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100万年後に幽霊になったエルフ  作者: 霊廟ねこ
3章 小さき者の大きな力
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117 ルイザが帰って来た 2

 ルイザは私達を部屋の中に入れると椅子に座らせた。


「ステラ、これお土産ですわ」


 照れ臭そうにルイザは包装されたケーキっぽいものをステラに渡した。


 ステラは満面の笑顔で受け取り、お礼を言った。


 そして話はルイザのキメラ退治に移る。


「何事もなかったみたいで良かったね」


 ルイザには少し疲れが見えるけど帰って来たという事は無事というわけだ。


「3人以上の組で行動させられたので落ち着いて動けましたわ」


 単独行動で何かあると発見が遅れたりと調査班の余計な仕事が増えてしまうからグループを作らされるらしい。


 調査班ってなんだっけか。忘れてしまったな。

 どうせ今聞いてもまた忘れそうだしステラが冒険者になってから復習するか。


 と、そんなことよりもアレはどうだったのかを聞いておきたい。


(ステラ、勇者に妨害されなかったか聞いてみて)


 ステラは咳ばらいをした後で私の疑問を尋ねる。


「ルイザちゃん、そういえば変な妨害とかはなかった? 出発前に話したようなこととか」


「勇者が妨害するとかいう話だったかしら? ええ、それっぽい人はいましたわ。ステラに言われたことを思い出したから追い返すだけにして深追いはしませんでしたけど。とは言っても私の実力では少々苦しかったからできなかったというのもあるのだけれど」


「何ともないなら良かったよ。絶対追いかけちゃ駄目だよ?」


 ステラは母のように念入りに注意する。ルイザは面倒臭そうな顔もせず素直に頷いた。


「ルイザちゃん、キメラ退治終わったけど明日からはどうするの?」


「少しの間は疲れたし何もしない日にしようと思いますわ。だから申し訳ないのだけど土曜日までは一人でゆっくりしたいのでそっとしておいて欲しいのですわ。いいかしら?」


 ルイザは少し困ったような笑みでお願いして来た。


「じゃあ日曜日は大丈夫ってことだよね?」


「でも日曜日はケミーの所へ行く予定なので……ああ、じゃあステラも私と一緒にどうかしら?」


「うん! 行く行く!」


 悩む素振りすら見せずにステラは即答し、日曜日はケミー達の所へ行くことが決まった。


「そうそう聞いてステラ。私、キメラ退治の時にニュース番組の取材を受けたの」


「え、じゃあルイザちゃん配信番組に映るんだ! いつ映るの?!」


「配信される日時を書いたメモがあったはず――」


 どういうわけかルイザはニヤ付きながらメモを探し始めた。配信番組に映るからか? そんなに嬉しいことなの?


 この日は久々のルイザとの時間を楽しそうに過ごした。


 * * * * *


 次の日。今日はラズリィとの待ち合わせの日だ。もうすぐ昼という時間、ステラは指定された公園に予定時刻より30分ほど早く着いた。

 まだラズリィの姿は見えないので待つことにした。


 さてこの公園だけど、どこにでもある至って普通の公園だ。子供達がブランコを漕いだり、追いかけっこをしたり、ボール遊びをして暖かな空気を作っている。


「私と違って暑いだろうによくあれだけ元気に動けるよね」


 ステラは元気に駆け回る子供達を目で追いながらそう零した。

 多少暑くても平気なステラといえども全く暑さを感じないわけでもない。そのため少しでも涼を求めて屋根のある長椅子に座ることにした。

 そして予定時刻まで待ったもののラズリィは姿を表さなかった。


(もしかして私、待ち合わせ場所間違えちゃった……?)


 しかしそれが書かれた手紙は自宅に置いてきたため家に帰らない限り確認のしようが無い。


 ステラが家に帰るか悩んでると無邪気な笑顔で近づく見知らぬ少女の姿が目に入った。


「こんにちは」


「……こんにちは」


「ステラってあなたかな? これ、ラズリィがあなたに渡して欲しいって」


 少女は挨拶するとステラに封のされてない手紙を渡した。

 ステラは怪訝そうに文章を黙読する。


『ラズリィの命が惜しければ付いてくるように』


「え?」


 書かれた内容が予想外だったのかステラは困惑の声が漏れた。


「読んだ? じゃあ一緒に行こうか」


 少女は内容の物騒さとは裏腹に面倒くさげに告げると歩き出した。

 もしやこの少女、少し前にステラを攫おうとした男達の仲間か?


 ステラは呆然としたまま少女の腕を掴んだ。


「待って、私を捕まえるためにラズリィを囮にしたって……こと?」


「そうなんじゃないの? ラズリィのことどうでもいいなら来なくていいよ。あーあ、あの子、見捨てられたと思ってがっかりするだろうな」


 少女の煽りにステラは激昂し殴りかかろうとするものの直前で手を止める。


「きゃあっ?!」


 少女はいかにも戦い慣れてない感じの防御姿勢を取った。

 徐々に防御を解くとこう脅して来た。


「わ、私に手を出したらどうなるか勿論分かってるよね?」


 分かってるからこそステラは途中で手を止めた。

 少女はこちらを警戒しながら歩き始める。


「つ、付いて来て」


 ステラはまだ足を止めたまま私に助けを求める。


(デシリア、私どうすればいいと思う?)


(私にはどうすればいいか分からないけど、ステラのことは私が守るよ)


(……ラズリィを助けたいからこの子に付いて行くね)


 ステラは少女を睨みながら、次第に歩き出す。

 公園を抜け人気ひとけの無い狭い路地に入っていく。そして辿り着いたのは5階ほどの高さのありふれた建物だった。

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