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100万年後に幽霊になったエルフ  作者: 霊廟ねこ
3章 小さき者の大きな力
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123 夏休み最終日は賑やかに終わる 2

 * * * * *


 10分に渡る試合の結果はステラの圧勝だった。


「疲れたぁ~~っ!!!」


 ケミーは大声のあと防具を脱ぎ散らかし、床に寝転がった。


 そういえばケミーは体力があまりないんだった。


 剣術で体を動かしてるとはいえ1カ月では体力も技量もステラに追いつくのは流石に無理なのだろう。


 ステラはまだ余裕そうにケミーを見下ろす。


「始めて1カ月程度の相手に負けるわけにはいかないよ、それが年上のケミーだとしてもね」


「はははっ、勝てるとは思ってもないよ。どうだったかな私の実力は?」


 悔しさのかけらも見せないケミーは興味深そうに尋ねる。

 代わりにルイザが答えた。


「私より上手に見えましたわ。じゃあ次は私とお願いしてもよろしいかしら?」


「次はルイザちゃんとの番だったね。ごめんだけど、今とっても疲れてるから休んだあとでいいかな?」


「仕方ないですわね、それでも構いませんわ」


 ルイザは少し不機嫌そうな顔をしたあと楽しみなのかすぐ口元をニヤリとさせた。

 その様子を見てるとカタリナの声がこちらへ飛んできた。


「ステラ、私ともちょっと剣を交えて見ない?」


「え? えーっと……」


「3年近く剣術やってるんでしょ? どれほどのものかちょっと興味があるんだよね」


「いいけど、私って3年やってる割には弱いですよ?」


「それならそれで構わないよ。ケミーとの比較がしてみたいだけだから」


「分かった、やってもいいですよ」


 カタリナは試合場の枠内に寝転がるケミーを抱えると、壁際に運んで優しく置いた。


「ケミーちゃん、ちょっと剣を借りるね」


 そして剣を借りると試合場の中央付近に戻り、構えた。

 防具なしのカタリナを心配したステラは促すつもりで確認した。


「あの、防具は付けないんですか?」


「そうだね……私に怪我を負わせようと思ったらその防具を破壊できるくらいじゃないと無理だけど、ステラはそれほどの力があるのかな?」


「いえ、ないです」


「だよね。でもステラは念のために防具をちゃんと着けてよ?」


「当然だよ、防具無しだったら試合しないから」


 防具を既に付けてるステラはそう返すと枠で囲まれた試合場の中央付近に移動し、剣を構える。

 正面にはカタリナも同じく剣を構えている。


 その試合場の線の外からルイザの小さい声が入って来た。


「ねぇケミー、ステラとカタリナさんの試合を見なくてもいいのかしら?」


「よくない! 見る!」


 寝転がっているケミーはガバッと勢いよく起き上がった。

 そしてステラに応援の言葉を投げてきた。


「ステラちゃんがんばれー!」


「……ケミーちゃん、私にはないの?」


 カタリナのなんとなく圧の籠った声が響く。


「もちろんカタリナちゃんもがんばれー!」


「ありがとう!」


 カタリナはケミーの方を向き、嬉しそうな声を返した。


 子供っぽい人だな。


 カタリナは深呼吸をした後、ステラに向き直る。


「ステラが開始の合図をお願いね」


 ステラは頷くとカタリナの剣に自分の剣を軽くぶつけた。


 * * * * *


 試合結果はカタリナの完全勝利。ステラは1点も入れることができなかった。


 内容はステラが攻めまくるもカタリナが全て防ぎ、しかしカタリナの攻めはかなり手加減してたのかステラがほぼ全て対応できるレベルのものだった。

 結果は1対0で終わり、その1点は本気を出したのかステラが全く反応できずに取られた点だった。


「ありがとうねステラ。ケミーちゃんよりは全然強かったよ」


「カタリナさん強すぎです」


「まぁ、大人だし、ステラ位の頃からずっと剣術に触れているからね。だから君も続けていれば私のように強くなれるよ、絶対に。私が保証する」


 カタリナは笑顔で言った。でもその笑顔からは微かに寂しさを感じる。幼い頃の事を思い出して懐かしくなったのだろう。


「う~ん、そうかなぁ?」


 ステラは剣術同好会の中でも下位であるためそう思うのも仕方がない。


「まぁ今の君が信じられないのも無理はないかな。私も小さい頃は色々な人にそんな感じの事を言われたけど信じられなかったからね」


「まぁ頑張ってみるよ!」


 ステラは現状に特別不満を感じさせない明るい声で答えた。


「カタリナちゃん! ルイザちゃんとやるから審判お願い!」


 ケミーの体力が戻ったところでケミーとルイザの試合が始まった。

 試合結果はルイザの勝ちだった。


 * * * * *


 孤児院でケミー達と別れ、ご機嫌なルイザと対照的に苦悶の滲むステラは共に帰り道を進む。


「学校が嫌だからってその顔は大げさじゃないかしら?」


「ルイザちゃんは長~い休み明けの学校に行くときの絶望を感じたことないの?!」


「私は学校には行ってないからその気持ちは分からないのですわ」


「え? 学校も行かずに冒険者ってやっていいの?」


「学校には行ってないのですが、魔術士ギルドで小学校レベルの教育は受けたので小卒の資格は持っているのですわよ」


「それって学校とどう違うの?」


「さぁ? 少なくともそこは学校とは呼ばれてなかったので違うんじゃないかしら。あ、ケミー達って学校には行ってないみたいですし、私の所もそんな感じかもしれないですわね」


「へぇ……。あ、そうだ今度、私の学校を見てみない? 学校がどういう場所か1度くらい見てみるのも良いと思うよ」


「え? でも部外者の私が入るのはマズいんじゃ……」


「許可貰えれば入れるよ、たまに子供の学校選びのために見学する大人の人達いるから大丈夫。申し込みたいなら私も一緒に行こうか?」


 それを聞いたルイザは悩んでるのか唸る。


「そう、ですわね。では興味が向いたらチッピィに伝えますのでその時にお願いしますわね」


 ステラはその日が来るのを期待しながら2学期を迎えた。

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