124 いらないものほど自然と集まる 2
セシルと勉強を教えてもらう約束をしてから2日が経過し、日曜日のこの日は剣術大会だ。
場所は町民体育館という所で行われ、エリンプスの各地から集まった人達が出場する。
同好会で使ってる建物よりも大きく、2階の観客席も結構な人で賑わっている。
ステラは小学生の女子の部という小学生以下の女子しかいないグループに出場する。
そして試合が始まった。
* * * * *
「やったぁあああああ!」
ステラは大声をあげた。
自身の予想した2回戦敗退を覆し、3回戦に進出を決めたからだ。
「おいおい、たかが2回戦を勝ったくらいで喜びすぎだろ」
「失礼だぞオウロン。ステラは初めて2回戦を突破したんだ。喜ぶのも当然だろう」
ボニーはオウロンの小馬鹿にした態度に対し、苛ついた様子を見せる。
ステラはそんな二人を放置し観客席に目を走らせる。
目的のものを見つけるとそこへ手を振った。視線の先にはルイザ、ケミー、キディアの3人がいた。
その3人もステラに振り返す。
ケミーは私はここだと言わんばかりに大きく動き、ルイザとキディアは控えめにしていた。
実はセシルの姿も観客席にあったのだけどステラは気づかなかったようだ。
伝えると不機嫌になりそうだから黙っておくことにした。
「なんだか3回戦も勝てる気がする!」
そう意気込むステラだったけど3回戦はいい所まで行って負けてしまった。
* * * * *
その日のうちにステラ達の大会は終わった。
同好会の中からは優勝者はいなかった。
しかしほぼ全員が前回よりも成績が良かったらしく喜んでいた。
町民体育館の玄関の外、普段着に着替えた同好会の子達は先生が来るのを待っていた。
「ボニー、ちょっと友達の所に行ってくるね」
ステラは少しくらいなら大丈夫だろうとボニーに声を掛け、ルイザ達の元へ走って向かった。
ステラの姿を見て最初に声を発したのはケミー。
「ステラちゃん!」
その大声の後、ケミーはゆっくりとステラの耳元に顔を近づけ――
「……剣術はあんまり強くないんだ?」
怪訝な顔でぼそっと、そんなことを言い出した。
普通なら怒ってもおかしくない言葉に困惑するステラ。
代わりにとキディアがケミーの頭を軽く叩く。
「失礼でしょケミー!」
「いてっ」
ステラはその様子を見て笑った後、強くない理由を説明した。
「ケミー、剣術大会では身体強化や魔法が使えないから、それを封じられたら普通の子供と変わらない私はこんなもんだよ」
「なるほど、じゃあ私でも剣術大会でならステラちゃんに勝てる可能性があるんだ?! 頑張るぞおおお!」
「あはは、頑張ってね。それと応援ありがとう、ケミー、キディア!」
ステラはケミー、キディアと順に見た後、最後にルイザを捉える。
「ルイザちゃん! 私、初めて2回戦突破できた! これもルイザちゃん達の応援のお陰だよ!」
「何言ってるの。勝てたのはステラの努力の賜物でしょ。でも、そう思ってくれたなら来た甲斐がありましたわね」
ルイザは照れ臭そうに返す。
「私は先生の車で帰るから、ルイザちゃん達は先に帰ってもいいよ」
ステラがそう言うとルイザは少し残念そうな顔を見せた。
「良い結果みたいですしお祝いをしてあげたかったのですが、それは来週にしてあげるのですわ」
そしてルイザ達の姿は少しずつ遠くなっていった。
ステラは同好会の集合場所へ戻ろうとする途中、セシルの後ろ姿に気づき追いかける。
「セシル! 待って」
「気づかれちゃったか、来るなと言われたのにこっそり観に来ちゃった。ごめんな」
気まずそうにセシルは謝る。
「そんなことはいいよ、私の応援に来てくれたんでしょ? ありがとう!」
3回戦までいけて上機嫌なステラ。
約束を破られたことよりも2回戦を突破できた試合を見せられたことが嬉しかったようだ。
「あと1回、剣術大会あるからその時も良かったら応援に来てよ!」
そう言われたセシルは少し嬉しそうに見えた。
「もちろんだ。ステラ、明日また学校でな」
「うん」
ステラはセシルの背中を見送った後、先生の元へと戻った。




