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100万年後に幽霊になったエルフ  作者: 霊廟ねこ
3章 小さき者の大きな力
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120 勝たないと出られない部屋 3

本当は今回の分も前回に入れる予定だったんだけど

投稿直前に修正しまくってたら文字数ちょっと多くなったので分けました。

 椅子はブラッドの振った腕に弾かれ壁にぶつかった後、ガランガランと音を鳴らし床を転がった。


「あの椅子をあれほどの速度で投げれるとは子供にしては異常だな。だが俺は冒険者ランクA、大人の中でも上位に入る実力だ。異常とはいえ子供程度が勝てると思うなよ」


 ブラッドの挑発に対し私は何も答えず、そして急いで攻めることなく特に意味も無くゆっくりと近づいていく。

 相手に動きはない。


 さらに近づき手を伸ばせば届く距離まで迫るとブラッドは怪訝そうに口を開いた。


「ゆっくりと近づいて何を企んでいる?」


「遠いより近い方が攻撃を当てやすいじゃない? ほら」


 私はブラッドの胸辺りに目掛けて軽く腕を振った。

 しかしあっさりと躱され風を切る音が響く。


「この程度で仇とやらを取るつもりか?」


 どの程度で仇が取れるかは分からないけど、手加減しすぎなのは分かった。

 でもあっさりと決着をつけるつもりはないので問題ない。すぐ終わらせてしまっては被害にあった人の苦しみの量とは釣り合わないだろうからね。


 だから時間を掛けて精神的に追い詰め、苦しめてから終わらせるつもりだ。


「子供を攫う以外のことだとどんなことをするの?」


 私は挑発を無視し質問で返す。ブラッドは無視された事は気にしてないようで淡々と答えた。


「出来る限りの事はするぞ」


「人を殺すことも?」


「当然だ、流石に命を奪うような依頼は少ないがな」


 今は人が死んでも蘇生が可能な時代。蘇生には死んだことを証明する必要がある。彼らはそれが出来ないようにどこかに遺体を隠すのだろう。

 じゃないと悪事が露呈するからね。


「少ないという事はやったことあるんだ?」


「そう言ったはずだが?」


「蘇生されたらバレるんじゃない?」


「バレるようなヘマをするわけないだろ? 死体を誰も見つからない場所に隠すだけだ。この話は子供には刺激が強いんじゃないか? あまり知らない方が幸せでいられるぞ、もう聞こうと思わない方がいい」


 元々こいつらを消す予定だったけど、この話を聞いてよりその思いが強くなった。


「殺される側の気持ちを味わわせてあげる」


「お前一人で俺達をか? 笑わせてくれる」


 そう言いつつブラッドは笑わない。


「でも笑ってないじゃない」


 そう指摘しながら私はブラッドのお腹に向けてゆっくりと手を伸ばす。

 ついでにブラッドの顔に目を向けてみると彼の視線が手だけに向いてないことに気づいた。手以外の所も注意よく見てるところから戦い慣れてるのが分かる。


 しかしながら私の動きは隙だらけなので意味不明に見えてることだろう。私の実力を少しだけでも見せたし意味のない動きとは捉えてないはず。これから何が起きるのか頭をフル回転させてるに違いない。


 でも私は相手の対応次第で行動を決めようと思う程度にしか頭を回していない。


 ブラッドがどんな答えを見つけたのかは知らないけど私の手を掴んで止めることを選んだようだ。


「お前ら、今のうちに鍵を開けろ!」


 掴まれた瞬間、ブラッドが声を上げた。暇を持て余していたブラッドの部下が操作盤へ向け動き出す。

 しかし私はその様子にまだ手を出さずに静観する。


 操作盤の蓋は金属のような硬い謎の物質で強固に接着してあるので簡単には開かないだろう。蓋を破壊する手段を取った場合は中の精密機械である操作盤も巻添えで壊れてしまい、おそらく部屋から出られなくなるだろう。


 接着を剥がせる様な魔術があるなら別だけど……。まぁ、そういうのがあるのかの確認もさせてもらうとするか。


 ブラッドの部下は操作盤の蓋を必死に叩いたり引っ張ったりするものの開く気配が無い。


 魔術を行使する様子もないため少なくとも彼らは開けられる魔術はないようだ。


「ブラッドさんなら私の細工を解除できますか?」


 私はブラッドが解除できるか純粋に気になったので聞いてみると予想外の返事が来た。


「挑発したところでこの手は離さんぞ。そんなことを言うってことは今のお前にはもう打つ手がないということだな? あるというのならこの手を解いてるはずだ」


 そういえば手を掴まれてたんだった。

 なんか気持ち悪くなってきたな。さっさと外したくなってきた。


「あ、いや、そういうことじゃないけど、まぁいいか」


 言われた通り手を解くことにしよう。

 さっきよりも電撃を強く放って痺れさせるという方法もあるけど、色々な手段があることを印象付けた方が後々の絶望を大きくするにはいいかもしれない。


 なので掴まれた方の腕を魔法でぬるぬるにして掴みにくくすることにした。

 私の掴まれた腕が水で濡れたようにツヤが目立ち始める。


「ん? あ? なんだこれは?! おあっ!!」


 戸惑い始めるブラッド。

 私が軽く腕を振ると彼の手はあっさりと外れた。


「あれれ~、簡単に外れましたけどぉ~?」


 笑顔で煽ってみる。けども組織のボスだけあって幼稚な揺さぶりには動じない。


「攻撃でもしてくるかと思ってたらまさかそんな変な方法でただ外すだけとはな。で、他には何が出来るんだ?」


 興味深そうに今度は逆の腕を掴もうとしてきた。

 これはかなり舐められてると感じたし、触れられるのも気持ち悪いので拒否することにした。


「触らないで」


 私は迫るブラッドの手を目掛けて私の手を振った。

 全員の視線がこちらに向くほどの強烈な破裂音が響いた。

 ブラッドは手を弾かれただけとは思えないほど体勢が崩れ、体が半回転していた。


「後で相手してあげる」


 私はブラッドを後回しにして扉を開けようと奮闘しているレフの妨害に向かうことにした。

 見た感じ扉はまだ開いてないようだ。


 レフとの距離がかなり近くまで迫った時、彼は強気で言葉を飛ばして来た。


「この距離なら避けられまい、食らえ!」


 レフは手のひらから蜘蛛の巣のような白い電撃を放った。


 私は反射的に盾型の障壁魔法で受け止める。

 大したことなさそうに見えたし試しに喰らってみれば良かったかも。


「ちっ、障壁魔法が使えたのか」


 レフは残念そうに呟いた。

 私は似た魔法を自分の顔から放ちやり返す。


 避けるのが困難だと思われる速度で展開される無数の光る亀裂。レフは防御障壁で受け止めず、自力で避け切った。

 扉の前が空いたので私がその場所を貰っておくことにした。


 レフはもう1つの操作盤付近の扉には行かず、私の相手でもしようと思ってるのか近くで立ち止まった。


「レフさん、今のを避けるなんて凄いですね。ところであなたも冒険者だったりします?」


「ブラッド! 俺が引き付ける間にどうにかして鍵を開けろ!」


 レフは私の特に意味のない質問を無視しブラッド達に呼び掛ける。

 しかしブラッドは部下にそれを任せると私の方に向かって来た。


「レフ、俺も加勢しよう。二人がかりならどうにかなるだろ?」


 レフはその申し出に、苦い顔をした。

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