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100万年後に幽霊になったエルフ  作者: 霊廟ねこ
3章 小さき者の大きな力
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127 ラズリィの隠し事 2

「言いたいことって悪い事、じゃないよね?」


 不安げなステラの問いにラズリィはすぐには返さず少し間を置いて頭を左右に振った。


「伝えたいことはステラを狙ってる黒幕の正体……に近いこと」


「黒幕? ラズリィは何か知ってるの?」


 ステラへ嫌がらせの指示を出したであろう存在についてラズリィは何か知ってるらしい。

 彼女は頷くと言葉を続けた。


「少しだけ、でも予想になっちゃうんだけど言わせてもらうね。ステラに悪戯した人達、みんな誰かの命令で動いてたはず」


「それは私もそうだと思ってるよ」


 私はステラをねたむ女子生徒が裏から指示を出しているのだと思っている。それほどのことが出来る生徒が誰かは分からないけど恐らく同じ学校の生徒だろう。


「でもみんな白状はしなかったんだよね? 誰の命令かなんて」


 そう、親にバレる方がマズイはずなのにみんな口を割らなかった。子供目線で見れば大人よりも一緒の時間が多い子供の方が怖いのだろう。


 それと全員が示し合わせたように似た時期にステラを標的にしてる以上は誰かの指示で一斉に動いてると考えるのが自然だ。


「ラズリィ、それは正体バラしたらどんな報復されるか分からないからだよね? 親に叱られる方が安全が保証されてる分まだマシなんだと思う」


 ステラの予想を聞いてなるほどと思ってしまった。

 子供同士は他人同士だ。血の繋がりのある親の叱責と違い、情け無用の罰が待っている。


「ステラはみんなに命令したのは学校の生徒だと思ってるよね?」


「え……それ以外は、ないんじゃないの? 言ってる意味が分からないんだけど。まさか先生がとか言わないよね?」


「そんな確証は持ってないけど、先生がそうじゃないとも限らないと思ってる」


「ワケが分からないよ。なんで先生が? あ、もしかして先生の子が学校にいるってこと?」


「いるかは分からないし先生の子がいたとしてもそれは関係ない」


「じゃあどういうこと?」


「私もよく分かってないし、言ってもよく分からないと思う」


「とりあえず聞かせて」


「予想でしかないから、そんな話だけ聞かされてもステラは困ると思うけどいいの?」


「一応聞いてみたい」


「分かった。じゃあ言うね、私の予想だとレイラが黒幕だと思ってる」


 レイラって社長令嬢のクラスメイトのあの子? まぁ、財力はあるのだろうし金の力でそれが出来ても驚きはしないけど。


 というか生徒が黒幕なら先生は関係ないんじゃ? 先生が生徒の命令で動いたというの?


「でも、レイラも嫌がらせをされてたような」


「それは、そうだね。でも証拠は無いけど、レイラが黒幕だと思う根拠はあるよ」


「聞かせて」


「実はさ……、ステラ」


「どうしたの?」


「ステラって夏休みに攫われたじゃない?」


「うん、……え、え? それもレイラと関係があるの?」


「……やっぱりさ、こんなこと知ったところで予想の域を出ないし何も解決には繋がらないよね。……ごめん、私、行くね」


 ラズリィは急遽中断してしまい走って逃げ出した。


「あ、ラズリィ待て!」


 ステラではなくミレラが追いかけ始めた。ステラはその後ろ姿をただ見つめるだけに留める。


(ステラは追いかけないの?)


(きっと知ったところでどうにもならない気がする。だってあの子私より頭いいもん、ラズリィが無理だと言うなら無理なんだよ)


 * * * * *


 走るミレラ。既に後ろにはステラの姿は見えない。


「ちょっと待てって」


 あっという間に追いついたミレラは強引には止めず何度も呼び掛けるとラズリィは疲れもあり足を緩めた。


「はぁ、はぁ、ミレラさん……」


「ステラはまた攫われそうになってたのか?! 私に知ってること全部話せ。なに、ステラには黙っておいてやる」


「ミレラさんに話したところで、どうせ解決できないですよ」


「うるせーな、いいから話せ」


 ミレラはラズリィの両頬をぐりぐりと引っ張る。


「いだだだだだ、はなずがらやめでぐだざい!」


 ラズリィが耐え切れず音を上げたのを見てミレラは手を離した。

 ラズリィは頬をさすりながらミレラを数秒ほど見つめると気まずそうに注文を付けた。


「あの、今から話す事を怒らないでいてくれますか?」


「は? ……分かった。そう言わないと教えてくれないんだろ?」


 よほど言いづらい事なのかラズリィは少し間を置いてからようやく言い出す。


「ステラは夏休みに攫われそうになりました。……その時、私はステラをおびき寄せるために協力させられました」


「お前にそれを命令したのがレイラとかいう名前の生徒だな?」


「ち、違います。私はお母さんに指示されたんです」


 ミレラは突然出てきた関係無さそうな存在に意味が分からず思考が止まる。


「……は?」


「私のお母さんは、レイラの親の会社に勤めています」


「言ってる意味が分からないんだが……」


「ドミニオンは知ってますよね? この町に住むものなら、いえ、世界中のほとんどの人が知ってる有名な小売店です。レイラの親が運営しています」


「お前のお母さんはそんな凄い所に勤めているんだな。で、だからなんだ?」


「多分ですが、レイラは自分の犯行を隠すために会社を通じて私のお母さんに命じたのだと思います。あれほどの大きな会社の令嬢なら財力や権力を駆使すればバレないようにすることも可能なはずです」


「いやいや、ステラを学校から排除するために一企業を動かしたという事になるぞ。ありえねぇだろ。ステラは権力者でもなんでもないただの一般人で何の力もない子供だ、いくら社長の娘とはいえわざわざ企業で総力を挙げて排除するわけねぇだろ」


「でも、私のお母さんが私に命令するときにこう言ってました。『上手く行けば会社での評価が上がる。断れば下がってしまう』って、どう考えても会社からの命令ですよね?」


 ミレラは視線を地面に落とし少し考え込む。


(何を言ってるんだこいつは? だがわざわざこんなことを伝えに来たのだから事実だろう。ラズリィはステラの親友だし、今回の話はステラのためを思っての行動なのは違いない。とはいえそんな話を聞かされたところで私もステラも困惑するだけだ。途中でステラに打ち明けるのをやめたのも納得できる)


 視線をラズリィに戻す。


(いや、もしかしてラズリィはお母さんのことが嫌いなのか?)


 ミレラは母のアンネリーが嫌いだ。だから周囲への母のイメージを悪くしたいという想いがあり、ラズリィも同じなのでは? と考えてしまった。

 ミレラは流石にそれは違うとは思いつつも一応確認することにした。


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