17 17歳だ 1
「お、来たな。その服で行くのか? そんなんで大丈夫か?」
待ち合わせ場所である冒険者ギルド入口付近の待合室。
キメラ討伐のために買った服で来たのだけど、ディマスは心配そうに聞いてきた。
「こんなんで大丈夫だよ」
今着ている服は猫耳をかたどったフード付きの灰色のローブでサイズは子供用の普段着だ。
戦うことを想定したものではなく魔法使いになり切るための遊びの服らしい。
なので魔物やキメラの討伐といった場所には明らかに不向きと思われる。
ちゃんとした丈夫なものが欲しかったけど子供の冒険者用というものは需要が少ないのかこんな場所では売ってなかった。
私にとっては命に拘わるほどの差はないので、こんなものでも十分だけど。
「それよりもこの服装は目立つと思う?」
優先したいのは目立つかどうか。特に孤児集団の一人と気づかれないようにしたい。
「いや、目立たんな。地味。猫耳みたいなのは少し気になるが魔術士ランクが高い人はそんな感じのをよく着てるぞ」
服は大丈夫そうだ。でもディマス達との身長差で多少目立つのは避けられないか。
とりあえず冒険者だと分かるようなそれっぽい服にしとけばいちいち詮索はされないだろう。
「ちょっと触ってもいいか?」
ディマスは触る場所を指定せず聞いてきた。
「どうぞ」
私は猫耳が気になったのかと思い頭を下げる。
「いや、そこじゃねぇよ。袖だよ」」
ディマスは袖をつまみ、すりすりと指を軽く動かす。
「……これは駄目だな。薄っぺらすぎて簡単に怪我しちまうぞ。まぁ高ランクの魔術士らしいしそう簡単には怪我はしないとは思うから大丈夫だろうけど」
「大丈夫大丈夫。というか子供用のまともな装備なんてなかったし。私にとっては見た目が良いかが重要で実戦に耐えられるかは気にしてないです。危険だからって今から断ってもいいの?」
「お金は出したんだし、今更断られると困る」
「安心して、断るつもりは無いよ」
「お前は魔術士だし後衛でも問題は無い。前衛の俺達ができるだけ危険が無いようにはしてやるよ」
「ありがとう。それで、いつ出発するの?」
「仲間が全員揃うまでその辺の椅子に座って待っててもらえるか?」
私はディマスから少し距離をあけ、空いてる椅子に座った。
ディマスの仲間は他に2人いたけど、まだ来て無いようだ。
「えーと、そう言えばお前の名前はなんだったか。コルセットだっけか?」
「私? 私の名前はデシ……じゃなかった、ステ……じゃなくて」
「どんだけ名前があるんだよ」
3つだね。デシリアに、ステラに、昨日もう1つ増えた。
ここ以外じゃ使わない名前だろうけど。
「えーとリットン? だよ?」
「なんで疑問形なんだよ、自分の名前忘れたのか?」
たしかそんな名前だったはず。
(コットンだよ!)
名付けたステラが切れ気味に言って来た。。
「あー訂正訂正、リットンは違います。コットンです」
昨日1回聞いただけの名前だし忘れてても仕方ないよね。
「ああ、コットンって言ってたな。今日から少しの間よろしくな。仲間が集まるまで悪いけどもう少しだけ待っててくれ」
そう言われたので待つことにした。
ある程度時間が経ちディマスが徐々にイライラし始め、10分が過ぎると溜め込んだ怒りが爆発した。
「あああああ、おっせぇ! またかよ、あの女!!」
女? 昨日は男2人だったはずだけどもう1人いたんだ。
「悪いがコッテン、ちょっと様子見てくるから待ってろ」
さっき名前教えたばっかなんだけど、もう間違えてるよこの男。




