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100万年後に幽霊になったエルフ  作者: 霊廟ねこ
3章 小さき者の大きな力
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118 2度目 2

 1時間ほど待つとボスを呼びに行った男が戻って来た。


「ボスが来たぞ」


 男達は立ち上がると出迎える準備を整えた。

 程なくして男達と大して変わらない雰囲気の男が入って来た。

 他の男達と違いその男だけ素顔を晒している。


「ブラッドさん、ステラを確保しました。この子です」


 ブラッドと呼ばれた男は私を見ると感情の籠ってない冷めた顔を近づける。


 そして紙を取り出し、私の顔と紙へ交互に目を動かした。


「……確かにこいつはステラだな。よくやったお前達!」


 ブラッドに褒められた男達は笑顔を浮かべた。

 その直後、新たに男がやってきた。どこかで見た覚えのある意匠の凝った剣を腰に差し、顔はマスクをせず晒している。

 その男は周りの男達に視線を走らせた後ブラッドで止まった。


 ブラッドはその男を見ると困惑顔で謝った。


「レフ、無事に対象は確保できた。つまりはお前に頼もうと思ってた仕事はなくなってしまった。悪いな」


「仕事がなくなっても報酬はくれるみたいなので気にしてはいませんよ、むしろ何もせずお金が入る分、ありがたいですね」


 レフと呼ばれた男が私に視線を向けた。


 目が合ってしまった。


 するとレフの眉根がピクリと微かに動き、体がピタリと固まった。


 その反応はなんだろう?

 ステラとどこかで会った事あるのかな?

 しかしステラに聞いてもレフのことは覚えが無いようだ。


「どうしたレフ?」


 ブラッドはレフの様子が変に感じたのか声を掛ける。

 レフは私への視線を解き、ブラッドに余裕ぶった態度を見せた。


「いや、なんでもない」


「あ、そうだ。レフ、次の仕事は入ってないんだよな? この子供を町の外へ送り届ける際の見張りをお願いしたいんだが、どうだ? 新たに報酬は出すぞ」


 ブラッドはレフに告げた。

 レフは私の方を一瞬だけ見ると少しの沈黙の後にブラッドに答える。


「そうだな。だ……だが俺への依頼料は高いぞ。子供が逃げ出した時の対処くらい俺じゃなくても容易なはず、もっと安い相手に依頼するべきじゃないか?」


「そうかもしれないな。だがこの子供はその辺の子供とは違うかもしれないんだ。念のために実力のある者を置いておきたい」


 ブラッドにはステラがただの子供じゃないってことがバレてるっぽいな。ということはこのレフという男は腕が立つということか。

 とはいえ勇者や魔王ほどの力のある者が人攫いで小銭稼ぎなんてみみっちいことはしないだろうし、そんなことをするということは私の障害にはならないくらいに弱いのは確実だろう。


 ブラッドの説明にレフは明らかに嫌そうな顔を作った。


「レフ、お前は実力を発揮できない簡単な仕事はあまりしたくないんだったな。まぁ俺もこの子供が凄い力を持ってるという確証は持ってないから、物足りなさを感じるお前の気持ちはよく分かる」


 ブラッドはそう言った後私を見つめる。


「ふむ……そうだな、お前ら! 部屋の扉に鍵を掛けろ」


 ブラッドは何を思ったのか男達に命令した。

 その中の一人の男が壁に嵌められた小さな板を開き、中にある何かを操作し始める。


「掛けました! しかしいきなりどうしたんですかブラッドさん?」


 操作をして鍵を掛けたと告げた男は、ブラッドの指示した理由が分からなかったようで疑問をぶつける。

 ブラッドは答えた。


「この部屋の扉はは冒険者ランクAの俺の力を持ってしても突破は不可能なくらい頑丈だ」


 ブラッドは私に近づくとどういうわけか手錠のカギを外した。


「解放してくれるの?」


「んなわけあるか」


 ブラッドは呆れたように返した。

 困惑する男達とレフにブラッドは告げる。


「この子供が強いと証言しているのはグラブしかいない。本当にこの子供が逸脱した強さを持っているのか確かめようじゃないか」


 ブラッドはレフに視線を向ける。


「レフ! もしこの子供が本当に強ければ、依頼を引き受けてくれるな?」


「あ……ああ、そうだ……な。俺でなければいけないと思わせるほど強ければな」


 レフは歯切れ悪く答えた。

 言質を取ったブラッドは顔色を一切変えずに私に向くと、チャンスを言い渡して来た。


「ステラ、俺を倒したら解放してやる。本気でかかってこい」


「え……本当?」


「俺に勝つという事はそこのレフ以外には勝てるという事だ。そうなれば逃げるお前を誰も止められない」


「いやいや、レフが止めちゃうんじゃないの?」


 私がレフに目を向けると顔を逸らされた。

 ブラッドはレフに告げる。


「レフ! 万が一、俺が負けたらこの子供には手を出すなよ」


 言われたレフは表情に険しさが増していく。

 もしかしたら子供が甚振られる姿を見たくないのかもしれない。


 だけどもその心配は無用。むしろあなた達はこれから私に消されるわけだからね。

 アホなことにカギを掛けて私の逃げ道を塞いだつもりが自分達の逃げ道を塞ぐことになるとは想像もつかないだろう。


「分かった。だがその前に俺はトイレに行きたくなった。外に行かせてくれ」


 レフがブラッドに言うとブラッドは部下の男達に鍵を開けさせた。


「レフ、お前が戻るまでは待っておく。早くしてくれよな」


「……もちろんだ」


 レフは妙な間の後に答えると部屋を出て行った。

 

「悪いがステラ。レフが戻ってくるまでおとなしくしててもらえるか?」


 ブラッドの問いに私は無反応で返した。


 実力者であろうレフがいない時に動く方が脱出できる可能性が高くなる。実力的に互角なら動くべきだろう。

 動かない場合、『全員と余裕で戦えるほど強いのか?』と怪しまれるだろうか? 

 いや、むしろ『勝ち目がないから動かない』と捉えられるかもしれない。


 怯える演技でもした方がいいかな?

 でも私は役者じゃないから演技下手だし、余計な事せずただじーっと待っておくか。


 私はレフも含めてこの場の人達を消すつもりなので揃うまで大人しく待つことにした。


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