話をしたいものの邪魔をしてはいけないので我慢我慢。


 しばらくすると授業終了の音が鳴り響いた。と同時に昼休憩、つまり昼食の時間が始まる。


 唯一ともいえる友人だったラズリィはもう食事には付き合ってくれないためステラは一人寂しく食堂に向かう。

 その途中でセシルから声が掛かった。


「昼食後の勉強はどうする?」


 セシルと勉強会を始めてからは以前よりも多くステラを気に掛けてくれるようになった。


 彼の声のトーンや態度は他の女子と接してる時と違いはないので恋愛感情は無いようにも感じられる。


 しかし声を掛けて来る頻度はステラに対してだけは少し多い印象だ。


 セシルにはその自覚があるのだろうか?


 ステラはセシルの問いにすぐさま返した。


「授業分からないことだらけだったから、今日もお願いしたいな」


「じゃあ後で図書室で待ち合わせな」


 セシルはそう言うとステラを追い越して食堂へ向かった。

 ステラも後をゆっくりと追いかけ食堂へ到着。

 席を確保し、一人で料理を口に入れ始める。


(昼食いつも一人で寂しくない? 次からはセシルを誘ってみたら?)


 私はなんとなく聞いてみた。


(男子と二人っきりだとみんなに変なこと想像されそうだから無理)


(じゃあステラがセシルのグループに混ぜてもらうってのはどう?)


 セシルも食堂におり、複数の男子とお喋りしながら昼食を取っている。ステラとは対照的で男女どちらにも人気があるようだ。


 ステラは異性はもちろん同性とも縁が薄い。


(向こうは男子たくさんいるし二人っきりにはならないでしょ?)


(男子の集団に混ざるの私には無理無理。というかデシリアがいるから一人じゃないし寂しくないよ)


(そっか、姿も見えないような私でも十分なんだね)


(十分ではないけど、声だけでも安心するよ。それにもうすぐ卒業だしそれまでの辛抱だよ)


(やっぱり寂しいんだ?)


(正直に言うと少しだけね、でもそれはいつも一緒だったラズリィがいないからだと思う。最初から一人なら寂しくなかったかも)


 私は食堂を見渡してラズリィの姿を探してみる。しかし見当たらない。


 食堂で昼食を取らなければいけないという決まりがあるわけでもないので別の所で取っているのかもしれない。


(食事中に気分が下がること聞いちゃってごめんね)


(気にしてないからいいよ、いつもありがとうデシリア)


 その後はステラが食べ終わるのをおとなしく見守った。


 昼食を終えたステラは図書室へ向かった。

 その途中でレイラに呼び止められた。レイラは取り巻き2名を引き連れている。


「ステラってセシルに勉強教えてもらってるんでしょ? 私も混ぜてよ」


 レイラといえばラズリィが『レイラはステラへ嫌がらせをしたり攫おうとした黒幕』と予想していたので警戒が必要だろう。

 とは言っても学校内だし今までレイラ自身が何かをしてきた証拠もない。犯行をバレないように動くだろうし、目の前にいる以上は警戒をする必要もないか。


 私はそのことをステラに伝えようとするけど、それよりも先にステラはレイラに答えた。


「いいよ!」


 ステラは嬉しそうに返事をすると頼みを受け入れるための条件を付け足した。


「いいけどセシルの代わりにレイラが私に教えてくれない?」


(ちょっ、ステラ?)


 警戒感が微塵も見られないステラに私は戸惑い、思わず名前を呼んだ。


(レイラが勉強教えてくれるかもしれないし、さっきも言ったけど男子と二人っきりってなんか慣れないんだよね)


(そうじゃなくってラズリィの言ってたこと覚えてる? ステラに嫌がらせの指示を出したのはレイラかもしれないって話)


(……どどど、どうしよう?)


 忘れてたようだ。


(どうもしなくていいよ、私がいるから大丈夫ということも忘れないでね)


(そうだね、なんか頼ってばかりでごめん)


(困った時はお互い様。その代わりたまには私の頼みも聞いてちょうだいね?)


 私がそう言った直後、レイラが先ほどのステラの条件に返事をした。


「いいわよ、私が勉強を教えても。でもセシルはどうするの?」


 質問の意図が分からずポカンとするステラ。

 勉強を教えてくれる人は誰でもいいためセシルにこだわる理由はない。むしろ女子が教えてくれる方がステラにとっては比較的気楽で都合がいい。


 返事に悩むステラをレイラは無表情で見つめ続ける。

 少ししてステラの口が開いた。


「レイラ達でも分からないところがあったらセシルに聞けばいいんじゃないかなぁ?」


 その返事が正解かは分からないけどレイラが気にしてる素振りは見られなかった。


「それもそうね。そのために混ぜてもらうんだもんね。じゃあ行こうか」


 レイラは小さな笑みを見せた。


 * * * * *


 図書室に着くとテーブルの椅子にセシルが座っていた。

 こちらの姿を見ると言葉を掛けてきた。


「ステラ、忘れ物はないか?」


「うん大丈夫。あの、レイラ達が――」


 ステラがレイラの名前を出すのと同時にレイラが喋り出す。


「ねぇセシル、そろそろテストがあるから一緒に勉強しない?」


 ステラと二人っきりの時間を邪魔されることに対してセシルは特に不満はなさそうに言葉を返した。


「俺は構わないぞ。でもレイラ達は俺がいなくても大丈夫じゃないのか?」


 なんとなくレイラ達にどっか行けと言ってるようにも感じる。

 顔には出てはいないけど子供だからといってなんにでも顔に出るというわけでもないのかな?


「勿論大丈夫、と言いたいところだけどこういう時ほど駄目だったりするじゃない? だから気を引き締めるためにちょっと違う環境に身を置いてみたいの」


「そうか、じゃあ時間ももったいないし勉強を始めようか」


 セシルがそう告げるとレイラと取り巻きがすぐさま動き、セシルを挟んで座った。

 ステラは賑やかなのが嬉しいのか笑みを浮かべながらレイラの隣の椅子に腰を下ろした。

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