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100万年後に幽霊になったエルフ  作者: 霊廟ねこ
3章 小さき者の大きな力
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125 嫌がらせ 2

 * * * * *


 翌日、教室に入るとクラスメイトが既に一人登校していた。

 その女子はステラの姿を見ても特に挨拶をするわけでもなし。

 ステラも声を掛けようとしない。


(声をかけないの? 同性の友達が出来る良い機会だと思うけど)


 私がこの町に来てから把握してる限りだとステラの友達と言えそうなのはラズリィと同好会の子達だけだ。

 いや、ラズリィはもう友達とは呼べないのかもしれない。


 今、教室にいる女子が誰かと一緒にいる姿を私は目撃したことがない。もしかしたらステラと仲良くなれるかもしれない。


(あの子と今までずっと同じクラスだったから今更声を掛けづらいよ。それにどうせ半年もしたら卒業だし、別に友達を作りたいと思ってないし)


 ステラはそう言って拒否した。

 必要ないと言ってる以上無理強いはしない方がいいだろう。


 ステラは席に座ると微妙に表情が変化した。


(どうしたの?)


 私が聞くとステラは立ち上がり座面――椅子の腰を下ろす場所――に視線を向ける。

 そこには砂よりも僅かに大きな小石が散らされていた。


 ステラは咄嗟に教室内に一人だけいる女子に目を向ける。


「なに?」


 女子は視線に対して何も知らないとばかりにそう返した。


「私の席にこんな小石が置いてあったんだけど、何か知らない?」


「小石? 知らない」


 女子は不思議そうに否定した。


(ステラ、前に剣術同好会の同い年のボニーが言ってた『嫉妬で嫌がらせしてくる』とかいうヤツじゃない?)


(えぇ~? まさか~……)


 ステラは鞄を入れようと机の隣にある荷物を入れるための戸棚を開ける。

 そこには1通の手紙があった。

 綺麗な字で書かれた文をステラは小声で読み上げる。


「何のとりえもないくせにセシルに近づくな」


(やっぱり嫉妬の嫌がらせみたいだね。で、どうする? セシルと関わるのやめる?)


 ステラは手紙を丸め、ゴミ箱に向けて強く放り投げ、外れた。けど近くにいた女子が拾って入れてくれた。

 ステラは軽くお礼を言った後、私の問いに答える。


(以前の私だったらやめてたけど、今はデシリアがいるからやめないよ。言いなりになってばかりだと誰とも関われなくなるかもしれないし、それに勉強に困るし)


(もっとひどくなるかもしれないけど大丈夫?)


(もし嫌がらせが続いたら犯人見つけて10倍にして返してやる)


 今日を起点に毎日のように嫌がらせは続いた。


 小石を置かれる以外にも徐々に物が増えていき、机にはステラとセシルを表現したらしい落書きが描かれたり、ホワイトボードにステラという文字が大きく書かれたりした。


 ただし、犯人は直接接触するようなこともなかったため誰がやってるのかは分からなかった。


 * * * * *


 最初の嫌がらせから1週間。

 この日も止むことは無く続いていた。


 ステラの机の横の戸棚を開けると透明な袋に包装されたカビの生えたパンが出てきた。


(今日も戸棚にゴミが入ってるね)


(あのさデシリア、前にも言ったけど戸棚じゃなくてロッカーって呼んでくれない?)


 ちょっと前にこれを棚という言葉で呼んだ途端、分かりづらいから直してと言われていた。家では棚という言葉を使ってるはずなのに何が違うというのだろう。


(ごめん。でも私思うんだけど、棚でも通じるならどっちでもいいんじゃ――)


(昔はそれで通じたかもしれないけどみんなこれをロッカーって呼んでるの。とりあえず教室のこれはロッカーって呼んで! あ、まだ何かあった)


 カビのパンを退かすと隠れていた手紙が現れた。それには「結婚おめでとう」とだけ書いてあった。


 それを見たステラは気持ち悪そうに顔を歪める。


(だんだん酷くなってきてるね)


 私はそう呟くけどステラは特に何も言葉を返さない。

 カビのパンをゴミ箱に捨てたステラは決意した。


(明日はもっと早く登校して犯人捕まえてやる!)


(ステラ、明日は休みだよ)


 明後日は今日より早く登校することにした。


 * * * * *


 休みが明け登校日。

 授業開始の1時間前――朝の9時前後に登校したステラは教室に入り、自身の席に向かう。

 既に誰かが来ていたようで荒らされた後だった。


「なんなのさ!」


 苛立ったステラは椅子を軽く蹴飛ばした。


「いったぁ~……」


 私はふと気配を感じ、その方向である窓へ視線を向ける。


「にゃ~」


 窓の外には三毛の兎猫ラビキャットがいた。いや、この見覚えのある顔、模様、体格、これはチッピィだ。

 私はそのことをステラに伝えるとチッピィに近づき窓を横に引いた。


「チッピィ、こんなところで何してるの?」


 チッピィの頭を撫でながらステラはそう尋ねると、チッピィは無表情のまま口を動かさずに答え始める。魔法による音声だ。


「ステラが嫌がらせで困ってるって聞いたから私にも何かできないかと思い、ここで見張っていました」


「じゃあ誰がやったか見た?」


「はい、ですが残念なことに名前が分からないのでどう伝えればいいのか分かりません」


 だとするとチッピィを連れながら犯人の顔を探さなきゃいけなくなるな。

 でも兎猫という珍しい動物を抱えながらだと目立ってしまうので避けたいところだ。

 私が方法を思いつかず悩んでいるとステラはチッピィにこう言った。


「じゃあ家に同学年の全員の顔写真の載ってるアルバムがあるから、帰ったら教えてちょうだい」

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